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子どもへの病名・障がい告知を考える

8月24日(土)に実施された神奈川県立こども医療センター主催の「子どもへの病名・障がい告知を考える」に参加した。

そもそも子どもたちは告知を希望しているのか

まず最初にお話があったのは、そもそも子どもたち自身は告知を希望しているのか、という点。そりゃそうだろと内心思っていたが、このあとの調査結果を聞いて、いろいろ思うことがあった。
ここで新しく知った用語が「倫理コンサルテーションチーム」「インフォームドアセント」という用語。自分なりの解釈でまとめてみた。

【倫理コンサルテーションチーム】
病院側の治療方針に関して倫理的(道徳的)問題(例えば、家族が医療方針を拒否した場合等→医療ネグレストになる)が生じた場合に、結成するチームであり、関係者のコンセンサス(合意)が得られるよう調整・支援を行う。
原則としては、まず親権者への説明と同意が必要。何故なら親権者は看護権を持つから。子どもへは以下の2つに対応が分かれる。
 ・15歳以上の場合
  本人への説明と合意が原則として必要
 ・15歳未満の場合
  本人への説明が必要とされており、知慮方針に賛意を得る
  (インフォームドアセント)ことが推奨される

【インフォームドアセント】
簡単にまとめると「子どもに対してどのように説明するか」ということ。以下が4点が詳細です。

1つ目は、子どもたちが、自分の状況について発達段階に応じた理解が得られるように支援する。つまり、説明を受けるときが小学生かもしれないし、中学生かもしれない。ということは、理解できる範囲も発達段階によって様々なので、場合によっては、複数回の説明が必要ということ。

2つ目は、検査や治療の内容、結果を子どもに知らせる。

3つ目は、子どもの状況理解や反応に影響を与える要素についてアセスメントすること。

4つ目は、提案されるケアに対して、子どもの意思が表現できるように配慮する。その際に、子ども自身が真剣にそれを重要視しているという認識しなければならない。また、子どもの異議にも関わらず医療的ケアを受けざるを得ない状況において、子どもには真実が知らされるべきであり、嘘をついてはならない

最後の4つ目が特に重要だと感じた。
さて、前置きがかなり長くなってしまったが、ここから本題。
そもそも、子どもたちは告知を希望しているのか、という疑問対して子ども医療センターの方で調査を実施した。対象は受診している中学生が対象。

【病名告知の希望】
80%が希望し、3%が希望しなかった。
【具体的な症状や経過について】
84%が関心を持ち、9%が知りたくないと回答した。
【当人と家族の意見が異なった場合】
46%は子どもの意見を、34%は家族の意見を尊重して欲しいと回答した。
【以下、自由意見】※個人的に印象に残ったコメント
・不安になるし、自分が治療をうけると思うと怖くてたまらない
・自分の意見が正しいか不安
・恐怖感が出てくるからいやだ
・症状が出たときに、「これは病気のせいなんだ」と思えて、心が軽くなる

告知の際に重要なポイントは以下の2点であるように感じた。
・なるべく具体的に、可視化(メモ等)する。
・「これから一緒に支えていく」の一言を添える。

思春期の子どもに精神疾患を伝えるとき

2番目に登壇された方の内容は、思春期の子どもに対して、どのように精神疾患であることを伝えるか、を事例を通して紹介してくれた。ここで初めて知った言葉は「こころのリスク状態」である。

精神疾患ときくと、統合失調症を連想させたが、統合失調症への発展が懸念される状態(発症危険状態)のことを「こころのリスク状態」と呼ぶらしい。ここで重要なのが「対話の基本に立ち返る」ことであると話す。つまり、心の根っこに触れる必要があるということ。以下は、患者と対話する5つの基本構造であるが、教師も参考になるかもしれない。

聞く準備(場所設定、挨拶等)
質問する(閉じられた質問⇔開かれた質問)
傾聴する(話しやすいよう促す、沈黙に耐える)
聞いていることを示す(反復、言い換え、反映)
応答する(真実に基づく応答、攻撃的な応答、判断的な応答、安心させようとする応答、共感的な応答、沈黙)

学校現場の場合、いきなりカウンセラー等に繋ぐことはあまりなく、まずは最初の窓口は担任なのではないか。どんな窓口もそうだが、窓口の対応が悪いとあとの進行も上手くいかないことも多い。教師も必須スキルのように感じた。

発達障がいをどう伝えるか(小学生への伝え方)

最後は、小学生に告知した事例である。先述したが、告知のタイミングは様々で、目安としては「本人が少し困っているとき」である。
ただ敢えていえば…適齢は小学校高学年あたりが妥当だそう(吉田友子先生の論文より)。それは理解力の発達段階的にであり、結局は理解力に依存する。

【告知をはじめる時期】
・「自分は他の子と少し違うかも」と感じ始めたとき
・状態が安定しているとき→不安定な場合は、安定してから
・親が反対しているときは行わない

中学の進学に向けて考えると、やはり小学校高学年あたりが妥当なように感じた。

【告知によってもたされるもの】
・自己理解を進めることができる
・特性に配慮して困難を乗り越える/回避することがスムーズになる
・家族や当人、医療関係者の中で秘密がなくなり、率直に話せる。
・進路や支援計画に関する話し合いが容易になる。

個人的には最後のまとめが一番しっくりきた。

自分の特性を知り、
それを周囲の環境と調和させられるよう
自ら対処すること、あるいは苦手な場面を回避することができるようになる。
特性の告知は、この過程を後押ししてくれるものである。

最後に(私のメモ)

最後に、自分のメモを追記しておく。

【兄弟の告知の場合】
今回は、本人に対しての告知だが、兄弟関係ある場合、兄弟に対しては特に本人ほどの困り感はないかもしれない。その場合、「うちの兄(弟・姉・妹)は周りの兄弟と少し違うなぁ」と思った時が告知タイミングかもしれない。その時は、親子間や、兄弟姉妹間の関係が左右されるかもしれない、とのこと。親の方も伝え方をしっかり打合せしなくてはならないだろう。
【告知の手順・確認】
まず家族がどう理解しているか確認
十分理解しているか

本人が理解しているか
本人が疑問に思った時がタイミング
【支援計画】
学校側で作成してあると医療への情報共有がスムーズになるとのこと
病院の先生はAと〇と言っているのに、学校の先生は×といっているは、子どもだけでなく、家族も心配、混乱させる危険性がある。

全体的に、病院の先生方も日々試行錯誤された様子がたくさんの事例から垣間見れた。中には10年間外来診ていたケースもあった。何が正解かわからないが、とにかく関わり続ける(特に対話)することが今回のポイントだと感じた。

ちなみにこの日、印象的な言葉だったのは
「(障がいの)差別の最前線は学校にある」
という登壇された医師からの言葉。

「教師は四者であれ」と以前の勤務校の校外研修で言われたことがあるが、今でも実感できる。

教師は本当に勉強し続けなければならない。

教員という職業の傍ら、趣味の映像編集(Pr,Ae等)や発達支援等の記事を記載していきます。