Dancemania SPEEDの歴史23~DRIVE & 武勇伝~

SPEEDRIVE
遅すぎた導き手

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2006年3月31日発売


アニメSPEEDの次に出た、サブシリーズ第8段の今作。名前の通り「ドライブ」をテーマに、各自動車メーカーのCM曲がセレクトされています。

今作に関しては、ひとまずレーベルごとのラインナップを見てもらえば、大体言いたいことは伝わると思います。


LED
10.Let's Dance / JOHN DESIRE(※再録


Runaway
04.Like A Rolling Stone / CJ CREW feat.PLAYSTONE(※再録
07.Mr.Tambourine Man / CJ CREW feat.Dallas Man(※再録
08.I Fought The Law / Nancy and the Boys(※再録


SAIFAM
01.I'm In The Mood For Dancing / KOKO
02.SKY HIGH / DJ MIKO(※再録
03.What A Fool Believes / SPEEDMASTER(※再録
05.GETAWAY / KOKO(※再録
06.IF I ONLY KNEW / BEAT BOX feat.DJ SPEEDO
09.HIGHWAY STAR / SPEEDMASTER(※再録
11.Sir Duke / Capitan Go!!(※再録
12.Heaven Is A Plance On Earth / WILDSIDE(※再録
13.CARNIVAL / SPEEDOGANG feat.Hanna
14.Let's Groove / BEAT BOX feat.DJ SPEEDO(※再録
15.Layla / TOMMY B.(※再録
16.Have A Nice Day / TOMMY B.
17.Up / TK(※再録
18.I Love Your Smile / SPEEDMASTER feat.ANGELICA
19.ABC / SPEEDOGANG(※再録
20.BROKEN BONES / MAZERATI




SAIFAM多すぎ

再録も多すぎ


……この2つが、今作の大きな特徴です。新規アレンジは6曲だけで、全部SAIFAM。LEDが1曲、Runaway3曲、残り16曲全部SAIFAM


半年前にSPEED G5がリリースされ、そのページでも言及しましたがあの時点でSPEEDシリーズの本編終了は恐らく決定的でした。そのため、以降のサブシリーズ予算が削られに削られたことも想像に難くありません。

今作の「車のCM曲」というテーマも、最初にテーマありきではなく、過去曲を多く使い回せるテーマを探したらそうなっただけ……じゃないかと。予算があればSPEED TVと20曲中9曲も被るようなサブシリーズは出さないでしょうし、LEDやRunawayにも新規カバーをオファーしているはずです。

限られた予算の中で「車のCM曲」を揃えた結果、既に多くのCM曲アレンジを提供し、人気が高く、仕事も早い……というSAIFAMに頼りきりなアルバムになってしまいました。SAIFAM率80%でほぼ「SPEED SAIFAM」です。

(ちなみにレーベル占有率はHAPPY RAVERSがNext Generation率100%で最大)


しかし今作の新規アレンジ6曲は、Speed Recordsの中でも屈指の良アレンジだらけ。言ってしまえば、この6曲を聴くためだけでも今作を手に取る価値は十分あると思います。(その6曲の音源買ったほうが安上がりとか考えてはいけません)


1曲目ダンシング・シスターがまずいきなりの高クオリティ。シンセリフが気分を高め、ボーカルの安定感が聴き心地の良さをもたらし、原曲の偉大なメロディーで自然と身体が動き出す。その圧倒的な完成度は、このカバーが生まれた時点でSPEEDRIVEを企画した意味はあったのだ、と感じてしまうくらい。




「恋はメキ・メキ」ことIF I ONLY KNEWも、Runawayのお株を奪うかのような高速歌詞でアレンジされ、更にリフの再現性や中盤のアーメンブレイクとの合わせ技で、至高のスピードアレンジに調理されています。



13曲目CARNIVALは、スウェディッシュポップの代表曲かつ渋谷系音楽のルーツでも知られています。そんなシャレオツナンバーを、透明感のある瑞々しいサウンドでカバー。BPM170弱のテンポを全く気にさせない極々自然なアレンジ技術が、SAIFAM重用となる理由を端的に表しているかのようです。



ボン・ジョビのカバーで力強いアレンジになったHave A Nice Dayも、そのうねるようなシンセが高揚感をマックスまで引き上げてくれることでしょう。今作初出曲で後に唯一HAPPY SPEEDに収録され、そのパワフルなアレンジをより多くの人へと届けました。



そして個人的に、今作の中で一番驚嘆したのがI Love Your Smile。シャニースのメロウな名曲をBPM倍取りの爽やか高速ダンストラックへ昇華させていますが、車のCMで当時散々聴いていたはずなのに、自分の中でこの曲が盲点のように意識からすっぽり抜け落ち、アレンジを聴いた瞬間に「この曲があったかー!」と謎のしてやられた感が滲み出たのを覚えています。

筆者にとってはこの曲がそうでしたが、特にサブシリーズを聴いていると、リスナーそれぞれにとっての「この曲をアレンジしたの!?」という「盲点」だった驚愕ポイントがいくつも有ることと思います。車のCMというテレビでもよく耳にする曲(=より生活に根ざした曲)だからこそ、今作はそんな驚愕ポイントがより多くの人に存在しているかもしれません。



恐らくはこの曲もそうであろうラストトラックBROKEN BONESも、BPM200近い速さでハッピーなシンセリフをかき鳴らし、まるでCM元であるX-TRAILに乗って野山を爆走しているような感覚を味わえることでしょう。



新規アレンジは以上の6曲。仮トラックリストによれば
A Hard Days NightGet It OnSunday MorningVenusの新規アレンジと、Saturday Night恋はあせらずの再録が予定されていました。仮リストの時点ですら新規アレンジ予定は7、8曲で、どっちみち今作が再録まみれのアルバムになることは規定事項だったようです。


新規6曲はどれも満足度高めで、再録曲も上質なものばかり。とは言え、新規アレンジ6曲分に2000円を出せるかとなると……ヘビーリスナーであるほど、購入を躊躇うアルバムとなってしまいました。



ただ「Drivin' -Music for Holiday Drivers-」を始め、「ドライブ向き」を大々的に打ち出せる自動車CM曲コンピは、一定の需要を見込める企画盤として各レコード会社から度々リリースされています。「ドライブ用ノンストップミックス」な、パリピ御用達の派手ジャケットCDが定期的に出続けていることからも、「ドライブ向き」という謳い文句や「DRIVE」というコンピタイトルが、それだけで強烈な訴求力を持っていることがわかります。


企画盤的性質を持つSPEEDサブシリーズにとって、その販売目的はSPEEDリスナーに向けてだけでなく、一般リスナーにSPEEDシリーズを知ってもらうことも含まれていたはずです。実際Christmas SPEEDアニメSPEEDが再販となったのも、それぞれ「クリスマスソング需要」や「別会社の企画盤(アニトラ)の成功」などで、この2枚なら一般リスナーも手に取りやすいのでは、と思われてのことでしょう。

それを考えると、ひょっとすれば今作の企画・販売は、SPEED SFXやSPEED TVよりも前に行うべきだったのかもしれません。



SPEED TVとは曲目もコンセプトも近いものの、一般リスナーやCDショップが「知っている曲をスピードアレンジ」というキャッチコピーで「ドライブ向き」だと解釈するかはあくまで未知数です。「CM曲やドラマ主題歌が速くなったから何なの?」と思われないとは言い切れません。

その点SPEEDRIVEであれば、タイトルとラインナップから堂々と「ドライブ向き」だとアピールでき、しかも「DRIVE」の名を冠するとあって他のドライブコンピと一緒に並べてもらえるドライブコンピ目当ての人に手にとってもらえる、そんなポテンシャルも他より多分に秘めていました。

……しかし、再録で誤魔化すような製作体制のせいで、今作はそもそもSFXやTVよりも数が出回っていません。新規リスナーへの呼び水となれたかもしれない「ドライブ」テーマでも、起死回生の一手とはなれませんでした。

(追い打ちをかけるように、再録の多さでヘビーリスナーからも良い評価を得られていません)



今作を失敗作と位置づける場合、その敗因は「再録の多さ」や「TVとのテーマ被り」などではなく、そんな製作環境に置かれる前に今作を作るべきだった……という「出すのが遅すぎた」ことなんじゃないかと思います。

もし今作がTVやSFXよりも前に出ていたなら。もし「ドライブに行くならこの一枚」な売り場スペースに、中期頃の勢いを持ったSPEEDシリーズのCDが置かれていたなら……。SPEEDRIVEがSPEEDシリーズを牽引する未来図も、ひょっとすればあり得たのかもしれません。



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SPEED武勇伝
謎コンセプト良アレンジ平坦構成

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2006年9月27日発売


サブシリーズ第10段であり、ベスト盤を除くと実質最後のSPEED作品。そんな今作のテーマは「格闘技」。古今東西のボクサー・レスラー・格闘家らの入場曲や、格闘技題材のイベント・作品の主題歌等を集めた一枚です。



……「何そのコンセプト?」と思ったそこのあなた、決して間違っていません。


2006年は入場曲が収録されている亀田興毅山本KIDらが現役バリバリで、PRIDEK-1も大晦日に興行を開催したりと、一応格闘技ブーム中ではありました。

しかし格闘技ファンへ向けてのコンピとしては曲が雑多すぎて中途半端で、SPEEDリスナーからしたら需要不明なニッチ過ぎる題材。今作はコンセプト判明時点から、失敗臭の漂う残念なアルバムと位置づけられていました。

聴いてみるとやはり意外と悪くはないのですが、格闘技ファンへ向けても微妙なラインナップを一般リスナーが見て「よし、聴いてみよう」となるわけもなく、今作もまた数が出回らずに評判もさして良くない、厳しい製作体制に追い打ちをかけるような一枚になってしまいました。



とりあえずレーベルごとに曲目を見てみましょう。


SAIFAM
01.Guerrilla Radio / TOMMY B.
02.I Believe / SPEEDOGANG
03.Burning Heart / SPEEDMASTER
06.Ali Bombaye / MAZERATI
08.ワルキューレの騎行 / MC F 40(※再録)
09.ツァラトゥストラはかく語りき / SPEEDORCHESTRA(※再録)
12.SKY HIGH / DJ MIKO(※再録)
17.We Will Rock You / MAZERATI(※再録)
18.We Are The Champions / SPEEDOGANG feat.Live 2 Love
19.The Final Countdown / TOMMY B.(※再録)
20.威風堂々 / MAZERATI(※再録)
21.タイム・トゥ・セイ・グッバイ / KK feat.MANU(※再録)


LED
05.ENDORPHINMACHINE / Sam Torero
10.Gonna Fly Now / Hardcore Synth Orchestra(※再録)


Runaway
07.カルミナ・ブラーナ / THE ORFF KI ENSEMBLE(※再録)
11.燃えよドラゴンのテーマ / ON D. FLOOR


その他
04.ff(フォルティッシモ) / Quiqman feat.North Garden
13.キン肉マン GO FIGHT! / Quiqman feat.Kenji Kanamaru
14.CHA-LA HEAD-CHA-LA / Lee Tairon(※再録)
15.男の勲章(Speed Remix) / 嶋大輔(※再録)
16.愛をとりもどせ!! / Lee Tairon(※再録)


SAIFAMが多いのはもう(優秀すぎて)どうしようもないので省略。
今回は一応LEDとRunawayにも1曲ずつ新曲があり、この2レーベルのSPEEDシリーズにおける最後のアレンジとなるため、今作を聴く意義はSPEEDRIVEよりは見つけやすいかもしれません。3本柱のアレンジと日本語曲とが入り乱れるカオスな構成は、ある意味では「異種格闘技戦」のようで楽しくもあります。


SAIFAMは前述した亀田興毅・山本KIDの入場曲であるBurning HeartI Believe、あとQUEENのWe Are The Championsなどを正統派アレンジ。格闘技を知らないSPEEDリスナーでもすんなり受け入れられる、ド安定のスピードダンスでアルバムを盛り上げます。



また「猪木ボンバイエ」ことAli Bombaye(元はモハメド・アリの映画の曲)がトランス風に高速化。「燃える闘魂」という二つ名に似合った原曲をシャープでクールなアレンジに仕上げ、SAIFAMがたまに見せる大胆なカバーテクニックを遺憾なく発揮。



……が、本来なら今作一番のキラーチューンであるはずのGuerrilla Radioがかなり残念なことに。これは今作の問題点に直結する話なので後述します。



LEDの新規アレンジENDORPHINMACHINEの原曲は、K-1オープニングでもあるPrinceの名曲。これがまた、原曲のギターリフをシンセリフに変え派手にスピードナイズされた、めちゃくちゃにテンションの上がる気持ち良いアレンジです。


そのユーロビートとしての完成度は、LEDアレンジの中でも間違いなくトップクラス。「明るいアレンジなら任せろ」と主張するかのように、最後の最後に気張った仕事ぶりを見せてくれました。


じゃあなんでG4の9 To 5 Morning Trainは(以下略)。



Runawayは燃えよドラゴンのテーマ曲をスピードアレンジ。スクラッチが乱れ飛ぶハイテンションなナンバーは、元の有名なメロディーを活かしながらもRunawayサウンドのオリジナリティを併せ持った、面白い一曲に仕上がっています。



Quiqman柴田氏による日本語曲アレンジは、ハウンドドッグのフォルティッシモキン肉マンのOPの2曲。フォルティッシモは大友康平のクセ強な渋い歌声から、爽やかで素直なボーカルへと変わり、その落差で一瞬驚くかもしれません。しかし柴田氏のサウンドが全体的にすっきりとまとまっているので、むしろアレンジとしてちょうど良い塩梅に。


キン肉マン GO FIGHT!は、アニメSPEEDに入っていれば「オススメ」に挙げていたであろう綺麗なスピードカバー。アツくもギャグチックな原曲が、クリアーなシンセで大胆にイメージチェンジしています。



以上9曲を含め、何故かいつもより1曲多い21曲収録。
コンセプトはよくわかんないけどお得なアルバム……と言いたいところですが、通して聴こうとするとGuerrilla Radioで言った「今作の問題点」がどうにも無視出来ません。


Guerrilla Radioのアレンジは、本来BPM200で作られていました。BPM200ともなるとラストに持ってくるのが普通でしょうが、PRIDEオープニング曲というネームバリューを買われ、1曲目に抜擢。

流石に速すぎるのでBPM190になりましたが、今までのSPEEDシリーズで「意図的に遅くして収録する」ことがほとんど無かったためか、気持ち悪さの残る奇妙なアレンジになってしまいました。


BPM200の状態で聴けばボルテージ爆上がりの最高のアレンジなのに、10落とすだけでここまで聴き心地悪く変わるのは中々に難儀です……が、問題はそれだけではありません。


実は3曲目Burning Heartも元々BPM195でのアレンジで、序盤にその2曲を配置してしまったが故か、今作は21曲全てが、最初から最後までBPM190に設定されているのです。一見テンポが良い気がするものの、これが通して聴いていると物凄く平坦

カルミナ・ブラーナ冒頭のオペラパートカットが象徴的で、全体的にメリハリや起伏のある展開が無く、結果「一本調子」なアルバムになってしまいました。今作のBPM190固定で明確に得したのは、勢いがそのまま加速してくれたENDORPHINMACHINEくらいです。


Dancemaniaノンストップに慣れたKCPMSTならメリハリもある程度付けられたのかもしれませんが、今作ではQuiqman柴田氏(とRyojuという方)がSPEEDシリーズで初めてミックスを担当することに。参加歴が浅いことが災いし、SPEEDシリーズらしさのあまりない不慣れなミックスになってしまったのだと思われます。



最後のサブシリーズとなった今作。新規アレンジがどれも悪くなかったことを踏まえれば、SPEEDリスナー的に需要不明なコンセプトでも、選曲やアルバム構成次第で大化けする未来はあったのかもしれません。

こと「入場曲」に限定しても、ブロディのImmigrant SongやシウバのSandstorm、ハンセンのサンライズなど、有名かつSPEED映えしそうな曲はいくらでもありました。

……もちろん、CHA-LA HEAD-CHA-LA男の勲章等を再録するような製作体制では、そういったアルバム作りは難しかったのでしょうが。


SPEEDRIVE同様、今作もまた「出すのが遅かった」ことで不遇の立ち位置に収まらざるを得なくなった、悲運の作品なのかもしれません。

当時は「何じゃそれ」としか思えなかったこの「格闘技」というコンセプトも、中期~後期序盤あたりの良い環境で作れていたとしたら、格闘技ファンをSPEEDシリーズに呼び込める一枚になっていたのかもしれないと、今更ながらに思います。

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