Dancemania SPEEDの歴史21~SPEED G5~

Dancemania SPEED EVOLUTION "SPEED G5"
意地の原点回帰

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2005年9月30日発売


G4アニメSPEEDを経由したシリーズ本編14作目……にして、本編最終作

この後にサブシリーズが3枚、ベスト盤が1枚出て、SPEEDシリーズはその歴史に幕を下ろすことになります。

正直な話、今作はコンピレーションアルバムとして「苦し紛れ」という表現が一番適切な作品です。3本柱ですら数年前に作った曲が収録され、大分前のサブシリーズからも曲をかき集め、しかしそれでもいつもより1曲少ない29曲。しかも帯には「30曲」と書いてあるので、これは誤植なのか、もしくは最後の最後まであと1曲が決まらなかったのか……。

半年前に色々と頑張りを見せたG4が結果に繋がらなかった反動か、今作を出すためにEMIが無理をしているのが、曲目を見るだけでも伝わってきてしまいます。「出してくれただけ有り難い」と言った感じの、本当になんとか商品になった、くらいの完成度です。

とりあえず良い点を挙げるならば、ハードコア楽曲がたくさん聴ける部分でしょうか。常連DJたちはもちろんのこと、DJ Stormや久々参加のDJ Vibes、さらにG4から引き続きDarwin、そこにFracusGammerといった後の大物DJたちの曲も初収録されています。

しかもK.O.G森田氏が(今作で終わりになるだろうと多分EMIから伝わっていたでしょうし)最後に好きなようにやりたくなったのか、開始3曲目から7曲連続でハードコア楽曲が流れます

その中に有名曲のカバーがあるわけでもなく、とにかく硬派な曲が序盤から目白押し。ハピコア楽曲の比率が高い初期作品ですら、ここまで思い切ったことはしていません。

ハードコアの楽曲数自体も中期以降最多の14曲となり、オールドスクールっぽい懐かしいサウンドのものがあれば、ハピコア→トランスコアと来て完全にUKハードコアに進化しきったものもあり、苦し紛れの末の結果とは言え、最後の最後にして(サウンドは最新鋭でも)SPEED 1~3を思い出すかのような「原点回帰」のアルバムとなりました。



まずは3本柱、LEDから。

13.Do It For Love / Emerals
14.Magic Butterfly / Judy Crystal
15.Upside Down / ROSE & JOHN

中盤に3曲連続で収録。この内Magic ButterflyUpside Downは、ブックレットのクレジット通りならば2年前の曲をわざわざ引っ張ってきています。

Do It For Love含め、どれも可愛らしいガールズユーロビートで耳心地良く、LED3曲連続でもスッと聴けてしまうでしょう。

(実際2003年頃の曲なので当たり前ですけど)雰囲気としてはどれもSPEED 6~8あたりのLED女性ボーカル曲を思い出すキャッチーさで、今聴いても2年間寝かせていたのが勿体無いくらい。Upside DownはSPEED 10に収録されていたらIKA UKAを喰うビジョンもあったと勝手に考えています。


後期のサブシリーズ連発で「LEDにはカバー曲を」という認識だったのかもしれませんが、今作の3曲を聴くとJumping To HeavenやI Love You Babeのように、JUDYたちのオリジナル曲ももっと聴いてみたかったという気持ちがふつふつと湧いてしまいます。



続いてはRunaway

16.Breathless / Nancy and the Boys
18.Trouble / CJ CREW feat.Tarts Unlimited
19.Do It On The Dancefloor / CJ CREW feat.MC Bygglz
24.Zigeunerweisen, Op.20 / CJ CREW feat.Shazza


ツィゴイネルワイゼンはclassical SPEED 2からの移植曲。

前作Turn Me OnやDilemmaがアレンジとして完成されすぎていたのもあってか、今作は若干地味な曲目に。それでも本編最後と言えど、いつもと変わらぬ安定具合なのは流石の一言。

ノエビアのCMに使われたBreathless、シャンプーの原曲をテレビでよく聴くTroubleは「Runawayらしさ」が全面に出た上質なスピードダンスに。

ちなみにTroubleのライナーノーツで、何故かUPHORIA(=EVIL氏)がオレンジレンジを引き合いにブラックジョークを放っています。最後だからEVIL氏もはっちゃけたんでしょうか。


マドンナのPapa Don't Preachの印象的なフレーズを使用したインストナンバーDo It On The Dancefloorは、サウンドこそいつものRunawayながら、そのアレンジ仕様が珍しい一曲。SPEED 6のUp To Elevenを彷彿とさせる尖り方で、Complicated等とは別方向からの大胆さを最後にアピールしました。


そして8曲収録ですが、再録も目立つSAIFAM

01.We Will Rock You / DJ SPEEDO feat.RAFFA
02.GASOLINA(The Speedo Revenge) / Danny Ray
10.Orinoco Flow(Eurospeedo Version) / SPEEDOGANG feat.Hanna
17.GETAWAY / KOKO
23.BE MY COWBOY(Speed Remix) / Jenny Rom
25.Die Walkure / MC F 40
26.Up(The Speedo Revenge) / TK
28.She Will Be Loved(Factory Speedo Mix) / SPEEDMASTER feat.ANGELICA


1、17、25曲目がそれぞれサブシリーズからの移植曲。ワルキューレの騎行はひとまず置いといて、それ以外の2曲にツッコミどころが。

まずオープニングナンバーWe Will Rock YouはSPEED TVのものと同曲であるにも関わらず、何故か初出時のMAZERATI名義ではなくDJ SPEEDO名義。単純にEMIのミスならまだしも、下手すると今作の再録の多さを誤魔化すため「新録バージョン」を期待させる詐欺まがいの手口の可能性もあります。(←これはただの筆者の被害妄想です)


そして同じくSPEED TVからの再録GETAWAY。こちらのツッコミどころはWe Will Rock Youとも共通ですが、要するにSPEED TVからの移植自体が「ちょっと古くない?」という。

多分直近のアニメSPEEDはカラーが違いすぎ、その前のSPEED刑事の曲ではヒキが無いと判断され、classical 2からはG4も入れると既に4曲も移植されている……のでSPEED TVから、ということなんでしょう。

何にしても本編のオープニングナンバーが再録曲というのは、あまり嬉しくないSPEED史上初。ツィゴイネルワイゼン含め移植4曲も最多記録で、今作の製作における苦しい現状が伝わってくるようです。


……とまあネガティブな話題はこれくらいにして、移植曲は元から人気だったために選ばれた面もありますし、新曲もどれも高水準で楽しめます。

The Game Of LoveとPippi Girlの間の子のようなBE MY COWBOYは相変わらずの普遍的キャッチーさで、エンヤのヒーリングミュージックをしっかりと高速ユーロダンスへ変身させたOrinoco Flowも見事。CMのヘビロテっぷりもあって原曲知名度が非常に高かったUpも、SAIFAMらしいダンサブルなアレンジで収録されました。


レゲエとヒップホップを合わせたレゲトンで当時パリピのアンセムと化していたGASOLINAは、BPM192の高速レゲトンダンスにSPEEDアレンジされ、HAPPY SPEED収録となるほどの人気を得ました。

ラスト前に配置されたShe Will Be LovedはMaroon 5のバラードが原曲。Breathlessと同じくこちらもノエビアのCMに使われていましたが、レーベルの違い、原曲の違いが出たのか、こちらはより疾走感のあるシャープなアレンジが楽しめます。



そして今作を「原点回帰」たらしめるハードコア楽曲。先述通り、新旧DJによる多彩な楽曲が取り揃っています。6曲抜粋して紹介。


Fracusによる新時代を告げるUKハードコアOpen Your Eyes To Love(VIP Remix)



DarwinGammerが作り上げる男性ボーカルアンセムTake A Ride(Gammer Remix)



オールドスクールスタイルのサウンドが「原点回帰」を引き立たせるListen To The Beat



ドラムンベースの激しさと哀愁感あるボーカルとのコントラストが美しいCrazy Love



True Awareness以上の「妖艶」さで聴く者全てを毒牙にかけるPOISONOUS



極上のアンセムによって有終の美を飾る、Euphoria魂の一作Echo Of Heaven


特に本編シリーズラストトラックとなるEcho Of Heavenの持つアンセム感が凄まじい。さっきから散々「苦し紛れ」とか書いてきましたが、この曲を聴ける時点でこのアルバムは買いだとすら思います。

その他紹介しなかったSun Light10 Years of HardcoreBe Happyなども併せて、SPEED 1から着々と進化してきたハードコア楽曲の2006年時点までの成長を見届ける「意義」は、最後まで持ち続けられたのではないでしょうか。


今作は再録の多さ以外に、色々とミスも目立つアルバムでした。帯の「30曲」という悲しい間違いだけでなく、3曲目I NEED 2 NITEは本来「The One I Need / Draft & Method」ですし、7曲目Cube::HardのMICROに至っては作曲者すら違う「Lifts Me Up / Flyin' & Limitz」が本来の収録曲です。

1998年に「国内唯一のハードコアコンピレーションアルバム」として始まったDancemania SPEEDシリーズ。その最後を飾る今作G5は、お粗末なミスも再録曲も多く、お世辞にも完成度の高いアルバムではありませんでした。しかしそれでも、中期以降を支えた海外レーベルの頑張りと各種ハードコア楽曲の力によって、最終作として何とか成立してくれています。

Brisk & HamStompyら常連DJのアンセム。DarwinFracusGammerといった新世代DJの台頭。こうした新旧DJたちの活躍によって「ハードコアコンピレーションアルバム」としての最後の矜持は保たれ、SPEEDシリーズ本編はその役割を終えることになりました。


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