台湾茶の観光資源からセイロンティー観光資源を考える

イギリスが建設した紅茶畑と避暑地の町「ヌワラエリヤ」や紅茶畑を走り抜ける紅茶列車が通る「エッラ」、茶園主のバンガローが点在する「キャッスルリ貯水池」など、スリランカの紅茶観光資源は多くありますが、セイロンティーの発祥地「ルーラコンデラ」はアクセスが悪く、周囲に町や観光スポットがないためか、観光地化されていません。

一方で、観光地に位置する台湾紅茶の発祥地は観光地化が進んでいます。
観光資源の層が厚い台湾茶の観光資源からスリランカが学べることはおおいにありそうです。

紅茶生産の先進地スリランカ

1867年、セイロン(現:スリランカ)で紅茶生産が始まります。

セイロンティー誕生の10年後、1877年に静岡の丸子で紅茶栽培を始めた「日本紅茶の父・多田 元吉」は、前年の1876年に日本政府から紅茶製法の調査のために、インド(アッサムとダージリン)とスリランカに派遣されています。

「三井合名会社(現:三井農林)」は、1922年に製茶技師を紅茶生産の先進地インド、スリランカに派遣し、品種改良と品質の向上に努め、1926年に台湾に紅茶工場を建設し、1927年に日本初の国産ブランド紅茶「三井紅茶(現:日東紅茶)」を発売しています。

紅茶生産の先進地スリランカでは今も紅茶は主要産業の一つです。

ところが、セイロンティー発祥の地「ルーラコンデラ」には、ジェームス・テイラーのバンガロー・シーツ・井戸・立像・記念碑、現在も稼働しているルーラコンデラ茶工場などがありますが、紅茶好きのコアな人がいく場所で、一般的な観光地にはなっていません。

台湾紅茶の父は群馬出身の新井耕吉郎

セイロンティーの誕生から69年後、1936年に群馬県出身の「新井 耕吉郎」が日月潭の湖畔の山「猫囒山」で紅茶栽培を開始し、「台湾紅茶の父」と言われるようになります。

台湾紅茶の発祥地「日月潭」

台湾紅茶の発祥地「日月潭」は、台湾最大の湖であり台湾八景の一つに数えられる景勝地です。

遊覧船が運行され、文武廟や慈恩塔などの名所を巡る遊歩道が整備され、「日月潭ロープウェイ」でテーマパーク「九族文化村」にもアクセスできます。

日月潭は少数民族のサオ族の居住地でもあり、日月潭に浮かぶラル島はサオ族の聖地。

遠泳大会、マラソン大会、カヌーマラソン、さくら祭りと年次イベントも多く行われている場所です。

新井 耕吉郎が紅茶生産を始めた猫囒山には、茶畑と日月潭の景色が楽しめるハイキングコースがあります。

そのハイキングコースの入口近くに、新井耕吉郎が建設した「魚池紅茶試験支所(現:茶業改良場魚池分場) 」があり、「故技師新井耕吉郎紀念碑 」もあります。

見学が楽しめる日月潭の紅茶工場

日月潭のメイン道路「21号線」の北側には、紅茶を販売する紅茶工場の「Antique Assam Tea Farm」をはじめ、紅茶販売店が点在しています。

21号線が131号線と交わる「魚池街」には、台湾最大という見学可能な紅茶工場「Hohocha喝喝茶」があり、オシャレな観光スポットになています。

日月潭から流れる川「南港渓」や「桃米渓」にも茶畑があり、南港渓が流れる香茶巷には、日本人が残した製茶技術受け継ぐ「Hugosum和菓森林紅茶観光茶廠」があります。

台北市内に茶畑が広がる「猫空」

台湾紅茶の発祥・日月潭は台湾中部のありますが、台北市内でも茶畑が見られる場所があります。

新北市との市境に近い台北市の南端で、川「指南渓」が流れている山「猫空」です。

猫空にも茶畑の景色を楽しむハイキングコースがあり、お茶が楽しめるカフェやレストランが点在しています。

地下鉄「台北捷運文湖線」の終着駅「動物園駅」から、「猫空ロープウェイ」で山上駅「猫空駅」に行けば、そこは茶畑の山。

キャンディの南に位置し、紅茶工場を改装した「紅茶博物館」がある山「ハンターナ」に韓国人事業家がロープウェイを建設しようとしていますが、猫空はその先行事例とも言えそうです。

紅茶博物館は台湾の工場を見習って、試飲スペースを山上からの景色が見渡せるおしゃれカフェに、薄暗いティーショップをつい買い過ぎてしまうようなおしゃれティーショップに変えると良さそうに思います。

台北の市街地の茶工場・老舗

創業1890年で伝統的な木炭による茶葉の火入れを行う焙煎室が見られる工場を併設した「有記名茶WANG TEA」が台北の市街地にあります。

日本統治時代に最も大きかったという茶工場「新芳春茶行」も台北の市街地にあり、上記の「有記名茶WANG TEA」と「新芳春茶行」はすぐ近くにあります。

セイロンティーの歴史よりも長い老舗が台湾にはあります。
創業1852年の「王德傳茶莊」は台南発ですが、おしゃれなティーショップ・台北本店があります。

スリランカの老舗ティーブランドは、1985年スタートのムレスナ(Mlesna)や1988年スタートのディルマ(Dilmah)で、台湾に比べると歴史は浅いですが、それぞれオシャレな直営カフェ・ティーショップを経営しています。

スリランカブランドにも継続した新しい革新を期待したいです。

日東紅茶のルーツ!オシャレすぎる工場「大溪老茶廠」

大渓老茶廠は、国際空港がある桃園市、蒋介石の墓「慈湖陵寢」からほど近い、川「三民渓」が流れる大渓にあります。

1899年、三井合名会社が大渓に茶畑を開拓します。
1926年、三井合名会社が角板山工場(現:大渓老茶廠)を建設。
1944年には台湾紅茶の生産と輸出量をほぼ独占。
1945年、日本の統治が終わり三井合名会社は撤退。
1946年、台湾政府・農林處が官営の「台湾茶業公司」を設立し、、運営を担当。を「大渓茶葉」と改名しました。
1955年、製造を中止。
2010年、「大溪老茶廠」と改称。

台湾茶器が並ぶ陶器の街「鶯歌陶瓷老街」

桃園国際空港と大渓老茶廠の間には、陶器街「鶯歌陶瓷老街」があります。

ヤクルト緑茶(養楽多緑茶)

紅茶にタミオカを入れたタミオカミルクティーの他に、緑茶にヤクルトを入れた「ヤクルト緑茶」があるそうです。

新しい飲み会、新しいドリンクを生み出す台湾を見習って、スリランカでもオリジナルドリンクが広まったら面白いですね。

水筒文化とウォーターサーバー

台湾には街中にウォーターサーバーが多くあり、水筒を持ち歩いて、水やお湯を入れるそうです。

ティーバッグを持ち歩いて、水筒に入れてお湯を注げば、外出先で新鮮なお茶が作れてしまうわけです。


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