〔民法コラム6〕受領遅滞後の履行不能


1 危険負担

 危険負担の問題とは、双務契約において、一方の債務が履行不能(原始的不能を含む。)である場合に、債権者は反対債務の履行を拒絶できるか否かという問題である。

⑴ 債務者主義(536条1項)

 債務者主義とは、危険負担の問題において、他方の債務の履行を拒絶できるという立法主義をいう。履行不能となった債務を基準に、債務者が危険を負担することになるから、債務者主義と呼ばれる。

⑵ 債権者主義(536条2項前段)

 債権者主義とは、危険負担の問題において、他方の債務の履行を拒絶できないとする立法主義をいう。履行不能となった債務を基準に、債権者が危険を負担することになるから、債権者主義と呼ばれる。

2 受領遅滞後の履行不能

 ある債務につき、受領遅滞が生じた後に履行不能が生じた場合においては、その不能が当事者双方の責めに帰することができない事由によるときであっても、債権者の責めに帰すべき事由による不能であるとみなされる(412条の2第2項)。その結果、危険負担としては、債権者主義の条文が適用されることになり、債権者は、反対給付の履行を拒むことができなくなる(536条2項前段)。上記のときは、債権者は解除をすることができず(543条)、債務者の責めに帰することができない事由による不履行であるから損害賠償請求をすることもできない(415条1項ただし書)。
 また、売買の買主による受領遅滞後に履行不能が生じた場合で、その不能が当事者双方の責めに帰することができない事由によるときは、買主は代金支払を拒絶できず、損害賠償請求及び解除をすることができないことに加え、追完請求、代金減額請求をすることもできない(567条2項)。567条2項は、性質上可能な限り、有償契約一般にも準用される(559条)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?