宮城県丸森で災害ボランティアしてきました。⑷孤独

ボランティアで訪れた先のひとつに、おばあさんが1人で生活していた家があった。

農地のど真ん中のようなところにある平屋で、土砂の流入はそれほどではなかったものの、冠水の被害を受けていた。

本来、水が引いたらすぐに家財道具を出し乾かさなくてはならない。カビが生えてしまうからだ。
しかしおばあさんの家は、水が引いてから1週間以上経っているのに、ほとんど手付かずの状態だった。
おばあさんは、生乾きの布団で寝起きしていた。

住民の方々がボランティア支援を求める場合、まず、ボランティアを統括する社会福祉協議会(社協)に連絡する。
その要請に応じる形で、ボランティアが配置される。
逆に言えば、要請を出さなければ、ボランティアは来ないということである。
おばあさんは、まさにこれだった。

もちろん、社協も手をこまねいているわけではない。職員の方がおばあさんの自宅を訪問してニーズを確認したことで、私たちが訪問することになった。

ブルーシートをひいて、あらゆるものを外に出す。
家の軒先に、猫の餌が置いてある。
実は、おばあさんは猫を飼っていたのだ。
台風以来姿を見かけず、気を揉んでいた。

押入れの中の布団を出そうとしたとき、何かに気付いた。死んでしまった猫だった。

何かの拍子で押し入れに閉じ込められてしまっていたのだろう。すっかり痩せていた。

元気はないながらも、時折笑顔を見せていたおばあさんが、声を上げて泣いた。

家族はおらず、猫までいなくなってしまった。

長いこと水に浸かったものは、基本的に処分する。
しかし、いくら説明しても、おばあさんはなかなか物を捨てない。
無理もないのかもしれない。
土台がふやけて傾いた本棚でさえ、おばあさんにとっては、ここで暮らしていくための心の拠り所かもしれないのだ。

別の日に訪問したお宅では、私たちボランティアと家族が協力して、和気あいあいと賑やかに作業を進めることができたところもあった。

苦しいとき、寄り添い、手を差し伸べてくれる人間の存在がどれだけありがたいか。私が、交通事故の療養中にも感じたことだ。孤独が苦にならないと思っていた私でさえ、退院後、自宅のベッドで天井を見るだけの日々は、本当にきつかった。


作業を終え、
「きっとまた来ます」と声をかけて車に乗り込む。
来たところで、何ができるのかわからない。しかしまた必ず、訪ねたいと思う。

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