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猫島物語<序章>

ある日、いつものように車を走らせていた
外は冬とはいえ日差しがきつく車内は暖かい・・・
ふと道端の黒猫と目が合った!

「はっ!」と鼓動が高まった
「これは?」
昨日の夢枕に立っていた黒猫だ

遠い昔、犬は飼ったことがある
が猫はない・・・それが不思議に夢枕にいた
不思議と黒猫に懐かしさを覚えた

それが、いま、あそこに立っている
「はっ!」
消えた。どこに行ったんだろう?
と思う暇もなくバックミラーに後続車が迫ってきた

「なんだ!?!・・・」
打ち合わせを終えた
夕方になると冬だ、やはり寒い
風が冷たい・・・

小急ぎに駐車場に向かった
車のボンネットに「あの黒猫」が座っている
こちらを眺めてる!

まだ今朝の心臓の高鳴りを覚えている
なんだ!?!・・・
「僕になにかのメッセージか?」
特に猫好きの知り合いもいない

確かに猫ブームだ・・・猫の写真集も数多く出版されている
妻は昔飼ってたのかなぁ?
でも、そんな話など聞いたことはない

仕事で親密なスタッフに猫好きは・・・?
いても不思議はないけど
スタッフの愛しい猫が死んだって話は聞いてないし
そもそも健康状態を悪くしたスタッフもいないようだし
・・・などなどと僕の人間関係と猫との関係を思い浮かべては
それはないしなぁ~とまた消して
・・・とやってるうちに~

携帯電話が鳴った!
「はい・・・」
いつも世話になっている編集者からだった
「先生。猫の写真集作りませんか?」

驚きのあまり携帯電話を落としてしまった

慌てて車を道路わきに停めて
携帯電話を探した

受話器からは、猫だ、猫だと編集者の声がする
「猫ですか・・・?」
なんだか恐る恐る尋ねた声が少し震えている
「単なる猫の写真じゃ面白くないでしょ
なにか企画ですよ、企画!
企画を考えましょう・・・」

僕は引き受けた
のだけど、不思議な縁に導かれ始めているのだろうか?

家に戻ると編集者からのメールが届いていた

瀬戸内海のちょうどおへそ辺りに浮かぶ島がある
撮影地が示されていた

フェリーを降りる桟橋から野良猫が出迎えてくれる
とメールにあった・・・
「あの黒ちゃんが、そのなかにいるかな?」

そこは映画のロケ地になったとメールは続いた
横溝正史の獄門島・・・
なんだ、薄気味悪い怖い島なのかな?
いや、そうでもないらしい
今やハリウッドでも時めく渡辺謙のデビュー作で
夏目雅子の遺作となった阿久悠の自伝的小説の映画化
瀬戸内少年野球団のロケ地だともいう

映画のロケにもでた中学校が残っているという
レトロはいいなぁ~
木造校舎がそのまま今でも使用されているらしい

ふむ~、なら、レトロの猫島なんだ・・・

少年野球団は終戦後間もない島で民主主義が云々と
いう話だったよな
少し東に行けば小豆島
24の瞳だよ

そのもっと、もっと昔を辿れば
瀬戸内海の島なんてのは海賊島だよ・・・
海賊の猫王国が昔懐かしい木造校舎に住み着いていて
黒ちゃんシンドバッドがでてきたり~~して・・・

期待は膨らむ
木造の廊下や階段で野良猫が気ままに身繕い
占拠して村人と同居なんてなると
それこそ地球最後の楽園か?

倉敷の西、笠岡からフェリーが出航している
兎に角、下見に行ってみないとなにも見えない

季節は冬
朝一番のフェリーに乗るため
深夜の高速をボロ車で飛ばした

外気はー5℃を差している
凍り付いた道路でのスリップが怖い

SAの店先の水瓶に薄氷が張っていた
なかで子魚が泳いでる
そうだよなぁ~
野良猫王国だったら金魚など食べられちまうよな

暗闇の中から視線を感じる
「黒ちゃん?」
お迎えかな・・・
「島で会おう!」

僕は不思議な因縁の綾にでも操られるようにして
氷点下の高速道路をひた走りに走っていた

<衝撃の驚きの現実が島で待っていた!!>

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