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及川徹が気になりすぎてFIVBのSPORTS REGULATIONSを読んでみた

ハイキュー、終わっちゃいましたね、、、

最終回なんて永遠に来ないで欲しい、と思ってたけど、あまりに最高の最終回すぎて何も言えません。素晴らしかった、本当に、想像のはるか上をいく素晴らしさだった。

タイトルでお分かりのように、私は及川徹が大好きな読者です。なのでこう、最終回を読んでからずっと「及川さんはどの段階で帰化したのかな?」ということが気になって気になってそのことばかり考えてます。及川徹がたどった道筋の、できるだけ詳細を知りたくてたまらない。

で、検索したんです。あれこれ。無名のバレーボール選手が、帰化して他国の代表に選ばれ、オリンピックに出場する情報。でも、確実性のある情報がヒットしない。そりゃそうです。及川徹はパイオニアなので、前例なんてないんです(たぶん)。

そういうとき、どうしたらいいのか。原典にあたる、しかないんですよ。原典、この場合、国際バレーボール連盟(FIVB)の規定する規約、です。帰化選手の取り扱い、代表となるための条件、その手続き、エトセトラ、すべては規約に規定されているはず!
ということで、FIVBの規約を読むことにしました。

FIVBの規約ってどこにあるの?

と、ここでFIVBの規約がどこにあるか、を共有しておきます。
FIVBのトップページ→ページ下部の「LEGAL」をクリック、でFIVBの規約群を見ることができます(群、というとおり複数あり、どれが該当するか上からひとつずつ確認しました。疲れた、、、)。
今回知りたい情報は、その中の「Sports Regulations - (in force since 22.01.2020)」という規約にありました。
自力では到底理解することができないので、Google翻訳先生ほか、複数の翻訳サイトのお力をお借りしました。それでもかなりつらかったです。でもつらくても読み続けました。それこそ数時間に渡って、、、ほんと、愛の力って偉大だと思います。

序盤に結論です

で、結論。
及川徹の帰化のリミットは特にない。どのタイミングで帰化をしても特段問題とならない。
なお、当然ですがこの結論は私が勝手に検討の結果出したもので、間違っている可能性が多分にあります。なので、これが正しい!と主張するつもりは微塵もない、ということご理解ください。

結論だけ書いても説得力ないので、一応思考の過程を載せておきます。

FIVBのSports Regulations

まず、FIVBのSports Regulationsは「2. NATIONALITY(国籍)」で以下のとおり規定しています。

2.1 ELIGIBILITY TO PLAY FOR A NATIONAL TEAM
Any person holding the nationality of a country, whether acquired at birth or later (by application or any other means), is eligible to play for the national team of the National Federation of the same country, provided that said National Federation is his Federation of Origin and that the conditions set out in these Regulations are fulfilled. 
2.1ナショナルチームでプレーする資格
出生時に取得したかどうかにかかわらず(申請またはその他の方法で取得したかどうかにかかわらず) 、その国の国籍を有する者は、当該国の国内連盟がその者の出身国の連盟であり、かつ本規則に定められた条件が満たされていれば、その国の国内連盟の代表チームでプレーすることができる。

つまり、及川さんはアルゼンチン国籍を取得すれば(そして規則の定める要件を充たせば)アルゼンチンのナショナルチームでプレーできます。
これは、最終回で及川さんがアルゼンチン代表としてオリンピックに出場していることからも明らかです。

そして次に、ここが私はポイントだと思っているんですが、「2.4 FIRST REGISTRATION IN OWN OR FOREIGN COUNTRY(自国または外国での最初の登録)」で以下のように規定しています。

2.4.1 The Federation which is the first to: 
a. register the player in its national team for an FIVB, World or OfficialCompetition through the final FIVB O-2bis Form, with the player’spresence being certified by the Control Committee; or
 b. issue a national license for the player or otherwise register theplayer within its Federation; 
is considered to be the player’s Federation of Origin regardless of theplayer’s nationality.
2.4.2 If at the time of registration the player holds the nationality of another country only, he becomes eligible to play in the national team of his Federation of Origin immediately after obtaining the same nationality as his Federation of Origin.   

2.4.1
a. FIVB O-2bis 最終フォームを通じて FIVB、世界、公式競技会の代表チームに最初に選手を登録した連盟は、管理委員会によって選手の存在が証明され、選手の国籍に関係なく、その選手の出身国の連盟とみなされます。
b. 選手の国籍に関わらず、その連盟内で最初に選手の国内ライセンスを発行したり、選手を登録したりした連盟は、選手の出身連盟とみなされる。
2.4.2
登録時に他国の国籍のみを保有していた場合、その選手は、その国の国籍を取得した後、直ちにその国の代表チームでプレーする資格を得る。  

最終回でも言われていますが、及川徹は無名の選手でした。全国大会に出たことも、ユース代表・A代表に選ばれたことも一度としてありません。また、高校卒業後すぐにアルゼンチンに渡っているので、日本の国内リーグであるVリーグのチームに所属したこともありません。
及川徹の最初の所属先は、アルゼンチン国内リーグのサンフアンです。上記規約の2.4.1bに該当する状態です。その場合、アルゼンチンは及川徹の出身連盟とみなされます。サンフアンに所属した時点では及川徹はまだ日本国籍のはずです。そこで、規約の2.4.2が出てきます。登録時に日本国籍のみを有していた及川徹は、アルゼンチンに帰化した後は、直ちにアルゼンチンの代表チームでプレーする資格を得る、のです。

これがもし、牛若ちゃんや影山のように日本の代表チームに選ばれたことのある選手だったらどうだったでしょうか?
それについては「5. CHANGE OF FEDERATION OF ORIGIN(出身地連盟の変更)」に規定されています。

5.1 GENERAL
A player's Federation of Origin may be changed only once. Changes of Federation of Origin may be approved only by the FIVB Executive Committee, upon proposal of the FIVB President, and provided that the right to be heard of the current Federation of Origin has been respected. 
5.1 一般
選手の連盟の変更は1回のみ可能です。出身地連盟の変更は FIVB 会長の提案により FIVB 実行委員会によってのみ承認され、現在の出身地連盟の意見を聞く権利が尊重されていることが条件となります。

5.2 CONDITIONS
A change of Federation of Origin (hereinafter "the Change") may be approved only if the following conditions are cumulatively met:
5.2.1 The player has established residence in the country of his new Federation of Origin for a minimum of two (2) continuous years immediately prior to the time of filing the application for the Change.
5.2.2 The player has obtained the nationality of the country of the new Federation.
5.2.3 The player's Federation of Origin agrees to the Change.
5.2.4 The new Federation agrees to the Change.
5.2.5 The applicable administration fee for the Change has been paid to the FIVB (see Article 5.3 below). 
5.2 条件
出身国の変更(以下「変更」という。)は、以下の条件を累積して満たしている場合にのみ承認される。
5.2.1 選手が、変更の申請を行う直前に、新しい連盟の国に最低2年間継続して居住していること。
5.2.2 選手が新連盟の国の国籍を取得していること。
5.2.3 選手の所属する連盟が変更に同意していること。
5.2.4 新連盟が変更に同意する。
5.2.5 変更のために適用される事務手数料は、変更後の連盟に支払われます。FIVB(下記第5.3条参照)。
5.3 PROCEDURE
5.3.1 The following documents shall be submitted to the FIVB:
a. One (1) original copy of the respective FIVB form (see www.fivb.org), duly signed and stamped by the player, his Federation of Origin and the new Federation; and
b. Proof of two (2) years continuous residence in the country of the new Federation. Residence means the place where the player “lives and sleeps” and can be found in the majority of the days of the year; and
c. Copy of the player’s International Passport of the country of the new Federation. 
5.3 手続き
5.3.1 以下の書類をFIVBに提出しなければならない。
a. 各 FIVB 書式の原本 1 通( www.fivb.org を参照)で、選手、所属連盟及び新連盟が正式に署名・捺印したもの。
b. 新連盟の国に 2 年間継続して居住していることを証明すること。居住地とは、選手が「生活し、睡眠をとる」場所であり、1年のうちの大半を過ごしている場所を意味します。
c. 新連邦の選手の国際パスポートのコピー。
(中略)
5.5.1 Unless decided otherwise, the decision of the FIVB Executive Committee to approve the Change is effective from the day of its notification to the new Federation.
5.5.2 As of that date, the player shall have the same rights and obligations with players of the new Federation (e.g. he can directly compete in club competitions of the new Federation without a need for ITC). However, if the player has previously played for another national team, he will be eligible to play for a national team of the new Federation only after two (2) years have elapsed. This two-year period starts from the day that the complete application file, containing all required documents, is received by the FIVB. 
5.5.1 別段の決定がない限り、FIVB執行委員会による変更承認の決定は、新連盟に通知した日から有効となる。
5.5.5.2 その日からその選手は新連盟の選手と同じ権利と義務を持つ(例: ITC を必要とせずに新連盟のクラブ競技に直接出場できる)。ただし、その選手が過去に他の代表チームでプレーしていた場合は、2年が経過して初めて新連盟の代表チームでプレーする資格を得ることができる。この2年間の期間は、FIVBによってすべての必要書類を含む完全な申請書が受理された日から始まります。

この場合、最低2年間帰化する予定の国に居住していなければなりませんし、日本のバレーボール連盟がその帰化に同意していなければなりません。また、日本代表でプレーした経験がある場合、帰化した後2年間は帰化した先の代表チームでプレーすることができません。新しい国の代表としてプレーするには準備期間も含めて最低4年は必要となります。
なお、蛇足になりますがサッカーは一度でも代表としてプレーすると、ほかの国の代表にはなれないそうです。厳しいですね、サッカー。

こうなってくると、及川さんが学生時代は無名だったこと、アルゼンチン代表になるためにはむしろ良かったんだな、と思えてきます。
そうは言ってもやっぱり、インターハイや春高の舞台を踏ませてあげたかった、という気持ちはなくなりませんが、でもでも、うん。及川徹の人生は必然なんだな、って思えます。

というわけで、FIVBの規定上は及川徹の帰化について、時間的な制限を課す要素はなかった、ということになります(少なくとも、私の理解では)。
なので、あと問題になるのは、アルゼンチンの帰化要件と、オリンピック憲章です。

アルゼンチンの帰化要件

そこで、アルゼンチンの帰化要件を調べてみました!

平成 26 年度 法務省調査研究請負
アルゼンチン共和国における身分関係法制調査研究報告書
平成 27 年3月 20 日WIP ジャパン株式会社 より以下引用

国籍の取得
以下の者はアルゼンチン国籍を取得し帰化することができる(政令3213/1984 号3条)。
・アルゼンチン共和国に2年以上続けて在住する 18 歳以上の外国人で、裁判官の前でアルゼンチン人になる意思を表明する者
・滞在期間に関わらず、以下のいずれかの奉仕を果たしたことを証明できる者
ア アルゼンチン共和国内外で、国・州・市町村若しくはティエラ・デル・フエゴ、南極及び南大西洋諸島にあるアルゼンチン領土の公行政における職を誠実に務めた者
イ 軍で勤務、又は国防のための戦闘行為に参加した者
ウ 国内で新たな産業又は有益な発明を導入、又は国の精神的物質的進歩につながる行動を行った者
エ 国内にある、又は今後設立される入植地で入植している者
オ ティエラ・デル・フエゴ、南極及び南大西洋諸島にあるアルゼンチン領土に在住、又は入植を振興した者
カ 配偶者又は子供が生まれながらのアルゼンチンである者
キ 教職を務める者
以下の場合はアルゼンチン国籍が与えられない。
・職業又は生活手段を持たない者
・アルゼンチンの刑事法令で規定される犯罪により、国内又は外国で起訴されている者
・国内又は外国で、故意の犯罪により3年を超える自由刑に処されている者(刑期の終了から5年を経ている場合又は特赦があった場合を除く。)

これによれば、及川さんはアルゼンチンに渡った時点で18歳を超えているので、在住期間が2年を超えた時点でいつでもアルゼンチンに帰化できていた、となります。

オリンピック憲章

最後に、オリンピック憲章です(さすがに疲れてきた、、、)

2019年版
41 競技者の国籍 *
1. オリンピック競技大会に出場する競技者は、 参加登録申請を行う NOC の国の国民でなければならない。
2. 競技者がオリンピック競技大会でどの国の代表として出場するのかを決定することに関わる問題は、 すべて IOC 理事会が解決するものとする。
規則 41 付属細則
1. 同時に 2 つ以上の国籍を持つ競技者は、どの国を代表するのか、自身で決めることができる。
しかし、 オリンピック競技大会、 大陸や地域の競技大会、 関係 IF の公認する世界選手権大会や地域の選手権大会で 1 つの国の代表として参加した後に、 別の国を代表することはできない。 ただし、 国籍を変更した個人、 もしくは新たな国籍を取得した個人に適用される以下の第 2 項の定める条件を満たした場合は、 その限りではない。
2. オリンピック競技大会、 大陸や地域の競技大会、 関係 IF の公認する世界選手権大会や地域の選手権大会で 1 つの国の代表として参加したことがあり、 かつ国籍を変更した競技者または新たな国籍を取得した競技者は、 以前の国を最後に代表してから少なくとも 3 年が経過していることが新たな国を代表してオリンピック競技大会に参加する条件となる。 この期間については、 当該 NOC と IF の合意のもとに、 IOC 理事会が個々の状況を考慮し、 短縮することができるばかりか、 場合によっては撤廃することもできる。
3. 準州、 省、 海外県、 国または植民地が独立を実現した場合、 1 つの国が国境の変更により他国に併合された場合、 1 つの国が別の国と合併した場合、 あるいは新たな NOC が IOCにより承認された場合、 競技者は引き続きかつて所属した国でも、 現在所属している国でも代表することができる。 競技者は自身が代表する国を自身の意向で決めることができ、 NOCが存在するならば、 新しい NOC によるオリンピック競技大会の参加登録申請を選ぶことができる。 このような特別な選択は 1 度だけ認められる。

オリンピック憲章によれば、FIVBの規約同様、過去に代表チームでプレーしたことのある選手のみ、国籍変更後一定期間(この場合3年)を経てなければオリンピックに代表選手として出場することができないと規定してあります。
前述のとおり、及川さんは無名の選手だったのでこの規制対象になりません。

繰り返しの結論と私からのお願い

というわけで、及川さんはいつアルゼンチン人になっても問題ない、というのが私の結論です。
いつでもいい、ということは想像の翼が広げられるということ。
ぜひみなさん、アルゼンチン代表になる及川さんの二次創作をつくって、私に見せてください!約束ですよ。私はそれをたのしみに、日々各所をチェックします。
現場からは以上です。

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