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さよなら平成

 昨日、『愛がなんだ』の舞台挨拶&トークライブに行った時、冒頭、「平成はどうでしたか?」という雑談になった。Homecomingsの福富さんは、「それ、いつも聞かれるんですけど難しいんですよね。僕たちは1991年生まれだから、平成であることが当たり前で。元号が変わるのも、今回がはじめてだし」とおっしゃっていた。1992年、平成4年生まれの私も同じだ。平成と90年代がはじまって、幾ばくもたっていないうちに生を受けた。世間は私たちを「ゆとり世代」だの、「さとり世代」だのと言う。ゆとり教育全盛期(本当の全盛は95年生まれで、私の弟が最大の時代の被害者だ)、生まれた頃からバブルがはじけていて、不況の中を生きてきたから現実主義で欲がない、なんて形容されるけれど。

「いや、知らんがな」、である。

 正直、まじで、「いや、知らんがな」なのだ。私が90年代に、平成に生まれたことも、失われた20年の間を歩まされてきたことも、私が決めたことではない。昭和の終わりに両親が出会い、平成のはじめに、たまたま私が生まれた。ただ、本当にそれだけだ。それまでの歴史をつくったのは、私たちがこういう環境の中で生きることになったのは、いまの大人たちがそういうレールを敷いてきたからに他ならない。

 明後日、元号が変わる。すでに「令和」という名前に決まっている。元号発表の瞬間は、会社で首相官邸のインスタライブを見ていた。電話を受け取っている最中に、菅官房長官が「令和」の文字を掲げた。「ふぅん」と思った。平成を振り返るテレビ番組や雑誌の企画が溢れかえっている中で、どうもその波にも乗れずじまいだったけれど、そりゃそうなのである。だって、平成であることは私にとって当たり前だったのだから。「こういう時代でした」って、どうしても言い切れなかったのだ。

 ひとつ言えることは、まんなかより少しあとの平成19年、14歳の時。私ははじめて、「自分の道を生きる」きっかけをつかんだ。「自分が聴く音楽を、はじめて自分で選んだ」のである。それまでは有名な音楽番組で紹介されたものや世の中のチャートの上位、クラスのみんなが聴いていることが最重要で、というか、そういう風に勝手に耳に入ってくるものしかキャッチしていなかった。でも、14歳の誕生日に、はじめて自分から頼んでCDを買ってもらったのだ。

 これがなかったら、いまの私は、まじでいない。自分史の中で、「(平成しか生きていない)平成大事件」を挙げたら、1位は間違いなくこれだ。そこから平成が終わるまで、なんなら令和だって駆け抜ける勢いでずっと「スピッツが好き」だなんて、自分でも想像していなかった。偉大である。

ちなみに「スミス史における平成大事件」の2位は平成27年に交通事故に遭って死にかけたこと、3位は平成20年にグロすぎて書けないような大怪我をしたこと、だろうか。我ながら思うけれど、なんでこんなに痛いことばっかりなんだよう。

 スピッツとの出会いをきっかけに、私の人生は少しずつ変わっていった。同じような深さでスピッツのことを語れる同世代の友達がほしくてブログをはじめてみたり、「クラスのみんな」が知らないような音楽にものめりこんでいったりした。時たま、その「みんな」が知らないことにさみしさを覚えることもあったけれど、そのおかげで世界の広さや深さを知った。私にとって平成とは、自分の人生を生きはじめたきっかけの時代なのだ。

ちなみにそのブログで出会った子のひとりとは、出会ってから8年を経た大学4回生の頃にようやく直接会った。いまではライブのみならず、普通に遊ぶ仲だ。

 令和は、どんな時代になるだろう。わからないけれど、ただ、これからは「私たちの世代が時代をつくっていくこと」に意識的になるべきだろう。仕事すら満足にできないポンコツなのに、何言ってんだこいつ、と自分でも思う。けれど、別に大仰なことをする必要はないのだ、たぶん。「自分で決めること」を、しつづける。その時に、自分のことだけを考えるのではなくて、「だれかのこと」も頭に入れておけばいい。それだけでいいのだ、きっと。ああ、やさしくなりたいな。

* * *

平成ベストとか、決めかねすぎるだろうと思っていてやらなかったのだけど、音楽編だけ31曲分、残しておこう。「平成をかざるプレイリスト」のタグを使わなかったのは、スピッツもバンプもサブスクになくて拗ねたからだ。令和には進出してくれよ。

ロビンソン/スピッツ(平成7年)

GOING TO THE MOON/TRICERATOPS(平成11年)

天体観測/BUMP OF CHICKEN(平成13年)

ハイウェイ/くるり(平成15年)

援助交際/銀杏BOYZ(平成17年)

ロックとハニー/スパルタローカルズ(平成17年)

アンセム/アナログフィッシュ(平成18年)

恋愛スピリッツ/チャットモンチー(平成18年)

ある街の群青(平成18年)

エレクトロワールド/Perfume(平成18年)

フリージア/ART-SCHOOL(平成19年)

ladybird girl/the pillows(平成19年)

Sugar!!/フジファブリック(平成21年)

完璧な庭/People In The Box(平成21年)

everything is my guitar/andymori(平成21年)

サリンジャー/The SALOVERS(平成22年)

ミス・パラレルワールド/相対性理論(平成22年)

『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』/サカナクション(平成23年)

short hair/Base Ball Bear(平成23年)

青い栞/Galileo Galilei(平成23年)

ニュースキャスター/フィッシュライフ(平成25年)

アットホームダンサー/HINTO(平成25年)

MODELS/シャムキャッツ(平成26年)

君が誰かの彼女になりくさっても/天才バンド(平成26年)

ラブホテル/クリープハイプ(平成26年)

BOOOOM/空きっ腹に酒(平成27年)

マジックミラー/大森靖子(平成27年)

醒めない/スピッツ(平成28年)

N.E.O./CHAI(平成29年)

マリーゴールド/あいみょん(平成30年)

エロい関係/奇妙礼太郎(平成30年)

番外編
平成/折坂悠太(平成30年)


最後まで読んでくれて、ありがとうございます!