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「野球離れ」を食い止めよ!-現状の正確な理解とあるべき方向性とは- | THE BASEスポビズレポート#02

◆概要
■現代の野球離れの本質的な問題点とは
■現状の野球離れに対する対策事例とこれから

プロ野球人気の堅調な推移

球界再編といわれたプロ野球2004年問題を契機に、プロ野球界は変わった。それまでのテレビ観戦型コンテンツから、球場を起点とした現地観戦コンテンツ(地域密着モデル)へと変革を遂げた。ファンは増加し、実数発表に統一した2005年と昨年2018年を比較すると以下の通りとなっている。

(参照:NPB公式サイト)

▽2005年 
セ:11,672,571 
パ: 8,252,042 
合計:19,924,613 
▽2018年 
セ:14,235,573 
パ:11,315,146 
合計:25,550,719

2005年比でセは121%、パは137%の伸びを示している。極めて堅調な推移と言える。

野球離れの本質的な問題点

アマ野球競技の代名詞ともいえる高校野球の競技人口はどうだろう。
21世紀に入ったころから巷では「野球離れ」がささやかれはじめる中、2014年までは毎年微増を続けてきた。(※2014年を頂点に、毎年微減傾向に)
甲子園の来場者についても、毎年多くの観客が足を運び続け、昨年夏の甲子園大会の総入場者では史上初の100万人を突破するなど、相変わらずの甲子園人気を証明した形だ。
しかし、実情は少し違う。
2005年に165,293人いた高校球児は、2018年には153,184人に。約12,000人減った計算だ。
しかし、少子化であることを考慮するとどうなるか。2005年時に高校1~3年男子の人口が約191万人、同2018年には177万人と減少している。これを母数に球児に人口で割り返してみる(=高校生男子人口に占める球児の割合)と2005年は8.6%、そして、2018年も変わらず8.6%となり、相対的には横ばいという結果になっている。つまり、100人に8.6人が甲子園を目指している計算になる。これが高いのか、低いのか。PL学園で桑田、清原のKKコンビが大活躍をしていた時代を見てみると、高校1~3年の男子学生の数が約280万人、同高校球児の数は123,928人。同様に比率でみてみるとなんと4.4%となっており、今(8.6%)の約半分程度になっている。
当時は野球人気が低かったわけでもなく、むしろ競技人口もたくさんいた時代。にもかかわらず高校球児の人口が今よりも絶対数も少なく、男子人口に占める高校球児の割合は今の半分程度となっている。ここに現代の野球離れの本質的な問題点を探るヒントが隠されていると思っている。一言でいうと、当時は小、中までは楽しく野球をやっていたが、高校野球のようなシリアスベースボールに転換するタイミングで離脱組が続出したということだろう。中体連の数字を見てもそれが証明できる。そして、これらの離脱組こそが「野球のルールを知っている非競技者」であり、まさに、「潜在的な野球ファン」ということになるのだろう。逆説的に言えば、この離脱組が少なく、競技者が減少することで潜在的な野球ファンは激減することになる。
このように、プロ野球の人気回復、高校球児人口の微増、高校野球観戦数の増加など、表面上のプラスな事象に対し、「野球もまだまだ捨てたもんじゃない」と信じ、見過ごしてきてしまった代償ともいえるのではないか。まさに「ゆでガエル理論」が当てはまるような話でもある。

野球界における問題提起と具体的活動


今年の1月、横浜DeNAベイスターズの筒香選手が立ち上がり、「変わろう、野球」を訴えた。それにメジャーに渡った菊池雄星も同調するなど、現役選手も積極的にこの問題に大きな警笛を鳴らし始めた。
勝利至上主義、甲子園至上主義、体罰・罵声、過度な練習量などの指導者問題、親の負担(時間とお金の問題)、ダサい(カッコよくない)、高野連が古い、などなど巷で囁かれている「野球離れ」の原因ともいえるキーワードの数々。現場だけの問題でもなく首都圏を中心に地上波ではまず野球中継を見られない。空き地がなく遊べない、あったとしても「キャッチボール禁止」となっている、少子化により(遊び相手としての)兄弟がいないなど、環境、時代の変化も多分に影響している部分もある。
今年のゴールデンウィークの5月2日に、Yahoo!ニュースでこんな記事が掲載された。
「すでに危険水域に突入しているといっていい。日本中学体育連盟(中体連)が公表しているデータによれば、2018年の中学校の軟式野球部員数は全国で16万8800人。08年の30万5958人から10年間で約13万7000人も減った。09年からは毎年、1万~2万人のペースで部員数が減っている。10年後には中学校から軟式野球部員がいなくなる計算だ。侍ジャパンU12の監督を務める仁志氏は『実感として、中学野球部は10年持つか持たないか、という印象』と表情を曇らせる。」
待ったなしの状況である。
もちろん、様々な箇所であるべき普及活動が芽吹いてきていることも事実。
青森県では高校の野球部員たちが「少年野球チームに対する室内練習場を使った野球教室」「未経験者に対する野球遊び体験」「出張野球教室」「保育園を訪問しての野球遊び体験」などを実施。茨城県つくば市では春日学園少年野球クラブを設立し、「罵声指導の禁止」、「(練習時間)週末1/4ルール」、「コーチングを専門に学ぶ筑波大学院生による指導」、「適度な試合数と厳密な球数制限による肩、肘酷使の防止」、さらには、「父母会設立の禁止」、「勝利至上主義の否定」と「勝ちに行く姿勢」の奨励、「ノーサインノーバント主義」を掲げて理想的なチームを作り実績をあげている例もある。また、早稲田大学野球部OBが中心となり、野球人口減少の背景には子供たちの日常の遊びだった「野球あそび」の消失があるとし、早稲田大学野球部OB会として「プレイボールプロジェクト~野球を始めよう、楽しもう、学ぼう」と題するイベントを実施している例もある。


来たる6月17日にこれらの現状を踏まえ、問題の本質を整理するとともに、だれが、どう対処してけば変わるのかについてTHE BASEスペシャル企画として、日ごろからこの問題について正面から向き合い、警笛を鳴らし、あるべき姿を提示し続けている元千葉ロッテ球団の荻野忠寛氏を招き、THE BASE代表の荒木のモデレートのもと、会場からのご意見も参考にしながら徹底議論を展開させ、その糸口を探っていくセミナーにしていきたいと思っています。

▼6月17日開催のイベント詳細はこちら

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