見出し画像

世界のコートから エチオピア編【前編】

『スポーツイベント・ハンドボール』2018年10、11月号に掲載した「世界のコートから エチオピア編」を全文公開します。今回は前編をお届けします。

 初めまして。宇佐美みつきと申します。

 私は昨年の7月より、青年海外協力隊(以下、協力隊)として、アフリカのエチオピアで、15才以下の子どもたちにハンドボールの指導をするボランティア活動をしています。

 私は現在28才で、エチオピアに来る前は神奈川県の高校で体育教師をしていました。そこでハンドボール部の顧問を務めつつ、自身は県内のクラブチームに所属し、選手としてハンドボールにかかわっていました。ハンドボールに出会ったのは、高校生の時。それからハンドボールがとにかく大好きになり、現在の活動に至っています。

 私が協力隊に応募したきっかけは、大学4年時に協力隊の説明会に参加したことです。海外で生活することが夢の1つだったこともあり、ボランティア活動をしながら海外で生活する、という協力隊の活動をとても魅力的に感じました。

 しかし、当時の私は、体育教師になることがそれ以上に大きな夢であり目標だったため、大学卒業後は体育教師になる道を選びました。その後、教員として働いた時間は、私の宝物です。体育の授業をとおして多くの生徒たちとかかわりながら過ごした毎日は、たくさんの刺激にあふれ、部活動では生徒たちがハンドボールをとおして人として成長していく姿を見られました。素晴らしい時間でした。

 その4年間を経て、私自身が人としてより大きく成長しなければならないと思うようになり、大学時代のことを思い出し、再び協力隊の道に挑戦する決断をしました。

 協力隊になるためには、1次選考の書類審査を経て、2次選考の面接試験(技術試験が課される場合もある)に合格することが条件です。合格した際に、派遣国が通知されるため、合格するまではどこの国に派遣されるかはまったく知りませんでした。でも、今ではエチオピアに派遣されたことを本当にうれしく思っています。

エチオピアという国

 エチオピアはアフリカ大陸の東に位置する、人口約1億人の大きな国です。9つの州と、約80の民族が存在し、それぞれの州や民族によって生活言語や文化が異なるとてもおもしろい国です。
 近年は経済成長が著しいですが、まだまだ支援が必要な部分もたくさんあります。そして、エチオピアに派遣されている協力隊のほとんどが、教育にかかわる活動をしています。中でも、2020年の東京オリンピックに向けて発足されたSFT(Sport For Tomorrow)の活動に合わせて、体育やスポーツの専門種目のボランティアも多く派遣されています。

私の活動内容

 私は、エチオピア北部のティグライ州アクスム市という場所で、市内の15才以下の男女を対象に創設された、ハンドボールの選抜チームのコーチとして市内のスポーツ事務所に配属されました。

 チームには男女それぞれ20人の選手と、現地の指導者が1人ずつ所属しており、放課後や週末の時間を使って練習をしています。毎年6月に開催される州内大会や、その次につながる全国大会出場に向けて、チーム力や個人の技術向上をめざしているところです。

 私のおもな活動内容は、日々の練習で選手に技術指導をすることと、指導者に対して練習内容の助言やサポートをすることです。

 それに加えて、私が力を入れていることは「練習環境の整備」です。日本では当たり前にあるボールやゴールネット、トレーニングで使用するコーンやハードルなどの練習用具がほとんどない、というのがここでの現状です。

 子どもたちは、ボロボロの3号球たった1球を全員で使用しています。そのような現状をなんとかしたい、もっといい環境で子どもたちにハンドボールを楽しんでもらいたい、ということが現在の活動の軸となっています。

 具体的には、現地で調達可能な道具を用いて、ゴールネットやトレーニング用具の作成をすることや、練習場所である小学校のグラウンドや市内のスタジアムの清掃活動を現在企画しているところです。また、練習中のケガや事故への対策がまったく取られていないので、ファーストエイド(応急処置)のための用具の導入についても、配属先に対して提案をしています。

 まだまだこれから! という私の活動ですが、これまでの1年間で私が感じていることは、ハンドボールをとおして多くの人とのつながりを実感できる喜びです。シュートを決めて喜ぶ姿、ミスをして落ち込む姿、悔しくて必死に練習する姿。ハンドボールが好き、という子どもたちの思いは、日本人でもエチオピア人でも同じなのです。

 ハンドボールの経験が、協力隊への道につながり、こんなに素晴らしい経験ができていることに大きな幸せを感じています。これからもその気持ちを忘れることなく、毎日を大切にしながら活動に取り組んでいきたいです。


よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートはよりよい記事を作っていくために使わせていただきます。