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世界のコートから エチオピア編【後編】

『スポーツイベント・ハンドボール』2018年10、11月号に掲載した「世界のコートから エチオピア編」を全文公開します。今回は後編です。
筆者:宇佐美 みつき/28才、2017年度青年海外協力隊。体育隊員としてエチオピアにてハンドボール指導のボランティア活動に従事。

州大会への参加

みなさん、こんにちは。

前編では私の経歴や、エチオピアでどんな活動をしているのかということをお伝えしました。

今回は、2018年6月末に約1週間かけて開催された、私の任地であるアクスム市が属するエチオピア北部のティグライ州の州大会についてご紹介します。

この大会では、ハンドボールだけでなく、サッカーやバスケットボール、陸上、ボクシングなど、さまざまなスポーツの大会が同時に行なわれました。コルムという1つの町での開催だったため、大会期間中は多くの子どもたちが集まり、お祭りのような雰囲気でした。

ハンドボールの州大会とはいえ、州内のすべての市や町にチームがあるわけではないため、今大会では男子5チーム、女子4チームが参加しました。15才以下と17才以下の2つのカテゴリーに分けて、総当たり戦での勝点制で順位を決定する方法で大会は運営されました。

この大会のために、昨年10月から約8ヵ月間、男女合わせて40人の子どもたちと3人のコーチ陣とともに練習をしてきました。しかしながら、大会会場までの交通費や期間中の食費、宿泊費などの金銭的な問題で、40人全員を大会に連れていくことができず、最終的には男子13人・女子11人を泣く泣く選抜しました。

このように、「金銭面に余裕がない」ということが、発展途上国でスポーツをするうえでは逃れられない大きな壁なのだということを改めて実感しました。

この大会中、私は「スコアラー」と「ケガ人対応」としてベンチに入りました。これらは、私が練習中から取り入れていたことで、エチオピアでは練習内容を記録したり、試合の点数やシュートの決定率などを、数にして「見える化」することをしません。

そこで、「数」に対しての意識を高めて、技術の向上を図ることを提案しました。すると、シュート練習ではシュートの質を意識するようになり、練習試合では点差を気にしながら試合の展開を考えるようになりました。

また、ここでは練習場に「救急バッグ」がありません。これも大きな問題として考えています。

ハンドボールなどのコンタクトスポーツではとくに、打撲やねんざ、突き指などが想定されることに加え、石ころやガラスの破片などが当たり前のように転がっている危険なグラウンドでの練習で、ケガとはいつもとなり合わせといっていい状態です。

現在、ファーストエイドキットの導入を提案しているところですが、まだ実現できていないため、つねに救急セットを練習場に持ち運び、簡単な応急手当てができるように準備しています。

入賞はできなかったけど…

いよいよ大会が始まり、子どもたちは緊張しているようすで試合に臨んでいました。言葉がなくても、その緊張感や試合へのワクワクした気持ちは彼らの表情から充分伝わってきました。

私も同じように緊張感を持ちながら、彼らと気持ちを1つにして戦うことに専念できたように思います。練習したポストプレーが決まったり、大きな相手に対して完璧なDFができたり、 GKが最高のセービングをしたり…。すべてのプレーが本当にキラキラして見えました。

男子チーム(上)と女子チーム(下)のメンバー。それぞれ精いっぱいがんばりました

大会の結果は、男女ともに入賞とはいかず、全員が悔し涙を流していました。初めての公式戦が、苦い結果となってしまったことが残念でしたが、私は子どもたちが必死になって戦う姿を見て、ハンドボールのおもしろさを改めて実感することができました。

この大会で出た反省点をもとに、今後の練習内容の改善や、チーム力向上のために必要なことを話し合い、次こそ上位をめざして練習に励んでいきたいです。

そして、こうした場面でも、日本との大きな違いを感じます。それは「試合の反省、振り返りをしない」ということです。

勝っても負けても、ミーティングをして、次の試合や練習に向けてチームを立て直すことが日本では当たり前のように行なわれますが、「過ぎたことは気にしない」というエチオピア人の性格? 風習? が、スポーツにおいても出ているような気がして、違和感を覚えました。

この大会をきっかけに子どもたちが得たものは、試合に負けた時の悔しい気持ちや、試合でいつもどおりのプレーをすることの難しさだったでしょう。私は、この悔しい気持ちを彼らに忘れてほしくありません。

確かに、周りに練習試合ができるような相手チームがおらず、つねにチーム内での紅白戦で本番を意識させるには、限界があるはずです。

しかし、与えられた環境の中で、彼らが最大限に成長をしていくために必要なことはなにか。また、そのうえで私にできることはなにか。私自身も手探りの状態ではありますが、残された1年間の活動任期の中で答えを導き出し、次こそ勝つ喜びを分かち合えるよう、今後も指導にあたっていきたいです。

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