見出し画像

【理事インタビュー】「スポーツ医学が『医療』と『現場』を繋ぐ存在に」今井宗典先生インタビュー。

私たちがアスリートの「怪我」について、日常的に考えたり接することは少ないかもしれません。

しかし近年は、甲子園での球数制限問題など、アスリートの怪我や健康問題について取り上げるメディアも増えてきているのではないでしょうか。

アスリートの怪我予防は大切なこと…それはわかっているけども、なかなかスポーツ医学を勉強する機会がなかったり、難しくて手を付けづらい…ということが多いと思います。

今回は、一般社団法人スポーツ医学検定機構の理事を務める今井宗典先生にインタビュー。横浜市立大学整形外科でスポーツ整形外科のチーフを担当し、サッカーを中心にスポーツ現場での活動を積極的に行っておられます。

スポーツ医学の知見はなぜ大切なのか。どのような役割を果たしうるのか…?

私たちが身近にいるアスリートをサポートしていくための考え方のヒントを得るべく、スポーツ医学現場の最前線で活躍されている今井先生にお話を伺いました。

今井先生とスポーツとの関わり

――よろしくお願いします!まずは、今井先生のスポーツ歴やスポーツとの関わりを教えて下さい。

中学・高校は部活で硬式テニスをしていました。高校生の時に、中学時代全日本で優勝した経験を持っていた友達と同級生になり、それを運命に感じ、テニスに打ち込みました。

テニスで目標を達成することはできませんでしたが、スポーツに魅了され、スポーツに関わる仕事をしたいと思うようになり、今の仕事に繋がっていきました。

――今井先生が、スポーツのご経験を通じて得られたことは何ですか?

スポーツの試合では、勝者と敗者に分かれます。負けて悔しいと思い、努力することも大切だし、それを乗り越えて勝つことには、他では得ることができないような喜びがあります。

スポーツの現場での仕事をしている中で、限られたアスリートにしか経験できないようなその喜びを共有させて頂けることがあります。これは、スポーツに関わっていなければ得難い経験かなと思っています。

画像1

「怪我の予防」が「競技力向上」に直結する

――今井先生は、現在サッカーを中心にアスリートのサポートをされています。スポーツのけが・故障を減らすために何ができるでしょうか?

 選手個人が怪我についての知識を持ち、セルフケアをしっかりできるようにすることが重要だと思っています。

我々メディカルスタッフには、そのための適切な情報を選手に提供したり、環境を整備したりすることが求められます。もちろん、練習や試合の前の準備だけでなく、練習や試合後のリカバリーも大切です。

時間や場所の問題でリカバリーが十分にできないこともありますが、それを当たり前にやれるような環境を作っていくことも大切だと感じています。

――スポーツのけが・故障を減らすことと、競技パフォーマンスを高めることは同時に実現できるものでしょうか?

スポーツのけがには突発的に発生する「スポーツ外傷」と、繰り返しの負荷によって起こる「スポーツ障害」があります。特に「スポーツ障害」に関しては、その予防が競技力向上に直結する、と私は考えています。

プロになるような選手でも、身体の使い方が良いとは言えない選手もいます。そういう選手が怪我の予防のために身体の使い方を修正することで、競技力も向上するといったケースが見られます。

「怪我の予防」に取り組むことが、パフォーマンスを向上させるという認識があれば、スポーツ医学の勉強をするなどの「怪我の予防」のための取り組みがしやすくなるのではないかと思います。

スポーツ医学が「医療」と「現場」を繋ぐ存在に

――今井先生がスポーツ医学検定に関わることになったきっかけは何だったのですか?

スポーツ医学検定に関わるきっかけとなったのは、大関先生(スポーツ医学検定代表理事)の「検定」というアイデアが、率直に面白いなぁと思ったからです。

スポーツの現場に医師として関わってきた中で、スポーツ医学に関する基本的な知識がもっと広まれば、よりスムーズに選手のサポートができるのではないか、と感じていました。

実際に、お互いの認識の違いのために、衝突が起こってしまった苦い経験もあります。思い込みや偏見ではなく、正しい知識に則った上でコミュニケーションを取れれば、このようなすれ違いは減っていくだろうなと考えています。

――ありがとうございます。最後の質問になりますが、スポーツ医学検定を通じてどんなものを創っていきたいですか?

この検定が正しい知識をスポーツ現場にも受け入れやすいような形で提供することで、医療とスポーツ現場のスタッフ・選手・その家族などとのコミュニケーションを繋ぐものになれればと思っています。

また、今は検定事業がメインですが、将来的にはスポーツ現場での講習会などの事業を行なって、よりアクティブにスポーツ医学の知識を広める活動ができればと思っています。ただ、マンパワーには限りがありますので、この検定の1級を取得した人に講習会を行っていただく…などの仕組みを作って、より大きなムーブメントにできればと思っています。

◆編集後記◆
怪我の予防と競技力向上は切り分けられて議論されがちですが、どちらも同じ道の中にある。「ケアよりも練習に時間を割かないと勝てない」ではなく、「ケアが勝利につながる」という視点が重要だと痛感しました。そのような意識の問題だけでなく、スポーツ医学が果たすべき役割についても、学ぶべきところが多いと感じました。
(インタビュー・編集:中村 怜生

サムネイル画像:Yuko Imanaka

◆◆◆◆

一般社団法人 スポーツ医学検定機構
「スポーツによるケガを減らし、笑顔を増やす」 を理念に掲げています。noteでは、各領域のトップランナーにインタビューを行い、これからのスポーツの在り方・スポーツ医学の在り方を考えます。
HPはこちら
Facebookはこちら
Twitterはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?