【MLBドラフトレビュー】3年後...2020ドラフトレビューTOR編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(5).オースティン・マーティン(Austin Martin):OF:6/185:Vanderbilt:-:$6.18M

昨年の全体1位、アドリー・ラッチマンに負けず劣らずのヒッティングツールを持つスーパースター候補。日米大学野球でも他の打者が日本の投手への対応に苦労する中1人適応し、故障で離脱するまで気を吐いていた。パワーツールも優秀で、シーズン20HRはクリアできるだろう。守備ではSSに留まれるアジリティーの高さを有しており、その他のポジションでもプラスの数値をたたき出せる。スピードも申し分ない。

成績

 ドラフト当時はNo.1のピュアヒッターと評されていましたが、故障に苦しみ未だにメジャーデビューを果たせていません。
 21年いきなりAAでプロデビュー。56試合で打率.281&出塁率.424と好成績を残すとシーズン途中にホセ・ベリオスとのトレードでMINへと移籍します。MIN移籍後は数字を落としてしまいましたが、まずまずの成績で終えることができました。
 22年もAAスタートとなりましたが、不調に加え左腕の靭帯断裂や手首の故障もあり不調に終わります。
 今年は復活を期したシーズンとなりましたが、いきなり古傷の肘の故障で出遅れてしまい、結局Rk/A/AAAで67試合のみの出場とキャリアワースト出場試合数となりました。
 健康面に不安があるのはもちろんこと、出場しても好成績を残せておらずプロスペクトランキングでも更新されるごとに順位を落としています。
 コンタクトスキルの高さと卓越したアプローチは相変わらずで、いずれのシーズンも三振数を出場試合数より少なく終えており、それでいてBB%は10%を下回ったことはなくピッチセレクションは非常に優秀です。
 それでも成績が伸びないのはコンスタントにハードヒットを打てないパワーレスな点が足を引っ張っているからでしょう。ほぼノーステップでコンタクト重視のスイングをするとなると、プロレベルではハードヒットを飛ばすのが難しいのかもしれません。
 また、手首の故障もあってさらにパワーツールを発揮することが難しくなってしまっています。
 身体能力の高さもドラフト当時に評価されていたほど高くないということがプロ入り後露呈してしまい、SS/CFから2B/LFの選手となったことでパワーレスな点がさらに悪目立ちすることになってしまっています。


2(42).CJバンアイク(CJ Van Eyk):RHP:右投右打:6-1/185:Florida State:-:$1.77M

90マイル中盤速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマーク。課題と言われていた速球のコマンドも改善傾向にあるが、ブレーキングボールのコマンドは発展途上。いずれの球種も高い評価を得るが、うまく扱いきれていないとも。

成績

 21年にA+でプロデビューとなりましたが、19試合で防御率5.83と打ち込まれてしまいました。イニング数を大きく上回る奪三振数は立派な数字ですが、アマチュア時代からの課題であるコントロール/コマンドに苦しみました。
 再起を図りたい22年シーズンでしたが、トミー・ジョン手術のため1年以上実戦を離れることとなりました。
 今年の5月にようやく復帰を果たし、12試合に登板してシーズンを終えました。故障明けということもあって、短いイニングしか投げていませんが、現在参加しているAFLでは復帰後初となる1試合5イニングを投げており、今後もスターターとして投げるようです。
 手術からの復帰後は速球のメインを4シームからシンカーへと変更したようで、手術前よりかは三振の数が減りましたが効率的にゴロアウトを奪えるようになっておりランナーを出しても粘り強く失点を防ぐことができています。


3(77).トレント・パーマー(Trent Palmer):RHP:右投右打:6-1/230:Jacksonville:-:$805.6K

90マイル前半の速球とスライダー、スプリット、カーブのコンビネーション。速球はシンカー系で、最速97マイルをマーク。アウトピッチはスプリット。速球と同じアームスピードで投じることができる優秀な球種。スライダー、カーブのクオリティは平均レベル。速球のスピードが落ちず、球種のバリエーションも豊富な点は先発向きだが、サイズとコントロールに不安がある点はリリーフ向き。

成績

 21年のプロデビューはAでBB/9が6とかなりの数の四球を出しましたが、防御率は3点台に収めるまずまずのスタートとなりました。
 続く22年はA+で四球の数を減らしつつも、大量の三振を奪いAAに昇格し順調に見えましたが、7月にトミー・ジョン手術を受けることとなりシーズンエンド。
 今年はリハビリ登板で4試合投げただけに留まりました。
 課題であったコントロールが改善されつつありブレークの期待もふくらみつつあった矢先での故障となってしまいました。シンカー/スライダーの投球術は円熟味を増しつつあり、アマチュア時代のような荒々しさはいい意味でなくなってきています。
 完全復帰となる来年は一気にメジャーの舞台まで駆け上がるかもしれません。


4(106).ニック・フラッソ(Nick Frasso):RHP:右投右打:6-5/190:Loyola Marymont:-:$549K

90マイル中盤の速球とカーブ、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で97マイルをマーク。ノビのある4シーム系を多投し、高めに投げて空振りを奪うスタイル。遅く大きく曲がるカーブをアウトピッチとして使っており、緩急をつけるのに一役買っている。あまり使わないチェンジアップのクオリティはイマイチ。ストライクスロワーだが、コマンドはアバウト。セットアップ/クローザーになれるポテンシャルを有するリリーバー。

成績

 20年と21年は故障の影響もあってほとんど登板がなく未知数でしたが、ようやくベールを脱いだ22年に本来の実力を発揮しました。
 唸るような剛速球はそのままに、アマチュア時代はほとんど使っていなかったチェンジアップが劇的に改善されました。A/A+で敵なしの投球を見せるとシーズン途中にミッチ・ホワイトらとのトレードでLADへと移籍しました。
 今年は登板数/イニングともにキャリアハイの数字をマーク。シーズンを通して投げられることを証明しました。
 ただ、未だにシーズン100イニング以上の経験がなく、チームもそれを許していないのはやはり再度故障しないかと不安視しているからではないでしょうか。
 投げているボール自体はすさまじいのですが、100マイル近いボールを連投されると否が応でも故障のリスクを考えなければなりません。また、動きの多いダイナミックなデリバリーは長いイニングを投げさせると球速が落ちる危険性をはらんでいます。
 この手のタイプの投手にしてはコントロールは安定しているのですが、故障歴などを見るとやはりリリーフとして使うのが安全策なのだろうと感じます。


5(136).ザック・ブリットン(Zach Britton):OF:右投左打:6-1/200:Louisville:-:$410.1K

がっしりとした体型だが長打はそれほど多くないコンタクトヒッター。スムーズなスイングでギャップを抜く打撃が持ち味。積極的なアプローチのため、四球も三振も少ない。元々Cだったが、大学ではもっぱらLF/DHに収まっており守備はそれほど上手くない。

成績

 プロ入り後はコンタクトツールは鳴りを潜めており、代わりにアマチュア時代はそれほど多くなった四球を選ぶことで高出塁率をマークするようになっています。
 22年はA+/AAでOPS.800以上をマークし、オフに参加したAFLでは打率.400超えの大活躍を見せ今年のブレークが期待されましたが、故障でわずか17試合の出場に留まりました。
 今年だけでなく、プロ入り後ずっと故障に悩まされており80試合以上出場したシーズンは0と耐久性に不安を抱えています。アンダースロット狙いで指名された選手としては頑張っているのですが、プロの長いシーズンに耐えることができていません。
 大学時代の後半はほとんど守っていなかったCを務めたりと汎用性は高いのですが、いずれのポジションでも大きなプラスを出せる選手ではないため、メジャーデビューは厳しいかもしれません。


総括

 ムーキー・ベッツのような打撃に優れたスーパーユーティリティーとして期待されたオースティン・マーティンでしたが、パワーツールで伸び悩み未だにメジャーデビューすら果たせずにいます。打球が上がらずいい当たりも内野手の頭を掠めていくいようなものが多く、なかなか長打が出ない状態となっています。手首の故障もあってさらにパワーツールを発揮するのが難しくなっており、暗雲が立ち込めたまま払えません。
 以降の指名も故障が大きく陰を落としています。上位2人の投手はトミー・ジョン手術を受けており、5巡目のザック・ブリットンも毎年ILの出入りを繰り返しています。
 今年無事にフルシーズンを過ごせたのはニック・フラッソのみとなっています。
 現状は故障に悩まされ続けているドラフトとなっています。


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