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学生スポーツとビジネスについて考える

さてSSACレポート第6段目の今回は学生スポーツとビジネスの関係・可能性について考えてみる。SSACのセッションの中でも"The Busuness of College Sports"や"Life of the College Student-Athlete"いったセッションがあり、学生スポーツビジネスに対する注目度の高さが伺えた。ちょうど日本でも先日春の選抜高校野球が終わったところであるが、改めてアメリカの学生スポーツxビジネスについて学ぶことで日本のアマチュアスポーツの未来について考察することにしたい。

先ずはSSACの学生スポーツxビジネスのセッションの内容について幾つかまとめてみる。

学生スポーツの目的:アメリカのCollegeスポーツを統括する団体であるNCAAやUniversity of Notre DameのDirector of Athleticsなどの関係者が口を揃えて言っていたのは、あくまでプロスポーツ選手になるのは学生アスリートの一握りなので、学生スポーツの目的は教育との統合にあるということ。リーダーシップ等、学生スポーツの経験が将来のキャリア構築に活かせるということが重要であるというスタンス。(余談だが、アメリカでは実際に学生アスリートの方がノンアスリートよりも学業や卒業後のキャリアにおいて活躍度合いが高い、という研究もあるよう。)

学生スポーツのビジネス状況:NCAAが管轄する大学スポーツの中で、バスケットボール(March Madnessという毎年3月に行われる68チームのトーナメント大会)が全体の収入(約10億ドル)の9割を占めている。あとはフットボールの人気も高い。それ以外のスポーツはほとんど収入をあげられていない状況。基本はバスケットボールとフットボールであげた収益を他のスポーツにも還元する、という仕組みになっている。収入の還元の仕方は、大学側での施設などの投資(実際に各大学5,000-10,000規模のアリーナを持っていることが多い)やアスリート学生の奨学金等が多く、大学スポーツがその競技レベルやスポーツとしての魅力を維持し、ファンを継続的に獲得し、そこから収益を生み出し、アスリート学生の成長や学生生活に投資する、というサイクルが出来上がっている。

課題としては、1)マイナースポーツのVisibilityをどのようにあげてゆくか。2)また、リソースが限られている中、ビジネスアナリシスやチケット販売管理・スポンサー管理等をどのように行ってゆくかがあげられる。ここは、大学でビジネスアナリシスを研究したがっている学生や、第3者の学生スポーツビジネス向けの共通プラットフォームを利用する、といったCreativeな手段が考えられる。

NCAAバスケットボールリーグのビジネス規模:68の大学が春に全米No1を競ってトーナメントで戦う大会で、全67試合で総観客数70万人、総視聴者数170百万人を誇るとのこと。尚、同大会は大手ケーブルTVカイシャCBSとTurnerとの間で2032年までの放映権ディールを契約すみで、2024-2032年の8年間の放映権はなんと88億ドル(約1兆円、年間あたりでも1,200億円)!昨年話題になったJリーグのDAZNとの放映権が10年2,100億円なのでその大きさには驚くばかりである。

ここからは個人的考察であるが、実は日本の甲子園は夏の全国大会(約50試合弱)だけで85万人近くを集めるイベントであり、NCAAのMarch Madnessよりも人気のある大会とも言える。ただ夏の甲子園は放映権収入を1円も集めておらず、収益機会という意味では大きく逸しているとも言えなくない(年間1千億円近い収益チャンスである)。こうした人気のある学生スポーツを(過剰にとは言わないものの)適切な形で収益化し、そこで得た収益を学生スポーツのインフラ整備や奨学金、ファンエンゲージメント拡大への投資(Livestreaming環境の整備やwebやSNSを通じた適切な情報の提供、グッズの販売、等々)へ周してゆくことは、決して学生スポーツの本文である教育の面とも外れて来ないと思っている。高校野球ほどではないが、それ以外にも高校サッカーや大学野球やサッカー、ラグビー、駅伝等々、それなりに人気のある学生スポーツはあるだけに、ここにどのようにビジネス面のメスが入ってゆくか、アメリカから学べることは非常に大きい。

下写真(夏の甲子園の様子/オンラインチケット販売や事前予約がほとんど存在しないため、人気のカードの揃う試合日には長蛇のチケット購入待ちの列ができ、30度を超える猛暑の中、5時間以上並んでもチケットを買えないケースもある。この点はビジネス面の整備でファンの体験を大幅に改善する余地がある点。)

次記事:Moneyball 3.0(Moneyballから15年、今後Sports Analyticsはどうなってゆくのか?)



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