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手の内あかします 仮題『スクエア』夜撮

ロケハンとリハーサルが重要

 フォトストーリー仮題『スクエア』の制作は、大詰めを迎えています。

 日没直後の残光は美しいです。ほのかに赤い光が地面から立ち上がって、それを深く濃い青い色が覆いつくしていきます。たいへん美しいけれども、日本の緯度では僅かな時間しかトワイライトを眺めることができません。

1/29 17:18 ISO200 1/250 f4 外部ストロボ発光

 ヒロイン役たかはしまいさんの自主企画撮影会が、夜景を撮れる時間帯に開催されることになり、そのときからトワイライトをバックに撮ろうと準備しはじめました。

 背景を暗くしたいけれど、人物を真っ黒にはしたくないので、ごく弱めにストロボを当てています。真正面からの光では不自然なのでストロボは左に置きました。

 なにせトワイライトの時間は短いので、準備に手間取ったら撮れません。そこで、ロケハンとリハーサルをして必要なデータを事前に得ています。
天気予報を見て、当日と気象条件が同じになる日を選んで、ロケハンを兼ね
当日に使用するのと同じカメラで試し撮りしてデータをとりました。

1/28 16:55 ISO200 1/125 f4

 当日は1700時に撮影開始なので、その前日の同時間帯に撮影現場へ行き、トワイライトを実際に撮ってみます。あれよという間に暗くなっていくので勝負できる時間帯は15分ほどでしょう。普通に撮れば御覧のとおり、すでに陽は落ちているけれどトワイライトには見えないくらい空は明るいです。

1/28 17:06 ISO200 1/60 f8

 ほんの10分で状況はガラリと変わりました。トワイライトが訪れる時間を知ったうえで本番に臨み、一枚目が撮れたわけです。

ISO200 1秒 f14

 もう一枚、どうしても撮りたかったのがコレです。回転木馬が回っている様子を表現するのに、露光は1秒かかります。手ブレ補正があるといっても露光1秒を手持ちは無理です。また、被写体ブレも当然ながら起きますので本当は光が当たらない場所に立ってもらってストロボを当てるべきでした。しかし、思ったより地灯りが多かったので1秒も露光していたらストロボの発光とかぶって二重像になると思われます。ならば、いっそ手持ちで撮ろうということで、カメラは根性で止めまして、被写体さんには固まってくれと懇願し、何十枚か撮ったなかに一枚だけ、狙い通りのがありました。まさに撮れていればラッキーだとでも思っておかないとイケナイので、完成された技法とは呼べませんで、ただの無茶です。

技法は個性じゃない

 撮影技法は、学べば誰もが修得できるものです。かつて篠山紀信が著名な写真家たちを、それぞれの写真家が得意とする技法をソックリ模倣して撮るということをしています。そのうえで「技法は個性ではない」と結論したのでした。

 その言葉に従うならば、撮影技法は模倣できても、作風まで模倣しきれるものではないということになり、作風に現れる「技法ではない要素」こそが個性の正体なのでしょう。そこに思い至らないで、技法だけを真似たのでは単なる猿真似です。換骨奪胎してこそ技法を学ぶ意味があると思います。

 今回、明かした手の内はアマチュアの機材でも充分に撮影できます。また天候が安定していれば、土曜にリハーサル、日曜に本番といった具合に土日だけでカタがつくものでもあります。どうぞ、よろしかったら応用してみてください。パクったなどとは申しません。

いつものノリで撮ったのも

場面転換の繋ぎに使うカットです

 用途を明確にしたカットの撮影が終われば、あとはいつものノリで撮っていきます。そのなかに使えそうなのがあれば拾うくらいのつもりで。

右から弱めにストロボ
ストロボ無し地灯りのみ

 今回はシリアスな場面に使うカットの撮影でしたから、笑顔が無かったのですが、最後にチョットだけ笑顔を撮らせてもらいました。撮影枠の50分は密度の濃い充実した時間でした。

 たかはしまいさん、ありがとうございました。


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