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シンガーソングライター・古川愛理がストリートにこだわる理由と、新作ミニアルバム『伝えたいこと』に詰め込んだ思い:sprayer interview

佐賀県出身、現在は東京を拠点として、各地に歌声と感動を届けているシンガーソングライター・古川愛理。今年4月には世界最高峰のオーディション番組『The Voice』の日本版である『The Voice Japan』に出場し、その圧倒的な歌唱力が視聴者に強烈なインパクトを残した。今回は、12月25日のミニアルバム『伝えたいこと』リリースを直前に控えた彼女にインタビュー。ストリートでの活動にこだわる理由や、媚びない&ブレないスタンスの源泉を垣間見ることができた。


音楽が人を繋ぐ、ストリートへのこだわり

ーまず初めに音楽活動のルーツ伺えればと思うのですが、幼少期にピアノを習ってらっしゃったんですよね?

保育園生でエレクトーンを始めたけど一旦やめて、小学校高学年からまたピアノをやり始めました。でも、中学生からは部活が忙しくなってまたやめて。今の活動のきっかけになったのは、高校の文化祭でHY「366日」をバンドコピーしたことですね。それを聴いて泣いてくれた友達もいて、音楽って人を感動させられるものなんだなっていうのを実感できたんです。

ー歌うことは昔からお好きだったんですか?

そうですね。親戚の集まりとか、誰かの誕生会でよく歌ってました。物心ついた頃から声量があって(笑)。あと私、結構耳が良いみたいで、聴いたものをそのままマネできるんですよね。そのおかげで学生時代に英語スピーチ大会で佐賀県2位になったこともあるんですけど(笑)。よくアーティストのマネをして家で歌って、うるさいって叱られてました。人前に立つのも好きなタイプでしたね。

ーリスナーとして最初に興味を持った音楽は何でしたか?

子どもの頃は親が車の中で流していたのをきっかけにモーニング娘。とかDREAMS COME TRUEとかをよく聴いてた記憶があります。中学生の時には、付き合っていた彼がいきものがかりの大ファンで、CDを貸してもらってよく聴いてました。あとは、大学1年生の時に知った阿部真央さんの楽曲がどストライクで。初めて弾き語りでコピーしたのも阿部真央さんの「ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~」でしたし、受けた影響は大きいと思います。

ー自分で作曲を始めたきっかけは?

大学に入ってから路上ライブを始めてみたら、イベンターさんから声をかけていただいて色々なイベントに出るようになって。その時に、他の出演者さんがオリジナル曲をやってる中でコピーしかできない自分が恥ずかしくなって、作曲するようになりました。人生経験も語彙力もまだまだなかったけど、できないなりに作っては壊してを繰り返して。

ー最初はただ歌を歌いたいという気持ちだったけれど、だんだん自己表現したいという気持ちが強まっていったというか。

自分にしか出来ないものが出来そうな予感はずっとあったんです。もちろん、曲を作ってるうちに「やっぱり才能ないかも」って挫けそうになることもあったんですけど。

ーそれから現在に至るまで、路上ライブや野外でのイベント出演などの活動にこだわっている印象があります。オープンな場所での演奏を続ける理由はありますか?

路上ライブって、やっぱり出会いがある。立ち止まってくれる人と話すこともたくさんあったし、そこで友達になった人もいるし。お客さん同士で仲良くなって飲みに行くような人もいたりして。そうやって音楽で人と人が繋がる瞬間を何度も見てきたから。それに、やっぱり周りが良いって言ってるものを聴く風潮ってあると思うんですけど、路上で足を止める人って自分の意志で音楽を聴いてくれてるじゃないですか。たとえYouTubeでバズっても、少しづつ有名になっていっても、知らない人同士がシンプルに音を楽しむこの空間を大切にしたいです。もちろん、ネットとかの方が拡散力はあるかもしれないけど、オープンに演奏できる場所はずっと追求し続けてますね。

ー路上で広がっていくコミュニティは、拡散スピードは遅いし規模も小さいかもしれないけど、そこにしかない特別で強固な繋がりでもあると。

路上ライブでファンになってくれた方って、配信とかネットで知った方よりも根強かったりするんですよね。自分のことをまだ知らない人が立ち止まってくれるように、今も路上ライブは基本ゲリラでやってます。もちろんネット配信にも良いところはあって、そっちでは割としっとりした曲を歌ったりするんですけど、路上では生の振動を感じられるようなパワフルなものを提供してます。それは配信では伝えられないものなので。

ー今年9月には、韓国でのストリートライブを敢行されていましたね。

元々海外で音楽を勉強したいっていう思いは強くて。今回は、友達が韓国に行く用事があるって言うので付いていきました。その子が用事ある間に「路上行ってくるわ!」みたいな感じで(笑)。日本語の曲を中心に歌ったんですけど、結構聴いて下さる方が多くて。わざわざ日本語に訳してメッセージを伝えてくれた人もいたし。

ー韓国では、あいみょんや優里といった日本のシンガーソングライターの楽曲も人気がありますもんね。

やっぱり、シンガーソングライターっていう形のアーティストが向こうには少ないみたいで。K-POP、アイドルを売る方がお金になるっていうのもあるから……。でも、こういう音楽を韓国の人も求めてはいるし、「ぜひ続けてほしい!」みたいなことを言われたりもしました。海外の人が私の歌を聴いてどういう反応をしてくれるのか、っていうのはすごく興味があるので、これからも日本だけじゃなくて色々な場所で歌っていきたいですね。

ニューアルバム『伝えたいこと』に詰め込んだ思い

ー楽曲制作について伺わせてください。一曲一曲にハッキリと伝えたいメッセージが宿っているのが古川さんの楽曲の強みだと思いますが、歌詞とメロディーのどちらから組み立て始めるのでしょうか?

やっぱり歌詞が先で、伝えたいことがある上でそれをどうやって伝えていこう?というところから出発します。なので、できるだけ歌詞カードを見なくても歌詞がスッと入ってくるようなメロディーラインを重視していますね。しっかり発音して、歌詞を活かすためのメロディーを付けるっていう感覚で。

ー制作の中で一番時間をかけたり、こだわりを注ぐポイントは?

歌詞とメロディーはバーって書けるんですけど、そうして曲が出来たら、一回それを忘れるんですよ。しばらく寝かせて、まっさらな状態で後日聴いたときにどう感じるか。他人が客観的に聴いたらどう感じるかっていうのを考えながら、「違う」って思ったら作り直す。それを何回も繰り返して微調整していく作業に時間がかかりますね。伝えたい内容は変えずに、どこをどうすればちゃんと届くだろうって。

ー12月25日にリリースされるミニアルバム『伝えたいこと』は、そんな古川さんの創作態度に相応しいタイトルが冠されています。どのようなコンセプトで制作されたのでしょう?

毎年、1年間の集大成みたいな感覚でミニアルバムを出してるんですよ。普段から感じたことや考えてたことを定期的に書き溜めたりメモしたりするようにしてるので、タイトルやテーマは後付けなんです。今回の6曲も、ラブソングから応援ソングまで色んな曲が入っていて……でも、どこかに共通したものがあるなと思ったので、それを一言で表す『伝えたいこと』というタイトルを付けました。私が誰かに『伝えたいこと』でもあるし、リスナーが誰かにこの作品を聴かせたいと思った時に、『伝えたいこと』として渡せるようにしたくて。実際、はっきりと伝えたい相手を思い浮かべて書いてる曲も入っているので。伝えたかったけど伝えきれなかった思いが詰め込まれた作品になったと思います。

ー普段から、歌詞を書くときはそのように特定の誰かに宛てたり、実体験から着想を得ることが多いのでしょうか?

基本はそうですね。ラブソングはずっと同じ人に書いてるんです。「最後のラブソング」「You are me」「私を強くした人」「嘘」、それと今回の「愛した人よ」。なので、私の気持ちの変化が垣間見える(笑)。でも、「愛した人よ」はラジオとかで既にファンの方々に聴いてもらっていて、「感動するし気持ちが伝わる」とかって言ってもらえて。実体験だからこそ、より感情移入してもらえてるのかなと思います。でも、一旦その人に宛てた曲は今回で終わらせようかなって。残し続けるのも歌い続けるのも苦しいし、次に進みたいという気持ちです。

ーそういった様々なメッセージや思いがこもった曲が収録されている中で、「ダメ男が好きな女」はちょっと“外し”というか。前作ミニアルバム『幸せ』に収録された「えろ本」にも通ずる、パンチのある一曲ですよね。

これは先ほど話した阿部真央さんからの影響でもあるんですよ。彼女もたまに面白い曲があるので、私もこういうのやりたい!って思ってて。「えろ本」はファンの方からも評判が良くて、「アレだけまず先に聴いたわ」とか言われたんですけど(笑)。「ダメ男が好きな女」は「えろ本」より前からある曲です。まだ音源化してなかったので、今回収録してみました。

ーそういった肩の力が抜けた曲と、ロックな曲と、バラードがあって。非常に聴きやすいバランスの作品になっています。

全部バラードは面白くないし、かといって全部ロックも疲れちゃうから、ミニアルバムを出すときにはいろんな種類の楽曲を入れるようにしてますね。バラードとロックでアレンジャーさんも違う方にお願いしていて。それだけでまったく違う世界観になるので、これからも色々な人と制作していきたいですね。

ーアレンジには、古川さんのアイデアやイメージも盛り込まれているんですか?

そうですね。「たった一言」のギターソロも、「もうちょっと『キューン』みたいな感じにできますか」とか、ニュアンスだけの伝え方で何回も弾いていただいて(笑)。たくさん話し合いをしつつ、ライブの中でどういった用途で楽曲を使いたいかとかも考えて制作してます。

「死ぬまで音楽をやっていきたい」

ーこれから先の活動の中で、立ってみたいステージや目標はありますか?

私が歌う目的ってやっぱり「音楽で感動してもらう」っていうことで、それはもう叶ってると思うんです。別に特別なステージに立たなくても、路上や配信で人の心を動かせるじゃないですか。昔はもっと大きいステージに上りたいっていう気持ちもあったんですけど、今はそういう欲はほぼなくて。ただ、私は歌詞の一言もギターのフレーズ一つも売れるために変えたりはしたくない。たとえばTikTokとかでバズるような曲ではないっていうのはわかって作ってるので、今っぽく変換されたくない。魂を売ってまで規模を大きくしなくてもいいから、自分がやりたいように音楽活動を続けられることが私にとっては一番大切です。

ーでは、「こんな作品を作ってみたい」というビジョンは?

好き嫌いせず、色んなジャンルに飛び込んでいきたいですね。ジャズにも手を出してみたいし、今後色んな方と制作を共にする機会が増えたらいいな。あと、今はミュージックビデオの監督と編集も私がやってて。絵コンテを書いて撮影するんですけど、編集の段階で「思ってたのと違うな……」ってなることもあるんですよ。頭に描いたものを形にできるようになってきたら、もっとお金をかけて良いものを作っていきたい。あとは、私の歌うカバー曲を好きで聴いてくださる方も多いので、カバーアルバムを出したいなっていうのはずっと思ってます。死ぬまで音楽をやっていきたいので、やりたいことは尽きないですね。

ー最後に、ファンの皆さんやミニアルバムを聴くリスナーにメッセージをお願いします。

一人で回しているぶん、なかなか表に出れない期間があったり、ライブの告知も急になったりしてしまうんですが、それもサプライズとして楽しんでください(笑)。これからも末長く見守っていただけると嬉しいです。

Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to
Edit:sprayer note編集部


Profile:古川愛理

佐賀県出身のシンガーソングライター 大学生の頃に路上ライブを見たことがきっかけで独学でギターを学び、自身もミュージシャンとして路上ライブを行う。 現在は東京を拠点に、全国各地で学校での公演や、ライブ活動を行っている。 メッセージ性の強い楽曲が多く、ジャンルを問わず自由な楽曲を生み出す。 歌声はとても力強く、繊細で、誰かの心に語り掛けるように愛を歌う。

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