音楽ディストリビューションサービス・sprayerが毎週木曜日に更新している公式プレイリスト『naresome』から、要注目の最新リリースをピックアップ。今回はえんぷてい、DOUBLIVING、群咲の楽曲を紹介します。

えんぷてい「ハイウェイ」

2020年6月に奥中康一郎（Vo/Gt）を中心に名古屋で結成された5人組インディーロックバンド・えんぷていが、2024年3月13日に待望の2ndアルバム『TIME』をリリース。アルバムからの先行シングルとして、「ハイウェイ」が1月10日に配信開始されました。

本楽曲は、昨年12月に新メンバーとしてえんぷていに加入するためにベースを始めた（！）という赤塚舜（Ba）、活動初期からバンドをサポートしてきた神谷幸宏（Dr）を迎え5人体制へと移行して以来初の新曲。両名のツボを押さえた多彩かつ精度の高い演奏が、新たな出発への期待に弾む足音のように軽やかなビートを刻みます。

「今までにはない新しい曲調」（神谷）、「珍しくカッティングしてみました」（奥中）とメンバーがSNSで語る通り、これまでのえんぷていよりも格段にポップさを増した「ハイウェイ」。キャッチーなメロディラインはどこか懐かしいJ-POPのよう。その一方で、誰か一人に語りかけるように丁寧に紡がれる奥中の歌声、行間の言葉にならない思いも感じ取らせる歌詞には、彼ららしいアンニュイなニュアンスが色濃く残ります。

『TIME』リリース後には初の東名阪ワンマンツアーを控えるえんぷていが、大切なものを離さずに抱えたまま、その音をより遠くまで響かせ続けてくれることを確信させてくれる一曲です。

DOUBLIVING「らゔりぃ」

札幌発のロックバンド・SULLIVAN's FUN CLUBのフロントマンを務めるヨシダレオによるソロプロジェクト・DOUBLIVING。2023年4月の始動以来コンスタントに楽曲を発表し、年明け早々に4作目のシングルとなる「らゔりぃ」をドロップしました。

SULLIVAN's FUN CLUBのヒリついたロックサウンドに対し、親しみやすさとユーモアに軸足を置いたDOUBLIVINGの楽曲を、彼自身は「LONELY POP」と表現しています。「らゔりぃ」は、その皮肉めいた独自のジャンルを過不足なく定義しきった会心作となりました。

同郷・札幌出身のアーティストであるくどうよしかが参加したイントロのコーラスから、グッと心を引き寄せられる本楽曲。自然に身体が揺れる軽快なリズムワークとシンセの音色は愛嬌すら感じさせます。しかし、ヨシダレオの歌声は時にやけっぱちにささくれ立ち、リスナーを突き放しもするのです。誰かとともにありたい、だけど誰にもわかられたくない。彼の奏でる「LONELY POP」は、そんな矛盾した感情の揺らぎを巧みに捉えています。

たとえば、満足と後悔がちょうど半々に残った飲み会を終え、酩酊を引きずり辿る帰り道。人恋しさを紛らわすために、白い息とともに口ずさむためのメロディーを、DOUBLIVINGは教えてくれます。

群咲「他問他答」

『ウマ娘 プリティーダービー』ダイワスカーレット役などで知られる声優・木村千咲と、アニソンシーンを中心にずっと真夜中でいいのに。などメジャーアーティストへの楽曲提供でも活躍する作曲家のラムシーニによる2人組音楽ユニット・群咲。1月17日に2ndミニアルバム「お先☆真っ眩」をリリースすることが決定し、昨年12月29日に先行シングル「他問他答」を配信開始しました。

ピーキーかつキッチュなユニットの性格を決定付けた前作シングル「模造生活」に続き、今作も「群咲らしさ」を深化させる一曲に。ラムシーニによるアーバンでジャジーな響きを湛えるアレンジ&ピアノ演奏と、楽曲ごとに巧みに声色を演じ分ける木村千咲の歌声が、ミドルテンポのロックサウンドの中で抜群の相性を発揮しています。

「模造生活」で見せたアバンギャルドとも、それ以前の楽曲に滲ませていたセンチメンタルとも異なる、静かに怒りをたぎらせるようにがなるボーカリゼーションは圧巻の一言。歌唱表現のバリエーションにはやはり声優らしいスキルを感じさせつつ、音楽性はアニメソングのテイストに体重をかけすぎないというバランス感覚が、ユニットの可能性を無限に拡張させています。

「プロフィールを / 書き換えて私を作りなよ」という歌詞の通り、ノーリミットな創作でリスナーを煙に巻く群咲。果たして次はどんな表情を見せてくれるのか、期待は高まっていくばかりです。

プレイリスト『naresome』には、本記事では紹介しきれなかったおすすめ楽曲が盛りだくさん。これからも毎週木曜日の更新をお楽しみに！

Text ：サイトウマサヒロ
Edit ：sprayer note 編集部