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スタンフォード・ブリッジで消えたクリスチャン・エリクセン

土曜のターフ・ムーア、そして水曜のスタンフォード・ブリッジでも、クリスチャン・エリクセンはその存在感を消してしまった。

今シーズンのスパーズはエリクセンがいなくてもウィンクスがいる。アルデルヴァイレルトやフェルトンゲンからも高精度のパスが供給され、展開力が発揮される。実際に、たとえエリクセンの活躍が鳴りを潜めていても、他の選手の活躍で勝ち点を拾ってきた試合はあった。しかし、このデンマーク人の影響力は依然としてチームにとって重要であることが、皮肉にもこの連敗で示されることになった。

スパーズがチームとして機能不全に陥った時、エリクセンに求められる役割は、DFラインと中盤、中盤と前線のつなぎ役である。さらには、チームのリズムを生み出すこと。具体的には、チーム全体がボールを受けた時のタッチ数が多くってしまう(持ちすぎてしまう)時に、少ないタッチ数またはノートラップでボールを捌き、相手マークをずらしていくことを実践して、チームのリズムを変える(チームメイトもタッチ数を減らすよう見本となる)ことである。

チェルシー戦でのエリクセンのパスは精彩を欠き、パス成功率はチーム平均の87%を大きく下回る73%でチーム内でワーストだった。およそ50本のパスを試み14本がミスパスだったことになる。

スパーズが1点を追い上げていた残り10分間、エリクセンはボールへの関与が完全に途絶えてしまった。左サイドを上がったベン・デイビスが敵陣内でボールを持った時には、それを受ける位置にポジション取りをしているはずのエリクセンがチェルシーの選手の背後に立っていた。

スパーズとの契約延長交渉が進展せず、エリクセン本人はレアル・マドリーへの移籍にすでに心が奪われているとしても、スタンフォード・ブリッジにレアル・マドリーのスカウトが観戦に訪れていたとしたら、3日前にマンチェスター・シティとのカップ戦のファイナルで120分間プレーして、この試合でもスパーズにとって最も脅威となっていたエデン・アザールとの差は歴然としていただろう。

バーンリー戦の前にエリクセンの代理人が「唐突に」エリクセンの未来について言及をした。「フットボールに集中している」とメディアに明かした代理人だが、その後の連敗、存在感を消しているエリクセンを見て邪推すれば、「フットボールに集中できない」事情があるのではないかと心配になる。

スパーズは他の誰よりもエリクセンを本来の調子に戻す必要があり、それがケインとソン・フンミンの強力アタッカーの強火力を存分に生かすことに繋がる。

見方を変えれば、エリクセンが本来の輝きを放てない理由の一つにはデレ・アリの不在があるのかもしれない。巧妙な動きができるパスの受け手としてのデレ・アリの存在は、エリクセンにとって重宝すべきものであろうし、2人の意思疎通もばっちりだ。ケインやソンにとっても、デレ・アリの神出鬼没の動きによって相手ディフェンダーのマークを外し、またはゴールに直結するスペースを見つけることができるようになる。

改めて、この連敗によってエリクセンの存在の大きさを知らしめることになった。夏にエリクセンを失った場合、エリクセンの代役を探すことは不可能。すなわちポチェッティーノのスパーズは大きな後退を強いられることになる。

重要性と位置付けが変わったノースロンドン・ダービー

さて、話題を変えて週末のノースロンドン・ダービーだ。両チームの順位は1つ差で、連敗によって勝ち点差は4ポイントにまで迫っている。

ウェンブリーでアーセナルが勝利すれば、いよいよスパーズは隣人にたった1ポイント差へのピタリと追走されることになってしまう。

チェルシー戦の後の記者会見でポチェッティーノは「トップ4争いに引きずり込まれることを心配はしていない」と語っていた。

ポチェッティーノが言う通り、シーズン開幕当初にこの順位、勝ち点差で3月を迎えられ、さらにチャンピオンズリーグ・ラウンド16のファーストレグで3-0の勝利を決めてると聞いたなら、スパーズ・ファンは誰しも喜んでその状況を受け入れただろう。

しかし、スパーズはこの先にアウェイでのリバプール戦、マンチェスター・シティ戦を控えていることを考えると、プレッシャーはスパーズに掛かってくるはずだ。

4位アーセナルは、ホームでのマンチェスター・ユナイテッド戦だけでなく、アウェイでのウォルブ戦、エバートン戦、ワトフォード戦と難しいカードがあるが、いずれも勝利可能な対戦ドばかりだ。

首位リバプールとの勝ち点差が9ポイントとなり、リーグ・タイトル争いからは脱落したように思われるが、今シーズンのここまでの奮闘を無駄にしないためにも、ポチェッティーノは何としてでも3位の座を維持しなければならない。

そのためにはこれ以上の取りこぼしは許されず、さらには新スタジアムの使用開始による大きな後押しも必要となるだろうが、今しばらくはウェンブリーを使用し続けることになるだろう。

11月のエミレーツでは敗北を喫したスパーズ。土曜日のノースロンドン・ダービーで奮い立たない選手はいないはずだと信じたい。そして、新スタジアムに移転する際に、(おそらく4月の上旬か?)ポジティブな気持ちで残りのシーズンを展望できるように、ダービーを機にチームが復調できることを。

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