福山雅治の手紙に思うスター論

18年の長きにわたり放送されてきたぴったんこカン★カンが、先日最終回を迎えた。

見どころの多くあったなかで、当番組でおなじみの福山雅治さんも手紙でのご出演。安住さんと番組宛てに書かれたその手紙からは、福山さんのお人柄と、スーパースターたる所以がにじみ出ていた。備忘録として文面をここにとどめておきたい。(文字起こしをしたので、一部違うかもしれない。)

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安住さん、そしてぴったんこカン★カンに携わったすべてのスタッフさん、18年半本当にお疲れ様でした。
改めて18年半って凄いことですよね。始まった時に赤ちゃんだった子が、高校卒業ですよ。いかに視聴者の方々に愛されていたか。本当にすごいことです。
でも、僕が一番すごいと思ったのは安住さんのLINEの返信です。
返信は遅くはないです。文面も短くはないです。
ただ、内容が薄いです。
恐らくこれは、安住さんならではの対人関係の築き方なんでしょうね。
番組の内容は濃く、キャストとの関係は薄く。会社の上司とは濃く、ゲスト出演者とは薄く。
生き方としては最高です。
それともう一つ凄いのは、香川さんとTBSさんとの深すぎる関係です。
疑惑もあります。
TBS局内で人事権やキャスティング権があるのでは?
と穿った見方をしてしまっているのは僕や業界人だけではない筈です。
もはや生き方そのもの、存在そのものが歌舞伎の演目を見ているようです。
香川さん最高です。
そんな僕ですが、「ぴったんこカン★カン」には3度、出演させていただきました。
洋ちゃんのスーパースター伝説のおかげで、もっと出演させてもらっているような気になっていますが。
ぴったんこでの楽しい思い出は、つい昨日のように蘇ってきます。
特に、思い出の車での桜坂や渋谷のドライブ、最高でした。
いや、最高に素敵でした。

僕がね。

それにしても、洋ちゃんの語ってくれる「スーパースター伝説」ももう観られなくなると思うと寂しいです。
視聴者の皆様、これからはSONGSでお楽しみいただきたいです。
長くなりましたが、安住さんへの感謝の言葉とともに最後に一つだけ。
僕の宣伝の際にはよろしくお願いします。
                             福山雅治

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まず、まるで福山さんの新曲を聴いているかのような心地よい文調に聴き入ってしまった(大泉洋さんによる代読だったが)。

おそらく一文一文が短いので、文面が軽やかに感じられるのだろう。ざっと調べたところ、一文の平均文字数は25字。最短は4字。最長でも50字を超えない。彼の爽やかさが手紙からも漂う。

文中にも、福山さんの鋭さと温かさがちりばめられていた。

例えば「安住さんのLINEの内容が薄い」という一見グサっと刺さるような言葉も、嫌味に聞こえなかった。続く福山さんならではの言い回しで、そこが安住さんの醍醐味、という思いが伝わってくるからだ。きっと安い褒め言葉よりもよっぽど安住さんらしさを突いている。

香川さんへの「TBSとの蜜月関係」という指摘もそう。下手すると嫌味にも捉えられかねないが、「歌舞伎の演目を見ているよう」というその後の言葉で、ネガティブさを全てふっとばし、むしろ香川さんへのリスペクトに変貌させている。

さらに続く「僕がね。」のくだりは、以前大泉洋さんが福山さんのスーパースター伝説を紹介していたことに絡めてのリップサービスだ。視聴者の求めにもお高くとまらず対応してくれるこのサービス精神たるや。最後のSONGSは大泉さんのMC番組。彼のことも忘れていない。

ここで気づかされるのは、出演者の配慮、視聴者への配慮だけでこの手紙が構成されていることである。全部で約700文字の文章のうち、番組・安住さん・香川さん・大泉さんについて、いずれも約140字ずつ触れているのである。このバランスよくなされた配慮。誰かに偏らないよう緻密に計算されているように感じられるため、おそらく相当時間を費やしてこの手紙を書かれたのではないか。徹底した思いやりが、ここからも感じられる。

誰も傷つけない。相手を一人ひとり丁寧に立たせる。自分を主張していないのに、結果的に自分の株を上げてしまうーーーこれぞスターの本質のように思う。そのことを理解し、受容し、体現してしまう「スパースター」福山さん。彼のテクニックを手紙より垣間見ることができた。

蛇足だが、誰も傷つけない、相手を立たせる心のやさしさは、ずん飯尾さんの芸風にも通ずるものがある。これはまたいずれの別稿に譲りたい。

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