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映画「燈火(ネオン)は消えず」の感想

東急さんのイベントに20倍率で運よく当選し、渋谷のLe cinémaで映画「燈火(ネオン)は消えず」を観に行ってきました。イベントの最初に東急株式会社の社長室の方々からのお言葉があったり(500株以上で映画が見れる株主優待があるらしい)、Le cinémaの方からの簡略な映画紹介もあり、古き良き香港の映画で登場している「ネオンサイン」が法律で撤去されるという映画の背景もご紹介いただき、しっかり映画の世界に入り込むことができました。

香港は2020年、コロナ前に一度3泊4日の予定で一人旅をしたことがあります。小籠包の様な美しくて美味しい料理、香辛料の香りやイギリス風なお茶の文化、香港人の友達が教えてくれた食器を洗って使う習慣や朝ごはんの文化、新しいものと仏教が交わる街並み、ブランド物が安いことでショッピングでも有名ですが、何もよりも印象に残っているのは綺麗な夜景でした。

おそらく私がみた夜景は、古い香港映画とかに出てくるようなネオンサインの夜景ばかりではないと思いますが、夜中を光らす眩しいLEDの前に、時代と一緒に消え去っていくネオンサインがあったということにはこの映画を通じて初めて気づきました。

振り返るとネオンの様にロマンチックな夫婦の絆。

メインキャラクターとしては、ネオンサイン職人の夫、その妻、建設家の娘、ネオンサインの夫のもとでネオン職人の仕事を学んでいた弟子。この4人の話で、描かれるストーリーはとてもロマンチックで、優しい物語でした。

夫と妻の若い頃の話が妻の想像として度々登場するのですが、純粋で自信家の夫のプロポーズには誰もがキュンとするだろうと思いました。
えっ、香港の男子って、こんなに甘い口説き方するの?

自分の隣の席にいらしていた方は、回想シーンで涙目になられていたり。

一人の若者が「卒業」をするまで

いきなりですが、現代社会で持つ卒業の意味を考えてみました。卒業したことを持って世間では「社会人として、責任を持って他人の喜ぶ仕事ができる」ことを期待されるのでしょう。自分は社会人6年目ですが、社会に出る前のこの「あくまで学生で、経験もなく、アルバイトで、誰にも認められていない状況」がくれる心理的に不十分な状況をまだよく覚えているので、職人の世界を生きる上でも卒業証書がない、法律や資格で武装された社会は個人に対していかに無力感を感じさせるのかわかりそうな気がしました。現実を知らせてくれた娘の言葉は苦いフィードバックだったかも知れないけど、必要な指摘。それを知った上で機会を与えて、やる気をバックアップしてくれる奥さんがいて「良い大人に出会って、本当によかったね」って思いました。

卒業という観点では社会人になってからも母の反対で完全な自立ができず、同じ家で住んでいた状況から、親の元を離れ新たな地でスタートをすることも類する意味があるかと思いました。娘はずっと前から憧れていた世界を観て、それをやっとOKできるようになった母は、親の卒業。誰かがいなくなったって、残された人たちは生活は続く、新たなステージも始まる。

自分の死の後に、覚えてもらえたいのか?

弟子と奥さんがお墓参り的なイベントをするシーンで、奥さんが弟子に「自分が死んだらこうして見に来て欲しい」って言うシーンがあるのですが、どの国にもあるようなこの「ずっと忘れないで、たまにはお墓にきてほしい」という感覚は自分には良くわからなかったです。会ったばかりの弟子には重いんじゃないのかなとか、むしろ自分は自分なしでも上手く回るようなことを応援して、他人の時間を大切にしたいとか思いました。職人なら、他人や社会に貢献をすることできっと十分成果物や名前は残っているはず、永遠なものはないことを前提に、最後までにやれることを頑張らなきゃね。

VUCAな世界と職人魂

ネオン職人たちが作り上げた香港の風景。そして環境への配慮や安全性、効率を改善した新しい技術、これを代弁する言葉の「VUCA」な時代が、一つのことをずっとやり抜いている「職人」「専門家」の行き場を無くしていると再度実感しました。ネオン職人の夫は10年前にLED販売業者に転換したらネオン職人としての未練はなかったのだろうか?と思ったり、エンジニアである自分にも「この仕事をしてあと何年付いて行けるのか?」「自分が好きだと思ってやっている仕事は、社会でも需要があるか?」「適応・進化をするために、どういうものの習得が必要か?」を自問自答してみました。
既にデスクワークをする専門家の作業は、AIによって一部代替えできるレベルに到達していますし、小学生たちのなりたい職業にいつもランクインされている「会社員」という職業は機械と人工知能によって激減されるとも思いました。

映画をみたら映画飯

映画を観た後も、香港気分が抜けなくて、何か香港料理を作ろうと思いKALDIに行って香港式叉焼の素(ソース)を買い、この前やっと届いた新しいSTAUBで豚肉の塊を煮込んで香港チャーシューを作りました。


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