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高年齢雇用継続給付金のバグ

こんにちわ。
デコピン@しゃろーしです。

なんかもっとインパクトのある名前に変えたい。
妙案が浮べば名前変えます。
デコピンとか。

雇用保険って?

日本には雇用保険と言う制度があります。
一般的には失業保険(基本手当)が有名です。
主に会社を辞めて収入が途絶え、一円でも多くお金が欲しいときに2ヶ月間待てと命令される血も涙もないあの制度です。
個人的にはあまり良い制度だとは思いません。
もっと早くお金欲しいですよね、そうすればもっと転職市場が活況になってブラック企業が淘汰されると思うんですが。

雇用保険の給付にはたくさん種類がありますが、
一番メジャーなのが、この基本手当、二番手が育児休業給付金、三番手がおそらく高年齢雇用継続給付だと思います。
このあたりは誰しも聞いたことがあるのではないでしょうか。

結局のところ保険なので、財源は皆さんから天引きする雇用保険料と事業主負担、そして、ちょっぴり国庫負担です。
自分も負担している以上、貰えるなら使わないと損ですね。
私も大原通信の受講料を教育訓練給付でキャッシュバックしてもらいました。
教育訓練給付は予備校利用の社労士受験生はほぼ全員使ってるんではなかろうか。

今回は失業保険や、育児休業給付金ではなく、60歳になったら貰える高年齢雇用継続給付の不可解な点について書いてみます。


国からもらえるお金。

高年齢雇用継続給付という給付があります。
厳密にいうと高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類です。
今回取り上げるのはオーソドックス高年齢雇用継続基本給付金の方です。
この給付はその名の通り、高年齢で、雇用を継続されている方に対して支給されます。
色々要件はあるのですが、ざっくりまとめると以下の3つです。

  1. 60歳~65歳までの雇用保険の被保険者であること

  2. 被保険者であった期間が5年以上あること

  3. 60歳到達時の賃金から比べて75%未満に賃金が下がっていること

細かい部分は割愛しますが、以上の3つの要件を満たした際に、65歳になるまでの間に下がった後の賃金額×0~15%(支給率)が雇用保険から支給されます。
支給率は賃金の低下率に合わせて逓減します。

今は65歳までの雇用継続措置が義務化されていますが、
以前は義務化されておらず、一般的には60歳定年でご退職いただくか、
望む方には嘱託社員として一線から退いていただき給料を下げるのが一般的でした。
40年間勤め上げた方はもっぱら高給取りな方が多く、嘱託社員への切り替えを理由に会社は賃金を下げたいのですが、一気に下がると労働者の生活の質に大きく影響するので、国から幾ばくか補填をするので、給料下がっても頑張って雇用してね。
という趣旨のもとにこの制度設計されています。

ちなみに、現在、お国は65歳から70歳までの就業機会確保の努力義務に執心されていますので、2025年からは高年齢雇用計億基本給付金の支給率は0~10%に引き下げられる予定です。
*制度自体いずれなくなるともっぱらの噂です。

特別支給の老齢厚生年金もまもなく該当者がいなくなるので、
60歳~65歳までの特別扱いは数年後にはなくなりそうですね。


さて、上述の通り高年齢雇用継続給付は賃金が下がった場合に、下がった分をちょっぴり補填してくれる制度になります。
61%まで賃金が下がった場合は賃金の15%を補填、73%くらいだと約1%くらい。
下がり幅が大きいほど、支給率が高くなります。
具体的に見ていきましょう。

60歳時点で30万円の賃金をもらっていた人が、60歳以降に21万円の賃金をもらっていた場合、
21万円÷30万円=70%になります。
賃金が以前に比べて70%になってるということですね。
70%の場合の支給率は、

厚生労働省のホームページより抜粋

4.67%ですね。
ですので、下がった後の金額21万円×4.67%=9,807円となります。
国から月々9,807円が国から支給されるのです。
合わせると額面で219,807円。
オイシイですよね。

ちなみに最大支給率の61%をもぎ取る場合は18.3万円の賃金なので
18.3万円×15%=22,950円が支給されます。
合わせると205,950円になります。

ここまでが高年齢雇用継続給付においての表向きの話です。
ただ、この制度にはなぜか賃金を下げたのに額面が以前より爆上げされるというバグ技が存在します。

高年齢雇用継続給付のバグ技

バグ技の仕組みを理解するにはまず、労働法ワールドにおいて賃金とはどういうものか理解しておく必要があります。

賃金とは、

「賃金、給与、各種手当、通勤手当、賞与など名称のいかんを問わず労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのもの」
を言います。

臨時的なものや任意恩恵的なものを除いて、
事業主が労働者に払うものが賃金です。

そんなの分かってますよという話なのですが、ここが盲点です。
役員報酬は労働法ワールドにおいては賃金に含まれないのです。

何が言いたいのかと言いますと、先ほどの60歳時点で30万円をもらっていた人の賃金を18.3万円に下げ、役員報酬を11.7万円とします。
もらえる額面としては30万円から変わりません。
しかし、労働法ワールドではこれは賃金が61%まで低下したとみなされ、
22,950円が支給されるのです。
なので、実際には30万円から額面金額は変わらないのに雇用保険から2万円強が支給されるという謎の現象が発生します。

これは脱法行為でもなんでもなく、制度としてそうなっているのです。
制度の趣旨や、賃金とは?労働者性とは?と紐解いていくとなるほど、筋が通っています。

役員報酬は基本的に定期同額給与なので、ホイホイ変更できませんが、タイミングよく変更でき、兼務役員として労働者性が認められている方ならこのバグ技は活用できるのです。

こういうのは法の抜け穴というより、正しく法律を理解していれば気づく隠しコマンドみたいなものなので、願わくば誰にも気づかれないことを祈ります。
書いてもうてますけど。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


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