_ストーリーとしての競争戦略_を読んで感じたこと

部分の合理性と全体の合理性は別もの(ストーリーとしての競争戦略より)

どうも、ナザレです。いつもお読みいただき、ありがとうございます。

最近、重たい本を読んでいます。内容が重たいということもありますが、どちらかというと物理的に重たいという感じです。
で、その本のタイトルは、
『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』です。
一橋大学の教授、楠木建氏が書いた本です。

正直、読むの大変なんですけど、面白いフレーズがけっこう出てくるので読み応えはあります。
今日は、「これは面白いな」と思ったことを紹介していきます。

今回は、「部分の合理性と全体の合理性は別もの」というフレーズがビビっときました。
これは、個別の合理的な打ち手を数多く打っていったからといって、全体としての合理性が高まるとは限らないという意味です。

この本では、成功企業の競争戦略に関するストーリーが詳細に綴られているのですが、いくつか紹介されている企業の中にスターバックスがあります。
スターバックスは、必ずしも誰もが合理的だと思うやり方だけをやってきたわけではないということが語られています。

スターバックスでは、「third place(第3の場所)」の提供をコンセプトとして掲げています。そのコンセプトの達成に向けてさまざまな打ち手を実行しています。
しかし、一見して不合理なこともやっているわけです。
それは、スターバックスのすべての店舗はフランチャイズ方式ではなく、直営店方式なのです。

一般的に、フランチャイズだと店舗展開のコストは低く抑えることができます。スターバックスは急激な店舗展開を狙っていたわけではないのですが、それにしても直営店方式だとコスト負担が重くのしかかります。

これは、一見して不合理ですよね。
でも、「第3の場所」というコンセプトを達成するために、フランチャイズ方式ではなく直営店方式を選択したわけです。
簡単に説明すると、フランチャイズだとオーナーの意向がかなり色濃く反映されます。いくら本部が「第3の場所」を推進しようと思っても、回転率の高い店舗にしようと考えるでしょう。
それは当然です。やはり儲けたいですからね。
こうなると、コンセプトの達成が困難になるわけです。なので、直営店方式を選択しているのです。

スターバックスの次に説明している例が、「ウェブバン」という1999年に操業を開始したインターネット上のスーパーマーケットです。

インターネット上で買い物をするというのは、現在では当たり前の行為となっていますが、当時では画期的なことでした。
リアル店舗に行かなくても買い物ができる。しかも、勝手に届く。時間がなくても、早朝でも深夜でもいつでも買い物ができる。これは、良いことばかりですよね。
すべての打ち手がそれぞれに合理性があり、誰もが成功するだろうと考えていたと思います。

しかし、2001年7月には頓挫し、2000人の従業員を解雇して倒産してしまいました。
この失敗の理由は、個別の要素を見るとそれなりに合理的なのに、ストーリー全体ではやたらに非合理な話になってしまったことにあります。

そもそも、インターネットの総合スーパーというコンセプトに矛盾があったようです。ウェブバンは結果的に、計画購買を顧客に強いてしまいました。
一般的なスーパーであれば、店内をうろついているうちに今晩のメニューを思いついて、それを買うというのが普通です。
自宅まで無料配送してくれるにしても、顧客は受け取る時間に在宅している必要があります。この時間もまた事前の計画に入れておかなければならないので、メインターゲットとしている忙しい共働き夫婦にとっては、かなりわずわらしいでしょう。

この2つの例を比較してみると、一見して不合理な選択をした方は成功し、かなり合理性のある選択をしたと思っていた方は失敗しました。
もちろん、必ずしもこのような結果が出るというわけではありません。
だからと言って、合理的なやり方をすれば必ず成功するわけではない、ということもわかります。

これは、キャリアにも言えることだと思います。
スティーブ・ジョブズが「connecting the dots(点と点をつなぐ」)と言っていましたが、その時は非合理的だと思っていたことが、結果的につながり、全体としてとても合理的なやり方となっていたというケースは多いと思います。

私のキャリアも、その時その時考えて選択していった結果が、現在の職業につながっています。社労士になろうと思ってキャリアを積んできたわけではありません。

なので、常に合理的な選択をしないとダメなんだと思うのは間違いだということです。こういうと身も蓋もないですが、どういう選択でも上手くいく時はいくし、いかない時はいかないわけです。

企業の戦略を考えるにあたっては、部分的な合理性の追求自体は悪いことではありません。
しかし、全体としての合理性はどうなのかということを考えたほうがいいでしょう。
競合他社がやっている合理的な方法にすぐに手を出して実行したとしても、自社で上手くいくかは全体のストーリー次第ということなので、気をつけてください。


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