No.005 傷痕 桜庭一樹 著

桜庭一樹先生は私のお気に入りの作家のひとりでもあるので、できるだけ理解したいと思って読むのですが、今回はちょっと難しかったです。理解力ってどこに行ったら買えるんでしょうね?

今回は私も大好きな『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』や『GOSICK』シリーズで有名な桜庭先生の作品の中でもあまり知られていないであろう作品の感想です。

偉大なるスター、キング・オブ・ポップが51歳で急逝した。子供時代、二人の兄と一人の姉と共にデビュー後、独立して類稀な歌と踊りで世界の救世主となっていた。遺されたのは11歳の娘“傷痕”。だがその出生は謎でイエロージャーナリズムは色めき立つ。彼女は、世界は、カリスマの死をどう乗り越えるのか。

出典 文春文庫 あらすじ より


〇傷痕の正体

タイトルの“傷痕”というのは、実はとある少女の名前です。変わってるな~と思いましたが、この少女実は、世界でキングオブポップと称されるアーティストの出自不明な娘なのです。

熱烈なファンも多いキングオブポップはマスコミによってその行動を全世界に報道されていたので、突如現れた彼女の存在は世間を騒がせます。しかも彼女はキングオブポップと血が繋がっているのか、世間も家族も、もしかしたら傷痕自身でさえも知らない、という設定。

面白い!とこの時点では私も思いました。

このお話では、このキングオブポップが死んだことで、世界では何が起こったのか、様々な人物の視点から語られます。

娘の傷痕。
キングオブポップと一度だけ手を触れ合わせたことのある男。
キングオブポップを悪と信じるジャーナリスト。
キングオブポップを訴えた最初の少女通称“復讐《ベンデッダ》”。
キングオブポップの姉。
その姉の運転手。
キングオブポップと傷痕の暮らしていた楽園の警備員。
キングオブポップの追悼ライブを見に来た女。

これらの人物の視点からキングオブポップにまつまる話をそれぞれのストーリーがそれぞれを補完するように話は進んで行きます。

この手法?は私もいつかやってみたいと思っていたので、すごく勉強になりました。世の中の複雑な考えや思い込みを照らし合わせることで、一番可能性の高いひとつの真実が見えてくる。

わくわくの止まらない素敵な構成です。

が、しかし、肝心の傷痕の正体が結局最後まで語られなかったのです。序盤でジャーナリストが傷痕の髪を盗もうとするので、彼が何かしてくれるのでは、と期待していましたが、それも不発に終わりました。傷痕がキングオブポップの実の娘だったのか、はたまた、彼とは全く血の繋がりのない娘だったのか。

疑問の残る作品でしたが、構成はすごく面白かったです。

追記 この作品のキングオブポップは参考文献を見た限り、マイケルジャクソンをモデルor参考にしたようです。

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