No.003 愚者のエンドロール 米澤穂信 著

今回は米澤穂信先生の『愚者のエンドロール』です!この作品は先生のデビュー作でもある『氷菓』の続編になります。

「わたし、気になります」
文化祭に出展するクラス制作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田えるは、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!大人気青春ミステリ、〈古典部〉シリーズ第2弾!

出典 角川文庫 あらすじ より

ちなみにこの作品の後にも“古典部”シリーズして、お話が続いています。最近知ったのですが、このシリーズは『氷菓』としてアニメ化もされています。

基本情報としては、主人公、折木奉太郎が同じ“古典部”員の千反田えるの「わたし、気になります」というセリフによって、謎を解決する羽目になる。というのが主な展開です。

ちなみに折木奉太郎は「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければならないことなら手短に」をモットーとする省エネ男子で、そこが結構好きなんですよね(笑)


○二段構えの仕掛け

今回は展開についての感想なので、本のあらすじより詳しい全体的な展開を説明していきます。

本編は、千反田えるが古典部員を文化祭に向けて制作されたミステリー映画の試写会に連れていくところから始まります。先輩である二年生が撮った映画は人が死ぬシーンで突如暗転し、続きがありませんでした。
実は途中で脚本を担当していた生徒が鬱状態になり、この脚本の続きが分からなくなってしまったのです。

試写会に古典部員を招待した張本人であり、女帝と呼ばれている入須は、この脚本の続きを考えてくれないか、と古典部員に持ちかけます。こうして、脚本の続きを考えることになった古典部員たちは映画を作っていた人達に聞き込みを行いますが、あまり進展はありません。

そんな中、入須が折木を呼び出し、折木には探偵の才能があると言います。入須に乗せられた折木は見事に、残された映像から辻褄の合うストーリーを導き出します。

おーめでたしめでたし、といったように普通はここで一件落着だと思うのですが、ここから二つ目の仕掛けが炸裂します。

折木の導き出したストーリーの映画を見た古典部員たちは、口を揃えて「これは脚本を担当していた人の考えていたものとは違う」と言うのです。

ここで私の頭にはクエスチョンマークが乱立します。映画が無事に辻褄の合うストーリーで完結したはずなのに、まだ何かあるのか!と思いましたね。

ショックを受けつつも、折木が原因を考えた結果、彼は本当の事情を理解します。脚本を担当していた人は、元々人の死なないミステリーを考えていたのに、キャストたちの暴走で人の死ぬ展開になってしまったために、それを言い出せず、続きが書けなくなってしまったのでした。そこで相談を受けた入須は、古典部員を巻き込み、続きを考えさせた、というのが本当の事情でした。

ミステリーではどんでん返しや意外な犯人に度々躍らされる私ですが、何気ないところにヒントが散りばめられているのはすごいと思いました。そう来たか!とミステリーを読む度に舌を巻いている気がします(笑)今回の二段構えには特に驚いたので、とても面白かったです。

また、まだ未知数な存在である折木の姉も気になることですし、近いうちに続きを買いに行きましょう。

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