むかし東浩紀さんが批評の書き方でこんなことを言っていた気がするメモ

※6年くらい前に東さんが、朝日カルチャーセンターで批評の書き方的な話をしてた時の簡易メモを元にしたものです。内容を正確に捉えてない箇所も多々あると思うので、あくまで僕が勝手にとってたメモってことでお願いします。

■安易に括弧を使わない

・単独と書けばいいところを「単独」とすると一見批評っぽくなる。

⇒しかしそれは、書いてる人間が単語の意味をちゃんと分かってないことの裏返しなので、避けるべき。

※筆者注

これと別の所で、本文に関わる主張を脚注の中に組み込むのもアウトと言ってた気がする。余談的なものなら省けばいいし、本論と関わる内容なら脚注に逃げずに本文に組み込むことが大事とかそんな話。

■作家主義と二次創作主義

・大抵の批評は作家主義で作られている。

⇒具体的には、「前期の誰々は〇〇と言っていたのに対し、後期では××と主張したというように理解されている。しかし実際には、〇〇の中にすでに××は含まれていたのだ」的な書き方。

・これに対し、東浩紀の批評は二次創作主義でできている。

⇒それは特定の固有名に依存しない批評である。その代表が『動物化するポストモダン』。そこでのメインはオタクであって、特定の作家ではない。

※筆者注

『一般意思2.0』とかはルソーの固有名に依っている部分も大きいように思うが、このメモ自体6年前のもので、かつ、常に二次創作主義が絶対というわけではない……くらいの理解でいいんじゃないかと思う。

・東さんが批評を書く場合、まず「架空の問題」と「架空の解答」を用意する。

⇒当然、そのふたつの間を埋めるための作業が必要になるが、そこで批評家的なテクニックが試される。『ゲーム的リアリズムの誕生』なんかは完全にこのやり方で作られている。ある種の「パッチワーク評論」と言ってもいいかもしれない。

⇒このやり方を採る上で大事なのは、あくまで作品(テクスト)を批評のための材料として割り切ること。

・作家主義と二次創作主義は、柄谷行人的な方法と東浩紀的な方法と言い換えられる。

■実際の書き方について

①人はテーマを設定しようとする。

②しかし現実にはなにも思いつかない。

③それでもとにかく書き始める。

④なんとなく書いててテーマが見えてきたところで、何故そのテーマを選んだのかを書く(自己言及)。ただしここで私小説的な書き方をしたらアウト。

⑤いつか飛んでくるであろう反論を想定し、それに本文であらかじめ答えておく。

■段落ユニットについて

・とにかく論理的であることは大事。

・そのためには段落、改行を意識する必要がある。段落を切る能力を見れば、その人の批評力が分かる。

※筆者注

このメモには書いてないんだけど、僕の記憶だとこの時東さんは大ユニットと小ユニットという話をしていた気がする。ようするに、4行くらい書いてちょっとしたまとまりができたらそれを小ユニットとして、改行し、次の小ユニットへ移る。それを繰り返してより大きなかたまりが見えてきたらそれを大ユニットとして、段落替えだけじゃなく一行あけて別の話を展開する。……とかそんなおぼろげな記憶。

■批評の役割

・本来つながらないはずのものをつなげること。

・引用可能性とかキーワードは大事。それを読んだ他の人間が、また別のところで使ってくれるような書き方をすること。

※筆者注

たぶん、東さんが普段もおっしゃっている「固有名こそが人をひきつける」的な話に通じてる、気がする。

(余談)

メモの中に「〆切-(枚数÷5)」という謎の公式も書かれてました。


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