満月によせて

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少しだけ開けてある枕元の窓から
鈴虫の音と
首都高のトラックがごうごうと風を押し退ける音
そしてパトカーのサイレンと思しき音が流れ入ってくる。

なにかをしたくて
なにをしたいかわからなくて
暗い部屋に横たわっている。

魚座にある月は
神社のご神鏡のように清かで。

思わず何度も起き出して仰ぎみてしまう。

満月は余分なもの、不要なものを解き放つ
新月は望むもの、必要なものを紡ぎ満たす
そう言われている。

ふと、あるひとのことを思い浮かべる。

本当はふと、どころか
いつも気にしている。

この月をみているだろうか。

この秋の風を受けているだろうか。

その気持ちはどこに向いているだろうか。

その心は。

満月にお願いをしてみても、だめだろう。
この大切な「未練」という気持ちを
清冽に消し去ってしまうかもしれない。

まだそれは持っておきたいんだ。

ふと、
ずっと響いている音たちが途切れる。

そんな時わたしは
あの夏や、冬や、
いろいろを思い出すんだ。

今わたしがこうしていることも、
あのひとは知らないだろう。

月はただ
みている

月をただ
みている


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