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ベネマ

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ベネディクト×エマヌエル
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アクアリウム

 水面の光が薄く入り込んで海藻の影を揺らしていた。ぼくは目を瞑って風のように走り去る波動をうけて、ゆっくりとたゆたう。銀色に光る魚たちがぼくの頭上を泳いでいて、通りすがりに、こんにちはと挨拶をしてくる。
 こんにちは、元気ですか?
 うん、元気です。死んでるけどね。
 ぼくは死んだ。死んでここにたどり着いた。ここに来るまでいくつかの夢を見たのだけどあまり良くは覚えていない。それはここに来てから覚え

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親愛なるベネディクトへ

ベネディクトが部屋に戻ると、机の上に見慣れない便箋が置いてあることに気がついた。差出人の名前は、エマヌエル・ユルゲンス。逸る鼓動を抑えながら、ベネディクトは封を切った。

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やあ。突然の手紙でごめん。まずはこの手紙を書いたからと言って僕がどこかに旅立つということはないので心配しないで。ああ、君がすごく安堵する顔がみえ

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Hunde die bellen beißen nicht : Prequel

 死んだ後の感覚というのは曖昧なもので、それはまるでまどろみの中にいるようなふわふわした感覚に似ている。綿菓子の中に身体を埋めるような心地よさ。もう少しで意識を手放せる。ああ、眠いなあ。このまま眠れたら幸せだなあ。と思っていたらふと君の顔が浮かんだ。それを思い出してしまえば眠りになどつけなくなる。綿菓子の中で君の写真を取り出してしまうと、睡眠欲よりも胸のほうが傷んだ。そういえばお別れをしていない、

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残香

新伍研究所には社宅がある。
それは身元もあまりはっきりしていない外国人とか、流れ着いてきてしまった研究員とか、そういう人たちを匿うためなだとか言われているが、本当のところは良くわからない。もともと人の出入りが多い場所だ、今からアパートを探して契約をしてものを買い揃える、っていうのも確かにいちいちしていたらきりもなくなってしまうから合理的といえばそうなのかもしれない。ただ、社宅は一度燃えてしまったも

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