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【2023TDLレビュー】LAA意外に暗くないかも?

 LAAは今回のトレードデッドラインで買い手に回りルーカス・ジオリトをはじめとして多くの選手を獲得しました。大谷がオフにFAになるということで売り手になるという予想もありましたが、勝負に出た形。基本的には無理筋ながら理解できないわけではない動きだと思います。

〇LAAの主要なトレード一覧

※ Pro Rkはプロスペクトランキングの略。MLB公式のランキングを用いている。全は全体の順位。#は旧所属における順位。外は旧所属TOP30外

〇レビュー

 獲得した選手のうち、6月に獲得したエスコバー、ムスタカス、7月に獲得したグリチャック、クロンの野手4人は純粋な補強というよりは怪我人の穴埋めという形となっており、戦力の上積みにはなっていない印象です。離脱者を見ると、ジオ・アーシェラ、アンソニー・レンドン、テイラー・ウォードが今季ほぼ絶望。トラウトやザック・ネトもしばしば離脱しており、レギュラー野手離脱の穴は非常に大きなものでした。7月末頃までプレーオフ争いしてきた戦力を維持する程度に留まっています。補強が明確な上積みとなっている他のコンテンダーと比較すると、プロスペクトを放出した甲斐がないと感じます。

 一方、目玉となったジオリトとロペスの獲得にクエロとブッシュを放出したトレードも今夏の買い手有利の市場では、来季以降もコントロールできる先発投手の獲得を模索すべきだったように見えます。モンゴメリーやフラハティと比較するとロペス付きとはいえ、クエロ放出は過大に見えます。オーハッピーが正捕手として定着する見込みだから捕手プロスペクトはポジション的に不要だとしてもトレード市場で安売りする必要は無いのではないでしょうか。

 また、ほとんどがレンタルの選手である割に放出したプロスペクトは薄いファームシステムの中でも見どころのある選手が多かった印象です。TOP30の約4分の1を放出しており、ファームシステムの枯渇化は避けられないでしょう。特にこれだけ補強してもネトを除くと二遊間の弱さは否定できないうえにファームにも有望な二遊間がいないことは将来的なリスクになりそうです。

〇TDL直後のチーム状況

 TDL後は20日終了時点で5勝12敗。特にデッドライン当日から7連敗と色々と手を尽くして補強しながらも成果は上がっていません。ワイルドカードとのゲーム差は8.5ゲーム差で2年前の同時期と全く同じです。なお、2022年からワイルドカードの枠が1つ増えたので実質的には後退しています。

 補強の目玉であったジオリトは移籍後に防御率8点台と苦しんでいます。また、先発ローテ全体でもデッドライン後は大谷とセルシスを除く4人が5点台以上。というかデッドライン後はアンダーソン、デトマーズ、ジオリトの3人が防御率9点台と完全に崩壊しています。

 一方、レイナルド・ロペス、ドミニク・レオンは好パフォーマンスで弱点のリリーフ陣をカバーしています。とはいえ、エステベスが調子を落としており、補強した2人以外はムーアくらいしか信頼できるリリーフがいない状況です。打線もムスタカスがwRC+112を記録している以外、新加入組は全員100未満と補強が活きていない形となっています。

〇2024年以降の見通し

 大谷のFAが今季オフとなっており、LAA最終年になるかもしれません。ただ、現状ロックされている契約とLAAの財力を考慮すると、意外にLAAの先行きは暗くないかもしれません。2023年に230M弱となる見込みである半面、2024年には確定している金額は118M程度。調停も3回目の選手がいないですし、ノンテンダーも踏まえると、せいぜい20M程度増える程度でしょう。今夏デッドラインで頑なに守ってきた贅沢税の突破も容認しており、この姿勢を維持するという前提であれば、100M近く余力があるということになります。この意味では、直ちにフル再建しなければならないというほどではないかもしれません。5年くらい前のPHIくらいの立ち位置と考えれば、OAKやKCよりは希望があるでしょう。

 しかし、5割前後のチームから大谷の他、ムスタカス、レンフロー、グリチャック、アーシェラが抜け、エスコバーもオプション破棄濃厚です。大谷以外の選手もLAA内では野手デプスへのインパクトは大きいので埋めるのに苦慮しそうです。オーハッピー、シャヌエル、ネト、トラウト、ドルーリー、モニアックあたりまでをレギュラー、レンドンは計算しないとすると、3Bと外野の一角が穴になりますし、何よりDHが空きます。レンヒフォやベラスケスはコンテンダーとしてであれば控えとしても厳しそうです。

 こうした状況を踏まえると、オフの喫緊の課題は大谷を引き留めることでしょう。100Mの余裕を背景に大谷にどれだけ資金を投じられるか?個人的には複数の理由(後日別記事投稿予定)から残留の公算が小さくないと思いますので、ここは意外に穴にならないかもしれません。外野手もFA市場から拾いやすいポジションです。2023年オフは目ぼしい選手はいませんが、AAV10~15Mで2~3年レベルの選手であれば、そこそこ候補はいるので問題ないでしょう。問題はサードのレンドンの取り扱い。残り3年を諦めて代わりにレギュラーサードを獲得し控えとできれば比較的早く勝負できるかもしれませんが、現段階でそこまでの判断を下すのは難しいと思います。

 さらに投手は前述のように先発もリリーフも枠の半分以上空いていると言っていい状態です。大谷を引き留められたとしても先発を少なくとも1人は獲得すべきでしょう。特にこちらはAAV20M超のプレミアムな投手を獲得しないと厳しいと思います。近年はシンダーガード、アンダーソン、キンタナ、ハービー、テヘランら15M以下の中堅先発投手に賭けていますが、いずれも失敗しています。自前で中々ローテ投手を育てられない以上は2021年や今年の投手大谷くらいWARを稼げる投手が必要でしょう。また、リリーフも必要となると、100M近い余裕も吹き飛んでしまいそうです。

 ひとまず大谷を年50M×数年の契約で引き留めて他のポジションはFAが豊作のときに考えるということで少しずつ補強するのが現実的かもしれません。野手は組織内から出てくる傾向にあると思うので先発投手が優先でしょうか。いずれにしても財力はあるが、穴が多く、ファームからの供給も見込めない状況です。個人的にはFAで少しずつ補強してワイルドカードを狙いつつ、無理であれば今年のような無謀な勝負はせずにFAに近い選手を売ってファーム底上げに切り替えるべきでしょう。とはいえ、仮に大谷引き留めに成功すると、大谷の存在を背景に今までのようなコンテンド仕草が続くリスクもありそうです。LAAの将来にとっては、仮に大谷を引き留められたとしても、それがプラスであるのか非常に微妙な気もしているところです。

※画像はMLB公式


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