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ビジネスの初期に気をつけたい「レベニューシェアという甘い罠」

今お金がないでしょうから、売り上げの何%かをいただくような契約でどうでしょうか?

助かります!売れた中からなら払えるので!

こんな話を時々聞きます。

一見聞こえの良い契約ですが、これは後に恐ろしい状態を引き起こすことになります。

私もビジネスが走り始めた頃、こんなレベニューシェア(売上の一部から払っていく)契約をしたことがあります。

開発費がないから、売れた中から払っていく
制作費がないから、売れた中から払っていく

これでうまくいったケースとうまくいかなかったケースがいろいろありますが、8割位は何かしらの問題が生まれ、いい関係で終わらなかった記憶しか残っていません。

ビジネスの立ち上げ時期だからこそ、起業家には気をつけてもらいたいのです。

未来にツケを回す行為

あるモバイルサービスの開発費がなくて、システム開発費をゼロにする代わりに、売上の30%を払うという契約を結んだことがあります。

開発会社はシステムの見積もりを出すと、500万円かかるという主張してきました。
一方でビジネスをする私の側は、そんなにバラ色のビジネスモデルを描かないので、堅実な売り上げの計画を出します。

そうすると、ここで乖離が生まれます。
結果的に回収が遅くなるわけです。

お金を一括で出せない立場は弱いので、相手の要求を飲まざるをえなくなりがちです。

そうやって見えない力関係で決まったレベニューシェアの契約が、後で首を絞めることになるのです。

結局私は、売り上げが1億になっても3000万円を払うような状況を作ってしまったのです。


極端に言えば、高利の商社金融に手を出したのと同じような状態です。
契約相手は全く取り合ってくれません。
抜け出せない契約を結んでしまった…後悔してももう遅いのです。

目先のお金を手に入れて、支払いは未来にしていく消費者金融

目先のお金を払わないで、将来の利益で払っていくレベニューシェア

私はリスクの取り方を間違えたのです。

私の会社に出資をしていただいた、とある投資家の方の座右の銘に、こんな言葉があります

安易に得るものは、安易に失う

目先のリスクから逃れ、楽観的な未来に賭けるというのは、未来にツケを回す行為そのものです。

その後その会社は売却をすることになりますが、その時にもこの契約がとても大きな障害になったのはいうまでもありません。


レベニューシェアは、未払いである

レベニューシェアを受ける側にとっては、代金の全額を受け取っていないということになるので、相手の未払い(自分の未回収)が続いている心理です。

当初もらうはずであった一定の金額を、分割払いされているようなものです。
分割払いということは、利息が発生します。
本来の対価を回収しても、分割払いされた利息を含めた回収がなされなければ、代金の回収が終わったという認識にはなりません。

仮に、途中で売れなくなった場合にも、未回収側にとっては売り続けてもらわないといけません。
なぜなら、回収が終わっていないからです。

レベニューシェアだから仕方がないじゃない

そんなふうに思うかもしれませんが、未回収側からするとそうもいきません。

簡単に言えば、事業をやめられないのです。
デザイン等で言えば、デザインを変えられないということになります。

私はある商品のデザインをしていただいたことがあります。そのデザインの費用をレベニューシェアにしました。

そのデザインの製品はなかなか売れず、時間の経過とともにデザインも少し環境に合わなくなってきました。

商品のデザインを変えたいと思っても、デザイナーにとっては帰られては困ります。なぜならそのデザインで売ってもらわないと対価が入らないからです。

そんなことで、その商品は自分を変えることができず、別の商品を新たに作らなければならないと言う状況が起きました。


またある起業家を手伝っているときに、ロゴをレベニューシェアで作ってもらったというケースがありました。

ロゴの問題ではありませんでしたが、その商品は思ったよりは売れず、そのロゴを作ったデザイナーには、あまり思ったような金額が入らなかった状態が続きます。これは、デザイナーに入る金額条件が少なかったということもありました。

結果的にロゴを少し変えたいと言うことになりました。しかし、デザイナーからすると1部を少しだけ買えると言うことには抵抗があったようで、それを受け入れてはくれませんでした。一方で、ロゴを完全んk作り直すという判断もブランディングという観点からは非常に難しい判断にありました。

結果的に、そのデザイナーは、ロゴの代金は充分に回収されていないので、そこのロゴの返還請求を求めてきました。
著作権等の主張を行い、自分の対価を受け取っていないのでその権利は自分にあるという主張です。

これには大変困りました。結果的に、最初にロゴを作る代金を払うよりも数倍もの金額を払ってロゴを買い取ることになったのです。

レベニューシェアを受け取る側からすると、納品したものに対して、未回収つまり債権が残っているような認識/感覚になることがあります。
納品したけれど対価を受け取っていないので、納品物の権利は自分にあるという主張です。


また、レベニューシェアにする理由としては、納品時の代金よりもたくさんの回収が見込めるという期待があるからです。
回収が見込めないようなものに対して、レベニューシェアの契約は結ばないでしょう。

それに、レベニューシェアの条件を変更するのもかなり困難です。
それなりの会社が終わっていれば、満足のいく中でより良い合意が取れるかもしれませんが、うまくいけば行った時ほど、この契約は変更がしづらいものになります。

レベニューシェアは、何も知らないで決めてしまうと、悪魔のような契約になりかねません。


レベニューシェアの契約をするなら気をつけたいこと

レベニューシェアそのものが悪いわけではありませんが、経験がないひとにとってはお得に感じるかもしれません。

先に書いたようなリスクを踏まえて気をつけるべきことは次のようなものです。

1、契約書をつくる

多くの問題は契約書がないことです。口約束あるいはメールの一文しかないのでさまざまな条件がありません。
良い場合にも悪い場合にも、立ち戻れる契約書は必須です。

2、期間を限定する

いつか回収するというような永遠のような解釈を誰にもさせないことが必要です。
なんでも陳腐化しますから、そのままで収益を得られ続けられるようなものはありません。
一定のプロジェクトとして終わりを決めておくのです。終わりの姿も合意が必要です。

3、金額上限を決めておく

本来は回収すべき対価があるわけですから、それを達成したうえで、少しそこに利息やインセンティブが乗る感じになります。ですのでリターンの金額の上限や場合によっては下限を決めることも必要です。

4、権利の所在を明らかにする

未回収だから権利は渡っていないという状態にしないことです。
未回収であってもそれは一つの回収プランであって、権利は移転している(あるいはその条件)という状態を決めておくことが必要です。

5、最初に決めて、定期的に見直す

まずできるだけ最初に決めることです。途中での変更は難しいからです。
まだ見ぬ世界は夢がありますが、見始めると良くも悪くも、後に引けません。
一定の権利を得ると人は変えません。

仮に契約があったとしても期間や金額の定めがあれば変更が可能になることが多いです。

契約をしていまっているので変えたい

これはとても難しい。

でもひとつだけ方法があります。

それは精算をすることです。

本来の対価と未払いしてきたインセンティブを一括で払うのです。

相手も言い分があると思いますし、色々な主張もあるでしょう。
もう縁が切れてもいいのであれば仕方ないですが、どこかで回り回ってきます。
ですからできるだけお互いが納得いくポイントを見つけるしかないです。

でも大抵の場合はうまくいかないですし、レベニューシェアでなかったときの一括の対価の方が安かったということがほとんどです。

それができなければ、諦めるという方法もあります。その権利を使わないということです。

レベニューシェアはおすすめしない

はっきり言って、レベニューシェアはこうしたリスクが排除されればいい手法ですが、そうでなければ避けるべき契約です。

トータルコストで考えれば、このごちゃごちゃするやり取りも大きなコストです。

ちゃんと事業するなら、ちゃんと借りて、ちゃんと支払うことです。

その利息分なんてたかが知れてますから、どちらがお得か冷静に考えるべきです。

私も失敗して、周りでも多数見てきました。

同じ悩みなら事業で悩んで欲しいので、一人でも多くの起業家が、サスティナブルな起業であるようにと願っています。

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