作業について
この数年は、何らかの作業を常にしていたので、その中で得た知見をつらつら書きます。
より効率的に作業する方法……というよりかは、もうちょっと考え方について書くと思います。
前提
ここで作業と言っているのは、手を動かして、何らかの成果物(アウトプット)をつくる行為を指しています。
逆に作業ではない行為というのは、たとえば会議だったり、勉強だったり、成果物に直結しない行為です。もちろん会議とか勉強とかは間接的に成果物に結びついていて、無視できない存在ではあるのですが、この記事は純粋に作業だけを対象にします。
世の中の成果は、誰かしらが手を動かした結果生まれています。機械やAIが労働を代替したとしても、その機械やAIを研究開発してる人間がどこかにいます。作業なしで何かが生まれることはありません。
僕自身は仕事でプログラミングをしており、プライベートでもちょっとだけ個人開発をやっています。僕が書く作業はかなりそのイメージが強いですが、ただ抽象化して書いていきます。
文章執筆とか音楽制作とか動画制作とかにも使える話だと思っています。
作業と成果物の関係
何か作業していて、時間と成果物が比例しないと感じたことはないでしょうか?
特にクリエイティブ要素が強い作業だと、あるあるだと思います。
作業と成果物の関係は、下記の方程式で雑に表せます。
時間 x スキル = 成果物
まず第一に必要となるのは時間です。これはあればあるほど良い。あまりに短い時間で大きな成果を出すことはできません。大きな成果に対しては、長い時間が必要です。スタジオジブリは2時間映画制作のために5、6年かけています。
ただ時間をいくらかけても成果物が良くないときがあります。何十回、何百回TOEICを受けてもスコアが上がらないとか、何時間かけて絵を描いてもpixivの人気絵師の落書きの方が全然上手いとか。
これは単にスキルの問題です。
木こりのジレンマ
その分野の達人であれば、成果物を生み出すのにかかる時間は少なくてすみます。スキルレベルは掛け算で効いてくるので、いくら時間かけても成果物がちゃんとできない事態が発生します。
この現象について、木こりのジレンマという有名な話があります。
忙しく木を切る木こりが、斧がボロボロになっていることを指摘されても、「今忙しいから刃を研いでる時間なんてない!」と言って、木を切り続けるというものです。
この状態は、まさに時間をいくらかけてもダメな状態でして、本当に時間を使うべきなのはスキルを向上させる(刃を研ぐ)ことです。
早く実戦を経験した方がいい論
その一方で、「早く実戦を経験した方がいい論」もあります。
これもネット上でよく引用されるやつですが、「ベルセルク」というマンガのワンシーンです。
実戦の中で腕が磨かれる、という現象も実際にあります。というか実戦を経験しないで、教科書だけ読んだ人間が、高い成果を残すことはあり得ないでしょう。
矛盾してない?
「まず刃を研げ」と「いいから早く実戦に入れ」は両方主張としては正しいですが、両方同時に実現することはできません。
是非、皆さまの会社に入ってきた新入社員の左右にこの画像置いて、実戦に入ろうとしたら「まず刃を研げ!」と怒って、勉強してたら「いいから早く実戦に入れ!」と怒ってください。これで新入社員の行動を完全に封じることができます。
刃が先か、実戦が先かみたいな話になってきますが、これは何か新しくはじめるときのあるあるだと思います。どこまで事前準備してからはじめるかは悩みどころです。
新しくスキーはじめるときに、ちゃんとレッスン受けてからすべる人と、友達から基本教えてもらって、雰囲気ですべりはじめる人とでわかれるみたいな話です。
これはどっちが正しいというか、個人の好みになると思います。
個人的な最適解は、「とりあえずやってみる」→「壁を感じたところで刃研ぎに入る」がいいと思っています。
戦場に行って戦うとなると未熟だと死にますが、幸い我々が普段やってる作業で失敗して死ぬことはそうそうないので、失敗することは大して問題ではありません。
なぜとりあえずやるを先にすべきか
なぜ実戦を先にしているのかというと、
そっちの方が成長が早い
「あ、あいつ……戦いの中で成長してやがる?!」←だいたいそう
自分に何が足らないかがわかる
実戦経験がないまま勉強だけすると的外れになりがち
そっちの方が楽しい
何かはじめるタイミングは熱量が一番高いときなのに、その時間を基礎練にまわして熱量が冷めていくのはもったいない
とりあえず何らかの成果物が残る
最初につくったもんなんてろくなクオリティではないけど、自分にとっては大きな一歩
あたりが理由になります。
刃を研がない危険
「とりあえずやってみる」「小さくても完成させるのが大事」これらは初心者にまず向けがちなアドバイスなんですが、危険もあると思っています。
それは低いレベルで止まってしまう、ということです。
ソフトウェアの世界でいうと、個人開発でアプリを量産してるような人がます。数日レベルでできる感じのアプリを年に10個、20個リリースしてるのを観測します。量を出せるのはもちろん立派ですが、プログラミング学習のサンプルみたいなクオリティのものだと、なかなかその量が質に転化しづらいです。
「あれなんか俺ずっと同じようなことやってるな……」と思ったところが、たぶん刃を研ぐタイミングなんだと思います。
反復練習が大事
というわけで刃を研ぐ、すなわちスキルを伸ばすことが大事です。
ただ単純に、何か物事を上手くなるというのは、難しいものです。
生まれつき得意なこと、やれば上手くなっていくこと、どうしても上手くならないことがありますよね。
僕にとってはこんな分類ですかね。
得意: 文章
やれば上手くなる: プログラミング
どうしても上手くならない: 英語、野球
英語はやれば上手くなるに入れてもいいかも? でもまあだいたいこんな体感です。
最近気づいたんですが、「どうしても上手くならない」分類にあるものも、ずっとやってると遅いなりに成長があります。
どうやら反復練習が効いてくるみたいです。
楽器上手くなりたいと思ったとき、ヘタなうちは基本的なコードをひたすら弾くのがいいらしいです。
クリエイティブな作業であればあるほど、飛躍したくなるんですが、実際は飛躍するためには最低限の基礎は必要で、天才ピアニストも最初にピアノ弾いたときはドレミファソラシド覚えるところからだったはずです。
モチベーションとの付き合い方
どんなに好きなことでも、ずっとやってればモチベーションは落ちてきます。
「好きではじめたことなのに、なんでこんなにやりたくないんだ……」みたいな気持ちになることが僕は人生で100回ぐらいありました。
一時期、ずっとモチベMAXの状態で働けないか色々試行錯誤したんですが、結論から言うとムリでした。モチベMAXを装うことはできても、心の底から常にモチベMAXで同じことし続けるのはムリです。
なので、やる気が出ないことで、自分を責めるのはやめるようにしました。そういうもんなので。
僕がモチベ下がるときのパターンと対策はこんな感じっぽいです。
自分よりすごい人を見て劣等感に襲われる
自分よりすごい人はどの業界にもいるので、諦めるしかない
自分のスキルが上がっていくに伴って、緩和されてく傾向がある
最近はあまりプログラミング分野では感じなくなってきた
無意味な作業をしている
可能であればその作業やめるのがいい
転職など
どう考えてもやった方がいいがやる気が出ない
休む
遊ぶ
人によってモチベ下がるパターンは違うと思いますが、特効薬は休息だと思います。
疲労が蓄積してきたら、人間思考もネガティブになるし、ずっと同じことしていたら飽きも来ます。とりあえず体力を回復させるだけで、目の前のタスクと向き合う気力が回復することは結構あります。
好きではじめたことでも、基本的には上手くいかないことの方が多く、相応に消耗するので、適度に休息入れないと心身どっちかがぶっ壊れるというのはよく見ます。
作業興奮を上手く使う
モチベーションに関してぐだぐだ書きましたが、もうちょっと低いレベルで、単純にサボりをどう防ぐか、という問題もあります。
「適度に自分を許すことは大事だよ」みたいなことを上記で長いこと書きましたが、これをやり過ぎると普通にサボっちゃうことになります。サボりながら成果を出す、ができるといいんですが、残念ながら個人に紐づく作業は、個人が手動かさない限り何も生まれません。
個人の活動は別にやりたくなければやらなきゃいいじゃんで終わりなんですが、仕事となるとそうもいきません。特にリモートワークで自宅から作業してるので、サボろうと思えばサボれる環境にいます。また物理オフィスほどの緊張感や集中力はない状態です。リモートワークに適応するために、これは結構大変でした。
当初は仕事に入るためのルーティンをつくってみました。たとえばコーヒーを飲み終わったら仕事はじめるとか、ラジオ体操やったら仕事とか、瞑想やったら仕事とか、この音楽かけたら仕事とか、色々試しました。
でも結局ルーティンは、やる気起きないときはそもそもそのルーティンやるのが気重くなるので、僕にはあまり向いてませんでした。今は何もやらないようにしています。そっちの方がまだ一個動作挟まないだけマシな気がします。
ポモドーロテクニックも試しましたが、これもまた合わなかった。自分の集中のリズムとポモドーロのリズムが合ってなさすぎて、めちゃくちゃやりづらかったです。
一番いいなと思ったのが、作業興奮を使うというアイディアでした。
とりあえず着手して、「作業」に入ってしまう。すると「ああこれもやらなきゃ」「これも必要だな」みたいな、具体的な思考がはじまります。経験則として「軽い気持ちでやったら意外とノってきた」というのはよくあったんですが、作業興奮という名前がある現象でした。
やる気が出ないときも、目の前にあるタスクをとりあえずやってみると、作業興奮によって、やる気ないなりに成果を出せる、というのがあるみたいです。
個人的には、これがどんな洗練されたメソッドより成果を出しています。
作業を中途半端なところでやめる
これはあんまりできてなくて、できるようにしたいことなんですが、「作業を中途半端なところでやめる」というのができるともっといいみたいです。
どうしてもキリのいいところで終わらせて、気持ちよく次の日に行きたくなりますが、中途半端にしておくと、翌日「気持ち悪い状態」からはじまることになって、それが「うわなんとかしなきゃ」という気持ちにつながって、上記の作業興奮状態にスッと入りやすくなるっぽいです。
また中途半端なところでやめることができるようになると、時間で区切れるようになるので、定時が来たので仕事を終わらせるとか、就寝時間が来たので作業中止とかがしやすくなります。これでより持続可能になります。
……というのは頭ではわかってるんですが、どうしてもこれできないですねえ。結局気持ちいいところまで終わらせようと粘って、結局本当はその日終わりたかった時間にも間に合わないし、翌日中途半端な状態で持ち越すしになります。
(了)
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