はたらく兵隊さん

 

〇ライブハウス・前

ギターとエフェクターボードを持った

タナカがライブハウスへ入っていく。

 

〇同・中

   入ってくるタナカ。

   スタッフとあいさつを交わしながら

   奥へ進む。

   ステージでは機材を準備している。

タナカ「おはようございます。」

The Floorマネージャー「タナカさん!おはようご

ざいます。」

   ハヤト、ヨウジ、コウタロウが楽屋か

ら出てくる。

ハヤト「タナカさん、おはようございます。

 今日もよろしくお願いします。」

タナカ「おはよう。今日もよろしく。」

ハヤト「それで今日のセットリストちょっと

変更したんでこれでお願いしていいすか。」

   ハヤトがタナカに紙を手渡す。

タナカ「(一瞥して)1曲目これ?」

ヨウジ「はい。これでお願いします。」

タナカ「まあいいけど、もっと早く言ってく

れよ。」

ハヤト「急ですいません。じゃあさっそくゲ

ネお願いします。」

コウタロウ「(小声で)♪働く働く兵隊さん、

生きる喜びはなんですか♪」

 

〇同・楽屋

   誰もいない楽屋。

楽屋の奥に「倉庫」と張り紙のある扉。

   その奥から、ガタッと音がする。

 

〇タイトル「はたらく兵隊さん」

 

〇ライブハウス・外(夕)

   チケットを手にした人たちが賑やかに

列を作っている。

   入口スタッフにチケットを見せた女の

子二人がライブハウスへの階段を下り

ていく。

 

〇同・中

入ってきた女の子二人が受付にドリン

ク代を渡しドリンクチケットを貰って

フロアへ入る。

  フロアには先に入った客達がステージ

上のスクリーンを見つめている。

スクリーンではM❘1の映像を流して

いる。

女の子二人は不思議そうに目を見合わ

せる。

    ※ ※ ※

客電が消える。

M❘1グランプリの出囃子と共TheFloorの

3人とタナカはステージへ上がる。

楽器の準備が出来て目を見合わせる4

人。

ハヤトの合図で「はたらくく兵隊さん」

のイントロを鳴らすヨウジ。

フロアは一瞬の間のあと、歓声が上が

る。

 ※ ※ ※

数曲演奏し、

ハヤト「こんばんは!札幌のバンドTheFloorです。

 今日は来てくれてありがとう!」

客達の歓声と拍手。

ヨウジ「いやぁ。最近どうですか?ハヤト氏」

ハヤト「え?何いきなり。ハヤト氏なんて今

まで言われたことあったっけ?」

ヨウジ「いや、ワタシね。M❘1で優勝した

いんですよ」

ハヤト「なにそれ?(笑)」

ヨウジ「僕たちTheFlooはM❘1グランプリ優勝

を目指します!」

ハヤト「力強い宣言だけど、俺たち一応ロッ

クバンドじゃね?」

ヨウジ「これからは副業の時代だから。歌っ

てしゃべれるロックバンドを目指さないと。

ね。タナカさん!」

タナカ「え?俺に降るの?ってかお前らの手

に書いてある「M」の文字ってずっと気に

なってたんだけど。何?」

ヨウジ「M❘1の「M」です」

ハヤト「ワンピースみたいでしょ」

タナカ「いや。ちょっと意味わかんないわ」

   フロアから笑いが起きる。

ハヤト「タナカさん。俺も気になってたんで

すけど、タナカさんのエフェクターの危険

ってシールなんすか?初めて見るエフェク

ターだ。ちょっと鳴らしてみてくださいよ」

エフェクターのスイッチを入れようと

するハヤト。

タナカ「ばか!やめろって!危ないって!

危険って書いてあるだろ!」

ハヤト「えー。けち。」

タナカ「いや。カノジョかよ」

   ハヤト、笑いながらドリンクを一口飲

んで、うぇっとなる。

ハヤト「(苦い顔で)なにこれ・・・」

コウタロウ「ノニジュースを入れておきまし

た」

ヨウジ「リアクション芸も大事だからね」

   客達から笑い。

 

〇同・楽屋

   楽屋の奥、倉庫の扉が開いて、ハヤト、

   ヨウジ、コウタロウが出てくる。

   手には音符のマークがある。

   楽屋の窓からステージを覗いて、

ハヤト・♪「くそ。MCのヤツら勝手にス

テージ出やがって」

コウタロウ・♪「油断したね」

ヨウジ・♪「なんだよM❘1優勝って」

   ヨウジの背後にそっと立った人影が首

   の後ろを押すとヨウジが停止する。

   驚いて振り向くハヤトとコウタロウ。

   後ろにいたのは手にSと描いてあるコ

ウタロウ、ハヤト、ヨウジ。

ハヤト・♪「スペア!」

コウタロウ・S「油断したね。君たち演奏用を狡いと思っていたのはMC用だけじゃないよ。

俺らスペアのほうが、あいつらMC用より

演奏できるしお前ら演奏用よりMCが上手

いんだよ」

逃げようとした演奏用のコウタロウを

スペアのヨウジが取り押さえて停止さ

せる。

ハヤト・♪「スペアのくせに!」

コウタロウ・S「スペアだから万能なんだ」

   悔しそうにする演奏用のハヤトをスペ

アのヨウジとハヤトが取り押さえて停

止させる。

 

〇同・ステージ

   盛り上がっているライブ。

   急に照明などの明かりが落ちて暗闇に

なる。

フロアから悲鳴があがり、騒然となる。

ステージでドタバタと音がしているが

暗くて見えない。

ステージが静かになる。

照明が点く。

ハヤト・S「ごめんなさい。びっくりした

 よね。ちょっとトラブルで照明が落ちゃっ

たけど、もう大丈夫。続き行くよ!

タナカさん、いいですか?」

タナカ「・・・バグったか」

ハヤト・S「?」

タナカ「(スカウターのようなタナカの視界)バグ発生。削除します」

   タナカが「危険」のテープを張ったエフェクターをオンにして
   アンプの出力を最大にする。

   ギターを鳴らし。

   暗転。

                終わり


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