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中国EV視察記 in 上海

トヨタコネクティッド株式会社 先行企画部のエンジニア Shingo.Nです。


トヨタコネクティッド株式会社 先行企画部のパーパスは「全体の20%を未来を先取りする集団として 責任をもって 味見(トライ)する」

先行企画部・新技術開発Gでは、「最先端の技術」をターゲットに日々試験研究をすすめています。


今回は、前回とは打って変わり、中国のEV市場の視察について記事にしたいと思います。

今回の視察の目的は主に以下の3点です。

  • 中国モビリティ関連サービスを体感し、知見を得る

  • 中国EV市場の現在を理解する

  • 中国EVのユーザーエクスペリエンスを体感し、オーナーにインタビュー

視察の日程は3泊4日でした。
1日目と4日目が移動日、2日目と3日目に中国EV市場に関連した企業の視察です。

ツアー全体は株式会社hoppinさんが、現地の案内は匠新さんが担当してくれました!


1日目

この日はトラブルの連続でした。
3回も税関に並び直したり、タクシーの運転が荒かったり、ホテルでマルチタップさしたらボンッと音がして電気が消えて復旧してもらったり。日本にいても体験できるけど、海外にいるからこスリリングな体験ができました。

上海のリニアモーターカー
タクシーの中からみる上海

2日目

午前中にミーティング、午後から視察というスケジュールでした。
ミーティングでは、中国EV市場の現状について、匠新さんから説明がありました。

話の中では、どんどん激化するEV市場の競争の中、退場する企業も出てきた。スタートアップも「野蛮な成長(野蛮生长)」をしつつ機会をうかがっているとのことでした。説明の後は、理解を深めるため活発な質疑が行われました。

ミーティング後、ホテルから移動しEVメーカーのショールームがあるモールを視察しました。ショールームでは、解説を聞きながら中国EVについて理解を深めました。

XPeng

https://www.xpeng.com/

まずはXPengのショールームに行きました。
個人的にP7iのフロントマスクが好み。

P7i
センターコンソールは広く、助手席と分離されており、座るとまさにコックピットといった印象

IVI(車載インフォテインメント)はタブレットと変わらない操作性です。デザインもシンプルにまとまっており、明るいイメージ。というか、このまま取り外して外出先で使えないもんかなって気になっちゃうくらいタブレットのまんまじゃないですか?

ま、はずしたまんまだった!運転できない!というトラブルも考えてのことなんでしょうけど。

地図と設定画面の2画面分割
充電中の画面
充電中に表示される画面
画面隅のマスコットをタップするとハートをくれる
サイドミラーに埋め込まれているカメラを目だたなく仕上げているのが好印象でした

ZEEKR

https://www.zeekr.eu/

ZEEKRは、吉利汽車のEVブランド。若者をターゲットとしてブランド展開しているようです。

ショールーム

個人的にはZEEKR 009のフロントマスクがかっこいいと思ったのですが、好みは分かれるようです。

ZEEKR009 (車体への顔の映り込みをスポット修正している部分があります)
フロントマスク

車載システムは車により異なりますが、ユーザーインターフェースの印象はXPengとそれほど変わらないという感じです。メニューが多く全ては確かめきれませんでしたが、見た目の印象もXPengとぱっと見同じ部分があったので、ここで差別化するのは難しいだろうなと感じました。

地図
こちらはXPengとそれほど変わらないように見える

極越

https://www.jiyue-auto.com/

吉利と百度の合弁企業だそうです。
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00327/00171/

以下の画像は、ロボットカー(汽车机器人)01です。
個人的に赤い色の車って、自分の感性を刺激して、
この車に乗ってどこまでも走ってみたいという感覚になります。

01

こちらの車では、ゲームがプレイできる、ワイドな車載システムが搭載されており、画面を分割して表示したりできるなど、従来のクルマと異なるユーザーエクスペリエンスを体験できました。
 情報に大きく依存する現代社会で、車内で受信できる情報量を増やして、車側に寄せることで、助手席の同乗者も受益があるし、使い方次第では、車内の一体感を高めるような使い方もできるのではないかと思いました。

ゲームができる
ワイドなユーザーインターフェース

続いてはHUWAEIです。日本でもスマホ販売で名前が知られていますが、
中国のショールームは、スマホ+タブレット+EVが展示されたショールームとなっており、日本ではあまり見ない形式の店舗だなという印象でした。
HUAWEIは車から家電まで取りそろえたその品揃えで多くのユーザーを抱え込んでいるそうです。

ショールーム
第一印象は他のメーカーとさほど変わらない
スマートフォンの投影もできるそうです

HUAWEIのスマホやタブレット持っている場合、この機能は便利そうだなーという印象を受けました。どちらの製品ももっていないので、この時点ではグっときませんでした。

ということで、モール視察はここまで。

IVIについての簡単な考察

と、ここでIVIについて簡単に振り返ってみる。

「Android Automotiveで作ってるのか?」

掲載している各メーカーのIVI(車載インフォテインメント)のユーザーインタフェースを見ていると、白基調の配色になっていることがわかります。HUAWEIは独自に進化させたHarmony OSを使っているので、特に違和感はなかったのですが、他のメーカーがAndroidベースだとすると気になる点がありました。

それは配色です。Android Automotiveをベースに車載機器開発していると思っていたので、Googleが提供しているデザインシステムの思想と異なる部分があることに違和感を感じました。以下のページでは「黒から構築する」という原則が記載されています。一方で、これまで見てきたIVIのインターフェースは白を基調としており、全く異なることがわかります。(もちろん反射の低減という意味ではわかる。)

Android Automotive デザインシステム 色

「Android Automotive OS のカラー戦略の基盤は、「黒から構築する」という考え方です。インターフェースの色を黒をベースにすることで、昼夜のテーマが大きく変わることなく、より一貫したユーザー エクスペリエンスを実現できます。また、黒色は自動車の内装やダッシュボードに使われることが多く、ハードウェアとの調和が良くなります。」

https://developers.google.com/cars/design/automotive-os/design-system/color?hl=ja


そう考えると、Automotiveではない、通常のAndroidを採用している可能性も考えられます。私はPixel Tabletを保持しているのですが、ユーザーインタフェースがそっくりです。ランチャーアプリを開発してしまえばAndroid Automotiveでもできそうですが。

Pixel Tablet

以下はZEEKR Xのオーナーマニュアルです。

ホーム画面の説明ですが、たしかに似ています。画面上に配置されている、ウィジェットについてはPixel Tabletでも配置できますので類似性があります。Androidはオープンソースですから、ビルドインアプリを入れれば、実現できないことはないですね。

https://www.zeekr.eu/manual-detail?path=html%2FT01471876.html&title=Home%20page&yk=MZ13&yn=2024%20YEAR&vn=ZEEKR%20X&vk=AAD2&lk=en_US&ln=English

ZEEKR Xには、スマートフォンの投影機能もあるようです。それはAndroid Autoの機能が採用されているとのこと。Pixel TableにChromecastがあるから、それかなと思ったら違うみたい。

https://www.zeekr.eu/manual-detail?path=html%2FT01471879.html&title=Mobile%20phone%20projection&yk=MZ13&yn=2024%20YEAR&vn=ZEEKR%20X&vk=AAD2&lk=en_US&ln=English

しかしGoogleが提供しているAndroid Autoへの対応状況で、ZEEKRの名前が出ていないのはなぜだろう。ATOTOの製品ような後付小型ディスプレイオーディオシステムでもAndroid Automotive + Android Autoは実装できてるようなので、その辺はあまり細かい問題ではないのかも。

ATOTOのカーナビだと、Android Autoもスマホのキャストもできますね。

ただ現状でどのよう作ったのかは気になるけど、専門領域ではないので、この話は一旦ここでおしまいです。

それにしてもZEEKR OS 5.0のデザインコンセプト動画かっこいいなぁ。

個人的に求めてるのはこういうの。(上の動画より引用)

充電ビジネス視察

EVメーカーのショールームを覗いた後は、充電ビジネスの視察を行いました。こちらの充電ビジネスは、コンテナ型のEV充電施設を拠点として配置し、上海市内のEVユーザーの要請に応じて充電したEVのバッテリーをオペレーターがトラックで輸送し交換するというものです。今後、中国国内だけではなく世界に向けてサービスを提供していく、ビジョンが説明されていました。コンテナの内部や、EVバッテリーを積載するシーンも見せてもらいましたが、EVバッテリーの積載装置を自作するなど、独自のノウハウがあるようでした。

バッテリー充電の拠点となるコンテナの外観
EVバッテリーを運ぶバン

VRゲーム

次にVRゲーム視察をしてきました。最近、ユーザーエクスペリエンスにゲーミフィケーションを取り入れる事例なども増えてきているようなので、入場からどのような体験ができるのかを観察してきました。

私がプレイしたのは、初代バイオハザードのような洋館で大量にゾンビが襲い掛かってくるゲームでした。拠点防衛みたいな形で、洋館の玄関ホールの360度から次々にゾンビが襲ってくるのを撃退します。

以下雑感。(矢印は感情。)

  • 入るとVRゲームの映像が流れている ↑

  • 荷物を預けたが預かり方が心配だった ↓

  • ユーザー登録をやりなおした ↓

  • 機器の不具合により、ゲームプレイ前の準備をやりなおす必要があった ↓

  • 準備がパラレルでできない ↓

  • 武器を選べる ↑

  • 機器が重い →

  • VR世界がリアル ↑

  • 絶叫する人がいた ↑

  • 考えてる暇がなくなるくらいゾンビ出てくる ↑

  • 打ち尽くしてリロードするまでに襲われた ↑

  • 扇風機あるのに暑かった ↓

  • 終了後、動画で振り返り見れる(エアドロで共有してもらえる) ↑

  • そんなでもないでしょうと思ったら、汗をかきすぎた ↓

  • スコアなどに応じて二つ名みたいなのがつく「キリングマシーン」とか「ガンアーティスト」とか ↑

SANDBOX VR

3日目

各EVメーカーのオーナーの車に乗せてもらい、ユーザーにインタビューするのがメインイベント。その前に前日に行けなかったnioに向かいました。

nio(上海蔚来汽車)

nioは車だけでなく「nio life」というライフブランドや、「nio house」というコミュニティを展開しています。車だけではなくそのユーザー同士がイベントを開催する場を提供したり、nio主催でイベントを開催したりと、今まで見たことがない、面白いを展開しています。

どのようなものなのか興味がある方は、今回の視察でお世話になったhoppinのCEO滝沢さんが、詳細な記事を書いているのでご覧ください。私も非常に勉強になりました!

まずはnioのバッテリースワップステーションを視察。車の中にはオーナーさんが乗っています! 動画をお見せすることができないのですが、車を低位置に止めたら、車は自動で動いて、ステーションの設備がシャーシーのバッテリーを交換するといった具合です。「自動運転」を生で見て「すげー!」となりました。

自動運転中

YouTubeに動画があったので、リンクを貼り付けてておきます。「nomi」が活躍しています。

以下はGIZMODOの記事。

お次はnioのショールームに向かいます。ec6かっこいい。nioショールームは上海の中心部にあり、同じ建物にnio houseも入居しています。

ショールーム
ダッシュボードに鎮座するnomiちゃん
運転席側
うNIO PHONEを置ける場所?

そしてお次はnio houseです。こちらは、nioオーナーのサロンとなっています。例えば以下の利用方法があるそうです。

  • 社会的地位のある方同士が交流して仕事につなげる

  • 育児施設があるので子供を預けてショッピング

  • イベント開催

nio houseの一角

オーナーインタビュー

nio houseから移動し、本日のメインイベントの開始です。
リクルーティングした中国製EVに乗っているオーナーの車に乗せてもらたり、車のインテリア・エクステリアを見ながらドライバーの感じているユーザーエクスペリエンスについてインタビューを行いました。
こちらについては、オーナーさんの顔が出ている画像や動画が多いので、
掲載しておりません。中国EV各メーカーの車のオーナーさん集合しました。

以下印象に残ったところです。HMIの機器の大きさについて、オーナーさんの意見がわかれたところになります。

オーナーさんからのインタビュー

  • ディスプレイが助手席まで伸びている車もありますが、この車は真ん中だけです。問題ないですか?

      → 問題ないです。運転中に見誤ることもあるので、このままで良いです。

一方で別のオーナーさんは

  • ディスプレイが助手席まで伸びていますが、これがなくても買いましたか? 

→ これがないと買わなかったと思います。機能が良いですから。

車が違うオーナーさんに話を聞いたので、傾向が表れるわけではないのですが、「見間違うところもあるから」という意見が出るとは思いませんでした。そういえば、助手席までディスプレイがある車は運転主側と助手席側で独立してダッシュボードに格納可能だった。

HUAWEIのように車以外にも電化製品・電子機器をブランド化している企業では、スマートフォンを車のセンターコンソールに置くと、ディスプレイにスマートフォンの画面が投影され、スマートフォンを操作できるようになる機能が便利というオーナーさんもいました。

また音声入力による車載機器の操作は当たり前に使われていました。

車の中からスマートホームのカメラに接続して、子供が勉強をやっているか確認したり、スマート家電を操作しているそうです。車を買ってから他のHUWAWEIの機器をそろえたそうです。nioもそうでしたが、ユーザーの生活を取りこむという戦略は、中国ではビジネスとして当たり前に実践されているのですね。非常に興味があるところ。

宴会

最終日の宴会では、中国のお酒「白酒」のお作法に則った、1vs1で熱い飲み会が開催されました。匠新さんとも打ち解けられて非常に楽しい思い出となりました。 皆さんぶっちゃけトークで酒がすすみました。皆さん酒が強い!

白酒

大いに盛り上がり、「前日からこの感じで飲めてればもっと楽しかったのにねー」と話をしておりました。

皆さん、是非日本に視察に来て下さい!そして、日本で飲みましょう!!

最終日

最終日は移動日でした。色々とありましたが、長くなってしまうので、写真でお伝えできればと思います。

お昼に食べた 串
浦東空港


今回の視察を通して、日本であまりに耳にしたり触れることができないような体験をして、「ユーザーエクスペリエンスとは何ぞや」ということを深く知ろうというきっかけになりました。

TCに入らないと今回のようなチャンスもなかったし、チャンスがあっても挙手していなかったと思います。また視察の機会があれば、中国で学びを得たいと目論んでいます。

それでは、最後までお読み頂きありがとうございました!


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