ドキドキ!プリキュアについて【3】

ドキドキ!プリキュアの第二話初稿は2012年8月8日にアップしています。第一話初稿から二日しか経っていませんが、これは一、二話が連続話だったため、ほとんど一気に書き上げたことを意味しています。

そんな短期間で執筆したということは、さぞかしスラスラ書けたのだろうなとお思いの方もいるかと思われますが、これがそうでもないのです。

先述の通り、第一話はプロットの段階から細かく決め込んで、手ごたえを感じていましたが、第二話は大まかな話の流れしか決めていなかったのです。何故かと言うと、

「プリキュアになったマナが、六花にその事を話すか迷うが、結局話す」

この一行で第二話は言い表すことが出来てしまうからです。更に前回からのバトルの引きを前半で片付けなければならないので、シナリオの分量もそれほど残されていません。なので、ちょっとナメていたのです。イケるだろうと。楽勝だろうと。

ところが……書き始めてから悩むのです。

六花が、全然魅力的に映らない!

一番の幼馴染みとして、マナを助けたいという気持ち。その辺は、出せる。使い古された手だけれど、二人の出会いを回想で描けばいい(実際、これは三話で使います)。だけど、六花のパーソナリティを現すキーワードが、どうしても足りないのです。

締め切りギリギリまで悩みました。でも出ないものは出ません。そういう時、ライターはどうするかというと、自分の引き出しを開けるしかないんですね。

子供の頃、母親に絵本を何冊も読んで貰いましたが、その中で印象に残っていたのが、ご存じ「幸福の王子」でした。あのお話は、子供心に衝撃を受けました。だって、ハッピーエンドじゃないんだもの! 御伽噺って必ず「幸せに暮らしましたとさ」で終わるものじゃないの? 王子の銅像もツバメも全然救われないんですけど!!

他人の幸せを第一に考えるマナを、その幸せの王子とするならば、六花は迫り来る冬の足音に死の予感を感じながらも王子の側に寄り添い、命が尽きるまで手助けをするツバメに見立てることが出来るのではないか?

「この幸せの王子!(中略)私は、あなたのツバメにはなれない?」

この台詞が書けた時、ああ、六花ってここまで思い詰める子だよ。マナの為なら命だって投げうつ覚悟のある子だよ、と自分でも腑に落ちた気がします。

でも、これはひとつの掛けでした。何故なら監督はじめプロデューサー陣には、この台詞はシナリオの段階で初めて見せることになるからです。「こんな暗いのダメだよ」と言われたら、そこでおしまいです。更に、付け加えるなら前作『スマイルプリキュア!』は絵本をモチーフにしています。オンエアはチェックしていましたが、もし自分が見ていない話数で、幸福の王子が題材として取り上げられていたらアウトです。まさにドキドキしながら本読み(シナリオ打ち合わせのこと)を迎えるわけですが、柴田Pが「面白い」と言ってくれたおかげで、その後の作業は非常にスムーズに進んだのです。

ちなみに、自分が子供の頃に衝撃を受けた物語は三つあって。ひとつは「幸福の王子」、もうひとつは「鉛の兵隊」、最後のひとつが「人魚姫」です。「鉛の兵隊」は既にキューティーハニーFの聖羅のモチーフとして使いました。こんなことを書くと「次は人魚姫を題材に書くらしい」なんて勘ぐられるかも知れませんが、いまのところその予定はありません(笑)。

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