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【ステージタイムズNO.1】京都サンガF.C.強化部中山博貴氏の想い

京都サンガF.C.を愛して19年目を迎える今、内に秘める想いと
これからのこと。
現在は京都サンガF.C.強化部として活動される中山博貴(なかやまひろき)さんにお話を聞きました。(取材日2023年6月6日)
聞き手:株式会社ステージ毛利信之・秦野真歩
※このインタビューは2023年6月6日に行われたものです。

中山博貴氏経歴
1985年12月13日生まれ。鹿児島県出身
2001年 - 2003年  鹿児島城西高等学校
2004年 - 2015年  京都パープルサンガ/京都サンガF.C.
2015年 現役引退
現在京都サンガF.C.強化部スカウトを務める。

中山博貴氏

J2降格、J1昇格。たくさんの時を京都サンガF.C.と歩んできた中山博貴さんがセカンドキャリアを歩む今、思うこと。是非最後までご覧ください。


【中山博貴さんの現在のお仕事】

秦野
現在の中山さんはどういうお仕事をされていますでしょうか?

中山
強化部のスカウトとして、基本的には高校生と大学生の新卒選手の発掘、スカウト活動がメインの仕事です。あとトップチームの新人だけではない、編成のところにも関わっており、現場に近いところで強化の仕事をしています。

秦野
引退時の「SANGA TIMES」の特集を拝見させていただいたんですけど、その中で中山さんは今後も「サッカーとともに成長していきたい」っていうことをおっしゃってたと思います。今の仕事をされていく上で、大切にされていることは何でしょうか?

中山
僕も高校生のときにスカウトしていただいた方がいました。そして京都サンガF.C.っていうクラブにご縁をいただいてプロとなり、引退した後もフロントで仕事をやらせてもらってます。

僕が今スカウトの立場として大事にしてるのは、スタートしたばかりの選手が幸せになって欲しいということですね。

親のような気持ちではないですけど、自分がスカウトした選手には、本当に成功してもらいたいです。もちろんピッチで活躍するのが一番の目標ですけど、全てが良いときばかりではないので、そんな時のサポートも僕はしっかりやらないといけないと感じています。僕もスカウトしてくれた方にそうしていただきました。

毛利
それは入団するまでってことでしょうか?

中山
スカウトは入団するまでが仕事ですけど、「入団したからスカウトの仕事は終わりで、次はもう現場の人たちがやってください。」ではなく、入った後の方がより大事にしないといけない部分かなと思います。

選手に対して、どちらかというとポジティブなことを言って入団してもらうのですけど、完璧なことばかりではないので、駄目出しというか、厳しいことを言わないといけないときはあります。厳しいアプローチ、それは選手が良くなってもらうための指導ですね。まだ未成年の子だったり、大卒で言えば22歳とかで、これからプロのキャリアをスタートしていく上で、一番最初に甘やかされるんじゃなくて、厳しいことを言われながらも、それを乗り越えて一緒にやっていかないといけないっていう風に思ってます。

毛利
今の話を聞いてると、我々の人材紹介っていう仕事とも通じる話だなって思います。
転職希望者に対して、「とにかくこの会社いいですよ」っていう話もしつつ、入社に導きます。でも入ってからやっぱり活躍してくれないといけないので、アフターケアは大事にしています。入ったからおしまいっていうのはそもそも違うなと思ってるので、すごく共感しました。

中山
スカウトには二つのパターンがあります。即戦力の選手もいれば、高卒だったりユースから上がってくる選手は必ずしも即戦力ではなくて、2年後3年後に芽が出たらいいなっていうこともあります。
サッカーの部分だけを見て判断するのではなく、人間性であったり、性格だったりを見ます。
ピッチ外のところも重要ですね。監督さんであったり、コーチに実際話をさしてもらって確認します。練習来てもらった時に実際直接本人ともコミュニケーションを取ります。

それぞれ高校生や大学生同士の試合の中で見たパフォーマンスと、実際プロの立場で練習して、いいパフォーマンスが、本当にできるかどうかっていうのはジャッジして、最終オファーという流れです。
ピッチのパフォーマンスだけで勝負するというのは、その時はいいかもしれないですけど、長続きしないというか。

獲得した選手がみんな活躍してくれたらいいですけど、厳しい世界なのでなかなかそうはいかないです。たとえば大学生からA代表まで上り詰めて、今世界で活躍している選手を取ったスカウトの方にお話を聞くこともあります。
「実際大学の時どうだったんですか?」と聞いて、参考にさせて頂いています。「こんなに凄くなるとは思わなかった」っていう言葉がほとんどですけど。
どのタイミングで巡り会わせがあるかとか、いい指導者に出会えたとか、いろいろあると思うんですけど、やっぱり「誰よりも努力してた」とか「裏ですごい頑張ってた」とか、そういう選手がやっぱり成功してるんだなっていうのは感じることが多いです。

【選手の一日の過ごし方と海外移籍について】

中山
プロの世界に入ると、学生の頃とは違って授業がなくて、サッカー1本の生活です。たとえば午前中練習して、後はもう自分の時間なので。そこで何をやっていくかっていうのは本人次第です。海外で活躍したいという選手であれば、語学を勉強する時間にするとか、パーソナルのトレーニングをやったりだとか。そういう毎日の積み重ねで、何年後かにだいぶ差が開いてくると思います。さっきもクラブハウスでケアしてる選手がいましたけど、練習が昼12時ぐらいにはもう終わってるので、1回食事取って戻ってきて、夕方までやっている。自分が本当にサッカーのために24時間のうち何時間を使えるかっていうのはすごい大事なことだと思います。

毛利
なるほど。

中山
自分次第で何とでもなる部分だと思います。僕はもう少しちゃんと出来ていたらよかったなと自戒をこめて言う部分もあるんですけど。
僕らのときとは違って海外に行くチャンスが増えましたし、日本人の価値が上がっています。
今僕はスカウト活動してて、将来どうしていきたいのって聞いたら、みんな「海外に行きたい」って言います。海外に行くのが身近になり、環境が変わってきてるのかなと思います。

毛利
中山さんの現役時代の頃と比べて、何が一番変わったところですか?

中山
あんまり具体的には言えないですけど、移籍金とか契約のルールがだいぶ変わって、今移籍しやすい状況にはなっているので。昔は移籍金でも若い選手の方が移籍係数が高いというのがあったんで。
でも単純に日本人の価値が世界の中で変わってきてると思います。
まずは中田英寿さんという成功例があり、長友佑都選手がインテルに行ったり、香川真司選手がマンチェスター・ユナイテッドに行ったりとか。今の選手たちにとって海外が身近になったというか。漠然としたものがより自分も具体的に行けるんじゃないかっていう時代になってるので、みんな行きたいって言いますよね。

毛利
スカウトの中山さんの立場からしたら、一生懸命探してきて取ってきた選手が活躍してオファーがあり、「海外行きたい」っていうのは嬉しい反面、残念に思う気持ちはありませんか?昔であれば10年とかプレーしてくれたのにとか。

中山
それはないですね。
選手をスカウトして獲得する時は、10年京都でやってほしいとか、引退するまでやってほしいとかは言わないです。
それはもう現実的じゃないですね。実際10年契約を出すわけでもないですし。自分の目標に向かっていくための逆算として、「うちは成長するのにはいいと思うよ」っていう話はしますけど。

毛利
なるほど。

中山
「京都から世界へ」というような選手が出てきてくれたらそれはとても嬉しいし。

毛利
やっぱりサンガでいえば、最初の成功例は朴智星(パク・チソン)さんですかね。

(9月23日のサンフレッチェ広島戦に来場し、ファンを喜ばせた。)

中山
そうですね。僕は一緒にやってないですけど、すごい成功例だと思います。今一緒にやってた人はほぼいないと思いますが。

【真面目すぎる人間性】

毛利
最近のサンガのトップチームには、サンガアカデミーから上がってきた選手が沢山います。
私が思うのはちょっと真面目すぎる人が多いのかなって。
エゴイストすぎるとチームにフィットするのに難があるかもしれませんが、強烈なキャラの選手も何人かはいた方がよいのではと素人考えで思ったりするんですけど。
スカウトの立場で、目をつぶってると後で厄介になりそうな選手の特性って見極められますか?

中山
プロになる選手は何かしら武器があるから評価されて、それはスピードであったり、強さであったり、決定力であったり、守備力とか。性格で言っても癖の塊のような。めちゃくちゃ主張ができる選手たちがプロになってると思うんです。

先ほど言われたように、今のサンガですと若い選手が多いですし、まだそこまで自分を出せてない選手は確かに多いのかなっていうのを僕らは思っています。昔と簡単に比較はできないとは思うんですけど。

リーダーシップはもっと必要なのかなっていうのは思います。極端な例ですけど、闘莉王さんみたいな強烈な個性の人がいて、周りを締めれる選手がいた方がよいかもしれないですが….一概に何がいいとは言えないです。
でも、昔に比べたら本当真面目な選手多くなったと思うんですね。

毛利
なるほど。

中山
僕が若いときの先輩達は比べるとすごいやんちゃなところもあって。そういう時代だったのかもしれないですが。
プロサッカー選手として上に行くために、今の時間をどう扱って使ったらいいかっていうのを考えてやれる子は間違いなく昔より多いですね。

毛利
確かに。

【ハングリー精神について】

毛利
私の個人的な経験で恐縮なんですけど、昔仕事でイタリアに住んでた時が2年ぐらいあって、そのときにヨーロッパで色んなところにサッカーの試合を見に行ったんです。バイエルン・ミュンヘンのホームゲームを見に行って、その相手がボーフム。小野伸二選手が怪我で出ないというのが残念でしたが、バイエルンのメンバーが豪華で。
オリバー・カーンとかシュバインシュタイガーとかラームとかドイツ代表選手がゴロゴロいました。途中まで2-1でボーフムが勝ってたんですよ。さらにバイエルンは退場者も出して10人ってなったときに、突然息を吹き返したようになったんです。特にフランス代表のリベリーが今までだったらだらだら走っていたように見えたのが、すごい血相を変えて走り出して。「お前を殺すぞ」みたいな顔でプレーしだした時の迫力はとんでもないなと思って。結局逆転してバイエルンが勝ちました。すごい貧しい暮らしから這い上がってきたんだと取材記事で読んだんですけど、ああいう選手はなかなか日本の中では生まれづらいだろうなと思います。

中山
ブラジル人もそうですけど家族を養うために助っ人としてプレーする。日本人には考えられないハングリーさがあります。日本は恵まれた国ですが、「ハングリー精神」というのは日本人にも絶対必要な部分ではあります。

【中山さんのサッカーの始まり】

毛利
高校時代にスカウトされてプロになられたとお伺いしたんですけど、「プロになることはもう絶対だ」みたいに確信はいつ芽生えましたか?

中山
僕は幼稚園の頃からサッカーをやっていたのですが、小学校2年生のときにJリーグが開幕しました。親はサッカーをやらせたかったみたいですが、僕自身はどちらかというと野球をやりたくて。当時家の近くにいっぱい同級生の子供達が住んでいて、家から100mぐらいのところにでっかい運動場みたいな公園がありました。学校から家に帰ってきて、みんなそこに集まって自然と野球やったりサッカーやったり。

僕の小さい頃はまだ野球の方がすごい人気があって。Jリーグが出来てサッカー人口がすごい増えていった時代だと思うんですけど、僕は野球が好きでした。

四年生のときに六年生の試合に出させてもらうような感じになったんですが、グローブとかバットとか持っているわけじゃなくて。親はサッカーやらせたいので、サッカーボールは与えてくれたのですが(笑)

サッカーも試合に出れる環境になってくると、試合で点取って嬉しいというような感情が芽生えてきて。野球少年団に入ってるわけじゃないし、サッカーせざるを得ない環境になってきていました。

鹿児島では当時小学校高学年ぐらいで入れるサッカーチームがなくて、学校のスポーツ少年団に入るしかなかったんですよ。中学校に上がっても、中学校の部活に入るしかなくて。流れに沿っていくしかなかったんですよ。

ヤットさん(遠藤保仁)が通ってたのが桜島中学校ってところなんです。桜島中だけは選手を呼んで集める中学校だったんですが、強かったですね。ヤットさんは実家が桜島だったのですが、他の人は親も含めてその学区に引っ越したり。

僕のいた中学校は県大会も出られなかったですし、そんなに強い中学ではなかったです。

毛利
高校はどうでしたか?

中山
普通に頭いい人たちは、進学校の鶴丸だったりラサールとかありますけど、そっちはもう僕は関係がないので。
京都の公立みたいに近くの学区の高校にしか行けない制度が鹿児島にはないので、鹿児島実業か鹿児島城西に行くか、どこに行こうかなみたいな。

【スカウトの仕事について】

毛利
良い選手はどうやって発掘するのでしょう?

中山
指導者の方々との繋がりなどを活かしながら、ある程度事前に情報を得るようにはしています。昔とは違って、中学生とか高校生の試合がYouTubeに動画で上がっているので便利です。映像を見て実際見てみたいなと思ったら現地に向かいます。高校生だったら、卒業のタイミングでオファーに至らなくてもどの大学に行ったかっていう情報をちゃんと持つようにしています。

毛利
なるほど。

中山
今は高卒でオファーしても、大学行くってこと結構多いですよ。

毛利
それは、自分の意志ですかね?それとも親がとりあえず大学には行って欲しいというケースもあるのですか?

中山
両方あると思いますが、結構自分でしっかり考えている子が多い印象です。J2からオファーきたものの断って大学に行き、J1からのオファーが来るのを待つという子もいます。三笘薫選手も川崎フロンターレのトップに上がれたけれども上がらなかったですしね。

毛利
みんな将来設計がすごいしっかりしていますね。私こういう人材紹介業って仕事してますけど、結構行き当たりばったりで生きてきたので(笑)、感心してしまいます。

【このクラブでタイトルを取りたい。秘められた想い】

秦野
スクールコーチやアカデミーでの指導を経て、今スカウトとして活動されています。これから中山さんご自身がやってみたいことは何でしょうか?

中山
このクラブで現役を全うし、引退後はこのクラブに自分の力を何とか還元したいと思いました。引退して最初に強化をやりたいと伝えましたが、そのポストに空きはないっていうことで、まずは普及と育成を1年ずつしました。その後強化部スカウトの立場になったわけです。今トップチームに関わるところで成し遂げたいことは一つ。「このクラブでタイトルを取りたい」ということです。

そのために今の僕の立場で何ができるのかっていうと、このクラブでプレーしてもらう選手をどう獲得してくるかということ。現場が必要としてる選手だったり、「京都のためにやりたい」と言ってくれる選手をどれだけ集められるかというところであり、僕のやりがいになっています。

僕はピッチに立てませんが、スタッフや試合に出られない選手の思いを背負い、選手達がタイトルを取るために活躍してくれると願っています。

毛利
そうですよね。

中山
みんな平等なんですけど、どうしても自分が直接関わってきた選手に対しては思い入れが強くなってしまいます。今入団1年目の植田悠太に関しては、彼が中学一年生の時、僕はアカデミーに携わっていました。当時の彼はとてもわがままで、「もっとこうした方がいいんじゃないの」とアドバイスしても、第一声に「いや」とか出てくるタイプでしたね(笑)
今は中々トップチームで試合に出られずに苦しんでいますが、“即戦力”か “鍛えて使っていくのか”で言うと彼は後者なので、彼が何年後にどんな選手に化けるのか楽しみにしています。他にもユースから上がってきた選手たちも僕がアカデミーにいたときの選手もいるので、彼らに対しても、もちろん今後の成長や活躍を期待しています。


植田悠太選手

毛利
植田悠太選手はたまたまなんですけど、うちの会社のツイッターをフォローしてくれたんですよ。だから僕これはもう彼のユニフォームを買うしかないと思って、買ったんです!だからサインしてもらおうと思ってます(笑)彼を見ていると、すごい強気、なんか堂々としてるなって思います。

サンガのYouTubeだったか、誰かチームメートの選手が喋ってるのを聞いても、「あいつは先輩のことを先輩と思ってない」と言っていたり。いや、そんな批判するような言い方じゃなかったですよ(笑)まさに中山さんが中1で教えた時の印象と変わってないんでしょうね。

中山
僕はその1年しか関わってないし、その後はスカウトって立場もあってなかなか中学生の練習は見れないんです。高校生の練習はいつもサンガタウンでやってるので結構見行くんですけど、順調に成長してきた選手の1人ではあります。

【谷内田哲平選手と川﨑颯太選手と山田楓喜選手】

毛利
中山さんの立場ですと、アカデミーから上がってくる選手以外の人を基本的に外から引っ張ってくると思うんですけど、両者のバランスについて伺いたいです。

もちろん最終は強化部長とか監督の意向もあると思うのですが、アカデミー出身者か外部の人材かどっちか1人しか取れないとしたらどうしますか?

中山
チームとしては基本的に能力が同じなら高体連の選手よりも、アカデミー出身の選手を優先して獲得します。アカデミー出身の選手っていうのは、やっぱりサンガのエンブレムを小さいときから着けて過ごしており、クラブに強い想いがあるので、その部分も大切だと思っています。これは育成型クラブとかそういうのを抜きにしても大事なことだと思います。

毛利
なるほど。

中山
今の部長(安藤強化部長代理)や曹貴裁監督もアカデミーをすごく大事にしてくれています。曹監督はユースから上がってきた選手には「お前らがこのクラブを背負ってやっていかないといけないんだぞ!」というアプローチをしてくれる方なので、選手たちもその気持ちを強く持ってくれています。
僕は今の年代の子でいうと高体連でオファーした子は谷内田哲平選手1人しかいない。

毛利
そうなんですね。

中山
彼と同世代ではサンガのユースに川﨑颯太選手と山田楓喜選手がいました。彼ら3人のときで言うと一番最初に内定したのが、谷内田選手です。ユースの子たちは上げるか上げないかのジャッジを伝えるタイミングがそんなに早くないので。
プロ1年目は谷内田選手が一番多く出場しましたけど、川﨑選手が途中から少しずつ試合に出るようになりました。彼らの2年目は監督が曹さんに代わって、川﨑選手はフルで出るようになりました。

谷内田哲平選手

谷内田選手は苦労して夏に栃木SCに期限付き移籍し、1年半で経験を重ねました。

山田選手は1年目2年目はほとんど出てなくて、3年目の去年ようやく出場機会を掴んでU-23の代表に選んでもらってというステップを踏みました。
この3人が3人ともいろんなパターンで成長してるのかなっていうのがドラマっていうか。

毛利
最初に谷内田選手が内定もらって、トップででたけど、今度は川﨑選手が抜いてとかっていうのが面白いですね。

中山
山田選手はめちゃくちゃ悔しかったと思います。
でも彼らがそれぞれに伸びるタイミングが違ったと思います。そこまで全部計算をしてやってるわけじゃないですけど。

今でこそ川﨑選手はA代表にも呼ばれ“いい選手だ”ってみんな言いますけど、彼は高校の3年間は別にそこまで目立ってなくて、代表カテゴリーに呼んでもらえる選手ではなかった。どちらかというと山田選手の方が年代別の代表に呼ばれて、注目されていました。

毛利
なるほど。山田選手は悔しかったでしょうね。2年間トップチームでほとんど試合出れてない。

中山
そうですね。山田選手は悔しかったと思います。山田選手はある意味で周りを気にしない性格で、自分にちゃんと矢印をもっていきトレーニングをしていました。中野桂太選手(現徳島)と2人、いつも最後までシュート練習していたのが印象的です。

今もそうですけど、山田選手はメンバー入っても入らなくてもやることがブレないです。
「いつまでやってんの」ってくらいサッカー小僧なので(笑)その成果が去年やっと試合に出るようになって結果を出せた。それは自分の努力で掴んだものだと思います。

山田楓喜選手

毛利
谷内田選手のプレースタイルは、パスがうまかったり、テクニックが売りというのは、中山さんの現役時代を彷彿とさせます。

中山
いや、あいつのほうがうまいと思いますけど(笑)
高校サッカーの試合をスタンドから見ていると大体どの方向にパスを出すかがわかりますが、高校生の彼には2回騙されました。「そっちに出すのかよ」と驚かされた一方で、足は遅い、強度も足りないけど「こいつ面白いな」みたいな感覚になったのは覚えています。
今でこそ僕は「スピードが一番」って言いますけど、その当時は伸び代に期待してこういう選手でもどうかなって思ってました。大学生の即戦力の子っていうのは出来上がってる子が多いのですが、ユース卒も含め高校生年代は変化率・伸び幅はすごいので面白いですね。スカウトを6年やってみてそう思います。
あのときの帝京長岡高校って僕、谷内田選手がいたからずっと観てましたけど、高卒で2人プロ行って、大卒で今年また2人エスパルスと札幌に行くので、同年代から4人プロに行けたのでいい代ですよ。

【現代のサッカー選手に求められる能力】

毛利
スカウトとして当然チームがこういうのを求めてるってのはもちろんあると思うんですけど、中山さんがいいなって思う選手はテクニカルなタイプなのかそれとも全然違う基準があるのでしょうか?

中山
ポジションによって求められる能力は違いますが、一番はスピードだと思います。スピードはもちろん“走るスピード”もありますが、“頭の回転”や“判断のスピード”もあります。いろいろなところで“速い選手”じゃないと、今のサッカーでは残っていけない時代になってきています。技術があるのは当たり前で、加えて機動力が今のサッカーに必要なのは間違いないです。

今のことで言うと、谷内田は逆なんですよ。フィジカル的なスピードはないけど、頭の回転は速いので。サッカーIQというか。じゃあなんで試合に絡めない時期があったかっていうと、強度が足りない部分でしたね。そういう意味では、栃木SCで鍛えてもらい出場機会を得て克服できて、今はもう十分やれる選手になった。

少し前の選手だと元フランス代表のジダンですら、今の時代に求められるものとは違う。本当に守備しなくていい選手って、メッシくらい。そこまでいかない選手は、守備も頑張らないといけないし、動けないといけない。

曹監督のスタイル的にも攻守両方できないといけない。それは間違いないです。

毛利
すごく面白くなってきて、いろいろ聞いてしまいます。監督が曹さんに変わって、サッカーのスタイルが変わりました。前はもう少しボール保持を大事にするサッカーでした。

もしかしたら意地悪な質問かもしれないんですけど、たとえば高校時代から見ていた選手がいます。以前のサッカーの基準でいいなって思う選手がいたとしても、4年後に大学卒業した時点ではサンガの監督が変わって一気にサッカーが変わると評価も変わるのかなと。やっぱり求めるサッカーに応じて、中山さんの優先順位が変わるのでしょうか?

中山
そこまで変わらないですよね。本当に良い選手であればどのスタイルにも適用できると思いますし。ただこの選手がサンガに入ったらどういう風なプレーができるのかなっていうのは、想像します。基本的には1回練習に参加してもらって、どれぐらいのパフォーマンスを出せるのかというのは確かめます。プロと大学生・高校生じゃ強度が違うので。ただ、上手い選手が周りにいた方が生きる子もいます。

毛利
なるほど。

中山
僕1人では決めないので、練習参加で実際に見てもらって、合うか合わないのかっていうのは判断するようにはしてるので。いいと確信を持って推薦した選手は、基本的にはいいと思っています。もちろん、実際練習参加してみたらやっぱ合わないなとか、ちょっと力足りないとかはもちろんあります。でも自分の中でその確信が持てたタイミングじゃないと僕は呼ばないようにはしてるんです。

呼んでおきながら断る作業って、結構つらい部分ありますし。それもスカウトの方の性格や考え、あるいはクラブのやり方によると思います。

めちゃくちゃ呼ぶクラブもあるので。そんな呼んでどうするのかという疑問もありますよ…ただクラブの立ち位置によって、あんまり呼ばないで最後の最後に残った選手だけを狙うところもあれば、今オファーしても絶対来てもらえない選手とか。J1にこだわってる選手は、J2から昇格できなかったら結局無駄になっちゃうから。

毛利
なるほど。

【福田心之助選手】

毛利
今年のサンガの大卒の新人選手だと福田心之助選手はどのように入団されたのですか?

中山
例えば、明治大学出身の福田選手は、それまでチェックはしていたものの、札幌ユース出身で札幌がキャンプに呼んでいたので札幌に戻るだろうなっていう風に見ていました。しかし、彼が大学四年生の夏ごろになってどうやらほかのチームにも獲得のチャンスがありそうだということで何人かのスカウトが動き出しました。

福田心之助選手

毛利
なるほど。

中山
後に彼は関東大学リーグで活躍し、MVPも獲得しましたが、華やかな4年間を過ごしてきた選手ではなくて、実際3年生までは、ほぼ試合に出てないながらも地道にトレーニングを積んで成長してきた選手ですね。

タイミングって本当あるんですよね。これ余談ですけど自分がいいと思うので部長にちょっと見てくださいよって、頼んで見てもらったときに全然駄目だったよみたいとか、メンバー入ってないということすらありますし。タイミングとか、それがやっぱり運もあると思いますし。

毛利
なるほど。他のスカウトの方のインタビューを読んでいても、違う選手見に行ったけど、こっちが良くて目をつけたという話もありますしね。

【サンガの魅力とは】

秦野
選手たちをスカウトするときに伝える「サンガの魅力」は何ですか?

中山
一つ目は「選手が成長出来る環境」
曹監督のお陰で若い選手が鍛えられて、着実に育ってきています。監督だけじゃなく、コーチングスタッフも素晴らしいですし、育成できる、若い選手がチャレンジできる環境がサンガの強みです。

アカデミー出身の選手がトップの試合に多いときで6人出場してるって、ほとんどないじゃないですかね。広島さんだったり、鳥栖さんもそうですが、そんなに多くはないと思います。

先程僕は「サンガでタイトルを獲りたい」と話しましたけど、ゆくゆくは今の若い選手達が成長して、本気でタイトルを狙えるクラブにしていきたいです。まだまだ色々と改善が必要だと思いますけど。

二つ目は「サンガスタジアム」
僕が入ったときは、今のスタジアムを作る前段階で署名活動をした時代でした。いくつか候補地があって。僕もスタジアムが出来るまでここでやりたいなっていうのは20代後半ぐらいからずっと思ってましたが、やれないまま引退してしまいました。実際あのスタジアムが出来て、駅から近くて臨場感、やっぱり他のスタジアムと比較しても本当に素晴らしいスタジアムだと思います。

【リーグ戦6連敗、8戦勝利なしという状況について】

毛利
今チームが6連敗(取材時6月6日現在)って勝ててないじゃないですか、こういうときってやっぱ、外のファンもつらいですが、やっぱり選手も監督もチームはもっと大変だなと思うんですけど。
今中山さんはどんなことを思っていますか。

中山
(6連敗中は)全く心配していませんでした。やっていることがブレていたらとても心配ですが、曹監督はやることがはっきりしているので、選手、スタッフが同じ方向を向けていました。プレースタイルは明確で、連敗中も試合の内容は決して悪いとは言えないものでした。
僕の現役時代京都の監督だった大木武さん(現ロアッソ熊本監督)が大好きでしたけど、「勝っても負けても次」っていうのが、あの人の口癖でした。ブレない信念があるから。

勝つために何をしなければいけないという土台がある中で、何を上積みしていくのかというところを今アプローチしているところです。

繰り返しになりますが、僕の立場から見ても現状あんまり心配はしてないです。

毛利
チームが厳しい状況の中でどんな選手が必要でしょうか?

中山
やっぱりいい選手ってチームを勝たせられる選手だと思います。点取る奴も必要だし、止める奴も必要だし、もしかしたら陰で支えてる奴が必要かもしれない。

勿論リーダーシップを取る奴も必要だけど、ベンチの選手も大事。
5人交代枠で5人とも交代しちゃった後にも声出したり、一緒に戦える選手はやっぱり強いと思いますね。

チームのみんなが必要なのは間違いないです。
このインタビューの後に勝ってくれたらと思います。

(翌日の天皇杯・富山戦はPK戦までもつれた末に敗退したが、翌日曜日のAWAY新潟戦で勝利し、連敗脱出!)

サンガスタッフ
FootballLab.というJリーグのデータを集めたサイトがあります。攻撃の指標は全般的にはリーグ上位にいて決して悪くないんです。でも最後のシュート数とか得点っていうのはリーグ平均よりもちょっと下がる。その状況になって課題はもう見えてるんですよ。攻撃の形は全部できてるがフィニッシュのところですもんね。あとはセットプレーからの失点、クロスの失点が半数以上です。課題は明確です。

毛利
確かに、ホームのフロンターレ戦も最後取られちゃったけど、結構いい試合でしたよね。帰り電車の待ってたら、フロンターレのサポの方が「京都サンガは強かったな」みたいにおっしゃってて、本音の感じがあったんですよね。ああいうちょっとしたことで負けて、もし引き分けたりしたらまた違う状況になったのに…ということが重なっちゃってる気がします。

中山
もしかしたら引き分けでもいいから勝ち点1を取り切らないといけない試合があったかもしれないですけどね。ただ、軸がブレることがあってはいけないと思うし。勝てないから自陣に下がってブロック作って守って、カウンター1本で勝負するようなサッカースタイルに変え出したら終わりだと思います。

毛利
なるほど。そこはもうみんなの我慢ですね。

中山
去年だったら、本当に圧倒されて勝てない試合が広島戦とかありました。今年はなかなか勝ててないですけど、そういうわけではないので、今もどかしさはあります。みんなで乗り越えて、やっていくしかないです。やれると思います!

毛利
素晴らしい。

中山
ただスカウトっていう立場で言うと、6連敗中に「うちのチームにこいよ」とスカウトするのはなかなか厳しいです。「京都はJ1残留出来るのか?」という疑念も出てくるので。そういう意味では、木村勇大選手(現在ツエーゲン金沢に育成型期限移籍中)はJ2の時に決めてくれましたし、福田心之助選手もまだ最後プレーオフでJ1残留決まる前に決めてくれたのでありがたかったです。

毛利
すごい面白い話でした。今日はありがとうございます。
6連敗ですけど、明日も西京極行って天皇杯応援しますよ!

中山
そうですか。ありがとうございます。嬉しいです。

毛利
まずは何とか1勝しましょう!

(取材日2023年6月6日)
今回は京都サンガF.C.強化部中山博貴氏にお話を伺いました。
選手からスタッフへ。別の立場から京都サンガF.C.のタイトル獲得のために次のステージで日々戦う中山さんの熱い想いを聞かせていただきました。
また、アカデミーや大学卒業からプロの進路を選ぶ選手たちのそれぞれのお話も伺うことができました。
ステージは、これからもスポーツに関わる方々へのインタビューから、キャリアについて考えるきっかけを提供できるよう、活動して参ります。

今後ともよろしくお願いいたします!


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