見出し画像

アキ・カウリスマキと立ち食いおせち

日記が追いつかなくなったので、さかのぼります。

20180105


今日から一応の仕事はじめということで、8時くらいには起きて、しかし用事は午後からなので時間があった。仕事机につく気持ちになれず、ダイニングテーブルでぱらぱらとつまむようにして、目黒考二と椎名誠の対談集を読む。

「小説を書きませんか。私小説を」という依頼をされたのは昨年末のことで、それからというもの重力が変化したかのように、なにか浮足立つような時間の過ごし方をしている。その時から自分の読書体験、それも原体験に思いを馳せるようになった。

もっとも純粋に物語を楽しんでいたのは、確実の小学校低中学年の頃で、『十五少年漂流記』とか『海底2万マイル』とか「地底世界ペルシダーシリーズ」とかを読んでいた。本は基本的に買ってもらえる家庭だったが、図書館にもよく出かけた。ミヒャエル・エンデは読めるかぎり読んだ。『モモ』とか『ジム・ボタンの冒険』とかで、『はてしない物語』をは函入の豪華本で読んだ。豪華本なところが重要なのだ。

で、次にドトーの椎名誠フェーズがやってくる、ということをつい最近までぼくは忘れていた。これは恐らく母親の書棚から『岳物語』を引っ張り出したのがきっかけでスタートし、おそらく中学1年くらいまで彼の私小説を読んですごしたはずだ。だからいま「私小説を書きませんかね」と言われて、その初期作品を思い出したりしている。

14時から定例会議に出て、次の打ち合わせまで時間があったので、ユーロスペースでかかっているアキ・カウリスマキの『希望のかなた』を観た。シリア難民が逃れ逃れてやってきたフィンランドでの生活について。しみじみいい映画たったなあ。

シリアスな話題の中で展開される無表情でコミカルなシーンが印象的で、このテーマで劇場に笑いが起きる、というのがとてもよかった。よい映画というのはこういうもので、劇場がこういう雰囲気になったりする。それが好きだと感じ直すことができた。とはいえシリアスなのだがね。

いい気分で観終わって、20時からヒカリエで別の定例会議。終わり際、打ち合わせ場所の管理人の方から「よかったら日本酒あるんですけどー、飲みます?」とカウンターごしにいわれたので、いそいそとみんなでご相伴にあずかることにした。見てみると、日本酒だけでなくとてもきれいにつくられたおせちがある。

うずらの卵を茹でて酢で〆たもの、伊達巻、かまぼこ、栗きんとん、仏壇にそなえるくらいのちょこんとしたサイズのお赤飯まであった。ちょっとした立ち飲み屋みたいになったそこで、みんなでにこにこと飲んだ。普段は日本酒を飲まないが、一気に正月の華やいだ気分になる。ぼくはうずらの卵が気に入って、みなに見つからないうちに2つも食べた。

最後までありがとうございます。また読んでね。