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なぜピザはかわいいか、と星野監督のこと

ダラクとタイダをきわめようとデリバリーをしたピザとアプリのUX。なぜピザはかわいいか。ふいに目にした星野監督の記事のことなどが記述されました。写真は関係のない、前日に食べたネパールぎょうざです。

20180106

前日深夜に例のおかあさんのスナックに年賀の顔出しに出かけて、チョーシにのってウイスキーをがぶのみしたので、少し酒が残った感じで昼あたりに起きる。蒸留酒でここまで残るということは、けっこうな量を飲んでしまったのだなあ、こうなると予定変更だ。「いっそのことダラクとタイダをきわめてやるぞ!」と己の中の無頼漢がさけんだので、とりあえずドミノ・ピザをデリバリーする。コーラとチキンつけた。どうだまいったか、という気分で。

ドミノ・ピザのアプリケーションはおもしろくて、配達員の現在地まで見ることができる。その配達員は、中日ドラゴンズファンらしい。そういった情報も見れるので、待っている間もなんだかにこにこと過ごせる。だいたいピザをデリバリーしようなんていうときは、矮小ながら緊急を要するような事態に見舞われているのだ。あとどれくらいになるのか、気になる。これはグッドUXだなあと思いながら、待つ。

ものの20分強でドラゴンズファンがぼくのピザをもってきてくださった。ありがたいことだ。こんな寒空に。出前的なものを頼むと、いつも敬語をつかって敬いたくなる。ぼくが中年のおばさんだったら、缶コーヒーのひとつでも渡すだろう。というか、そのために缶コーヒーを買い置きし、あらかじめあたためておくだろう。ん、だけど缶コーヒーってどうやってあっためるのだ、お燗?とか考えながら、ダイニングテーブルにピザボックスをすとんと置いた。

ピザボックスをあけるたびに、いつも目の前にあるピザが想像よりチープであることに少しがっかりしつつ、なぜか「かわいい」と思う。なんでピザが「かわいい」のかと考え、サラミが赤くて丸いからかと思う。幼児がアンパンマンを好きになる理由と同じかもしれない。赤くてまるいは、「かわいい」のだ。

あおちゃんがまさしくそうだったし、おそらくぼくもそうだったろうと姪っ子とぼくの数少ない共通体験のことを思った。さらにそこからもう一段階考えを昇華させてもよかったのだが、意識は貧相でもいいにおいを立てているピザに向いてしまった。ピザのかわいさについての普遍性はとうとう獲得されずじまいだった。冷めてしまっては元も子もないからね。グリーン色のタバスコを一切れごとにぱしゃぱしゃやって、食べはじめる。

ガーリックを追加トッピングした薄い地のペパロニのピザ。それをつまみながら、星野仙一が亡くなったという記事を偶然に読んだ。ぼくにとって彼はドラゴンズの監督としての記憶しかなく、かつ自分の年からしてそれは1995年からの第二次星野時代のことだ。

じゃあなんでそれ以前のセーネン監督といった趣きの時代の姿を知っているかといえば、これは「プロ野球珍プレー・好プレー」の影響だろうということが思い出された。テレビをつけると、原監督が成績不振で退任になった2003年に行われた、甲子園での異例の退任セレモニーの様子が流れていた。

花束を贈呈する星野さんが原さんの肩をがっしりと抱き顔を近づけ「くじけるな。もう一度、勉強して戻ってこい」と話していた。その映像を見ていると、胸の奥底がカーっと熱くなり、いてもたってもいられなくなった。涙が自然とこぼれ、そのこぼれる直前には視界が水中に入った時のようにじんわりとしてくるわけで、あ、これは泣くやつだということはとうに推察できていたが、ぼくはその涙を流れるままにしていたし、そうすべきだと感じていた。室温が低かったのか、涙は体温よりあたたかく感じられた。声を出してはいないが、感覚的には完全に嗚咽をもらしていた。感情の奥底にある重要かつめんどうな部分に、その映像とエピソードが深くつきささってしまったようだった。なんだか泣いてばかりいる正月休みだ。

本当は板橋区民美術館でやっていたインドの版元・タラブックスの展示に行きたかったのだが、ダラクとタイダをきわめることにしたので外出は失敗。しかも泣いているわけだし、と思って気を取り直してピザと一緒に全日本ラグビー選手権をテレビで見る。昔から「観戦スポーツの中ではラグビーが一番すきだ!」といたるところで話しているのだが、今回もそれを再確認した。うきうき観ていたら妻が「ラグビー忘れちゃったからわかんない」という。昨年ルールをさんざん説明して、一緒に秩父宮に行ったのに…とジト目になってすごす。


すると夜になり、ジト目が急にバチバチになって脳がスパーク。こうなってしまうと眠れない上、本を読んだり何かに集中することが不可能になるので、仕事机についてひたすらテキストエディタに向かい合う。この時点で明日の早朝からの約束はかなわないだろうなあ、と今度は遠い目をしてすごした。

最後までありがとうございます。また読んでね。