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太平洋戦争中に戦地に赴いた祖父を傷付けてしまったこと

小学校低学年の二年間、担任だった先生は戦争体験者で、よく東京大空襲の体験談を話してくれた。

その話は子供心にとても恐ろしく、実際に体験していないにも関わらず、大人になった今でも時々リアルな夢を見る。

空襲警報が鳴り響き、焼夷弾が雨あられと降って来て、燃え盛る炎の中を逃げまどい、熱くて堪らず、三月のまだ冷たい隅田川に飛び込む…。

そこで、目が醒める。

そんな貴重な話(今にして思えば)をしてくれた先生が、おじいちゃん、おばあちゃんがいる人は夏休みに戦争の話を聞いて、作文を書いてくるよう宿題を出した。

いない人は戦争に関係のある本を読んで感想文を書いてくるように、と。

私には今は亡き母方の祖父がいたので、夏休みに遊びに行った折、

「おじいちゃん、戦争の話をして!」

とせがんだ。

すると、祖父はなんとも言えない表情を浮かべた後、

「戦争の話はいいよ…」

と、うつむいてしまった。

(おじいちゃんは、戦争の話はキライなんだな…)

と悟り、その話はそれきりにした。

夏休みの宿題なのだということも、言えなくなってしまった。

祖父が兵隊にとられて戦地に赴いたことは、母もだいぶ大人になってから知ったそうだ。

祖父から戦争の話を聞いたことは、一度たりともなかったと。

きっと戦地で思い出したくない、口にも出したくない、出せないようなむごい経験をしたのだろうと思う。

子供だったからとはいえ、宿題だったからとはいえ、祖父を傷付けてしまったことは、今でも後悔している。

そんな風に、人の心さえ蝕むような戦争は、二度と繰り返してはならないと強く思う。

終戦から、77年を迎える。

77年間、戦争をしてこなかった日本という国を、私は誇りに思う。

今もこれから先も、誇っていたいと思う。

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