後悔

生後何ヶ月だろうか、顔が荒れた赤ちゃんを連れて若い母親が皮膚科に来ていた。どうやら初診らしい、受付に呼ばれる。症状を伝えている。背中にはリュック、前には赤ちゃん。とても重そうだ。泣かないように赤ちゃんをあやしながら見守っている。若いママさん。小柄でとても可愛らしい。

肩に何キロも力がかかる経験、みなさんはあるだろうか?私はある。特に高校時代、家と学校が離れていたことから毎日重い荷物を持って通学していた。あまりにも重いことから何キロなのか気になることもあり、体重計に荷物を乗せてみると10キロなんてこともざらにあった。今も大変そうな声を漏らしながら問診票に書いている。

段々気が遠くなってくる経験から私は無視できず、席を立つ。ただでさえ毎日の思いを考えると大変なのに、外に出た時も変わらない。赤ちゃんを気にしなければならないのである。

しかし、人間とは愚かである。私が席を立った瞬間、その隙に別の人が座ったのである。座っている様子をチラと見たが、スマホをぽちぽちいじっている。

みんな知らん顔をしている。テレビを見たり、新聞を見たり、スマホを見たり…目には入っていると思うが、譲るそぶりもないのである。なんて愚かなのだ。人間は。自分のことしか気にならないのか。

だが、私にも悪いところはある。母親が受付から戻るタイミングで席を立てば良かったのである。

「ここ、どうぞ」

そんな感じで、言えばよかった。

タイミングが難しいと思いつつ、次こそは譲って気持ちを楽にしたいと思った瞬間だった。

こんな思いに共感できる人がいればいいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?