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退院請求や処遇改善請求が意味のあるものになるために

入院している人と家族(の一部)は退院請求や処遇改善請求をすることができる。

自分の状態について不服申し立てをする権利を持っている、ということは重要である。

しかし現実的に意味のある制度にするのは難しい。

現在のチェック機能は実質的に機能していない

医療保護入院の入院届、医療保護入院・措置入院の定期病状報告書は、一部 再提出を求めることがあるものの、基本的に全例で承認となる。

医療保護入院 入院届 9,788件 承認100%
医療保護 定期病状報告書 5,419件 承認100%
措置入院 定期病状報告書 54件 承認100%

埼玉県 精神医療審査会 令和2年

また退院請求や処遇改善請求もほとんどの場合 却下になる。

退院請求105件中、現在の形態を継続104(99%)、入院形態変更が必要1(1%)

埼玉県 精神医療審査会 令和2年

作業自体は無意味とは言わないものの作業自体を見直す必要がある。

現在 事務局がある程度のチェックはしているものの、基本的にすべての書類を、精神保健指定医 3人、精神保健福祉士など 1人、弁護士など 1人の5人の専門家が集まりチェックする。

退院請求や処遇改善審査は精神保健指定医1人が本人を診察に行きその結果を踏まえて上記5人の専門家が集まり合議する。

そこまでする必要があるのが疑問である。

退院請求をするほとんどの人は、先日も興奮し暴れて保護室に入った人、妄想のため近所に大迷惑をかけ入院したものの「退院して『隣に嫌がらせをしないでくれ』と言いに行く」という人など、世の中の大多数の人がちょっと見ただけで「まだ退院は無理でしょう」ということが分かる人たちである。

ほとんどの人は精神保健指定医が病院まで診察に行き、1時間近くかけて診察や情報収集を行い、5人の専門家が集まり合議する必要性を全く感じない。

また入院届や定期病状報告書などは、書類上の不備や、書類上の記載と入院の必要性の不一致などはある程度のトレーニングを受けた人であれば判断可能である。

近い将来AIで十分であろう(今でも十分可能なレベルである)。

書類上の記載が嘘を書かれてある可能性は無いとは言えないものの、嘘が書かれている場合には専門家が書類を一生懸命見ても見抜くことはまずできない。

現実的な方向性

個人的になって欲しいと思う状況は、
・ある程度のトレーニングを受けた人が、本人に実際に会い、現在の状態の継続で問題ないことを確認する。
・自分だけでは判断が難しく、専門家が審査した方が良いと考えたときにのみ、精神保健指定医などが実際に診察をする。
という手順を踏むのが、もっとも効率的で現実的で本人のためにもなる。

精神保健指定医の義務と我慢しながら、審査会に参加していたものの、意味がほとんどない仕事が多く非常にストレスだった。

退院請求をした人の話をしっかりじっくりと聞いて、その上で入院が必要であることを理解できるように説得を繰り返す医師も存在するものの、その仕事は主治医たち医療機関であり、審査会は法的な視点から判断する機関であるべきである。

「審査会の医師はじっくり真面目に聞いてくれたけれど、主治医はまともに聞いてくれない」という思いを抱かせることは、主治医に対する不信感を増やすだけで治療的にプラスになることはない。

「否定しているけれど、入院前はこんなことをしたんでしょう?」

「もう大丈夫というけれど、薬のことも主治医のことも信頼していないでしょう?」

「家族にも相変わらず面会中に怒鳴ったりしているでしょう?」

「そんな状態で退院できると思っているの?」

そういうことを淡々と伝えるのが審査会の仕事だと思っているが、審査会で少数派である。

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