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精神医療審査会と不当な入院が起きるとき

精神医療審査会というものがある

参照:東京都精神医療審査会

簡単に言えば、強制入院が妥当か判断し、退院などの請求を審査するところである。

実際の業務は、大量の書類をチェックすることが中心で、たまに退院などを希望する人の診察をする。

人権を守るという趣旨は良いものの、いろいろな課題がある制度である。

参照:精神医療審査会制度の現状と課題 平田豊明

上記のリンクと被ることも多いものの、実際に委員として関わった中で、個人的に気になった点を列挙してみたい。

書類が大量過ぎで十分にチェックできない

マンパワー不足もあるものの、大量の書類を見て入院が妥当か判断する必要がある。

ある程度適切に審査しているものの、「詳細に慎重に審査した」とは正直言い難い。

入院に関する書類は入院させた医師の意見のみ

入院が妥当か審査するという趣旨ながら、審査するときの資料は、入院させた医師が作成した書類のみのため、当然ながら入院が必要な状態となっている。

言うなれば、裁判を検事の話だけを聞いて判決を出す状態で、完全な”出来レース”である。

もちろん入院が納得できず、病気の理解がその時点では無く、入院前後の記憶も曖昧な本人からの情報を見ても判断材料として不十分であるため、家族からの情報、周囲からの情報も提出するようにしないと公正にならないように思える。

しかし逮捕状や捜査令状は検察官や警察官からの要求だけで、本人や関係者の主張は聞かずに裁判所は認めるので法治国家の手続きとしては十分なのかもしれない。

医師の作成する書類は時々かなりいい加減

これは医師の性格や資質が影響する。

非常にしっかりした書類から、極めていい加減な書類まで差が大きい。

症状のチェック欄にチェックがあるのみで、症状の具体的な記載はほとんど無いこともある。

そういった時には入院の必要性について、情報不足で判断できず補足説明を求めざるを得ない。

もちろん補足説明がなされたときには、強制的な入院については全く問題がないことがほとんどである。

書類では不当な入院は防げない

私はしばらく審査会の委員をしていたものの、かなり面倒な作業なうえに、無意味な作業で嫌になった。

忙しく病院での仕事が終わらない中、委員会の会場まで片道1時間以上かけて行き、書類チェックして終了という仕事内容のつまらなさ以上に、書類では不当な入院は全く防げないからである。

病院の経営者ではない医師にとって強制入院は、本人からしばらく暴言を吐かれ、忙しくなるも給料は変わらないため、意味も無く入院をさせることはしない。

入院が必要ない人を強制的に入院させても自分のメリットにならない。

そんな無駄なことに時間を費やす暇もない。

不条理な強制入院が起こり得るとすれば、1)ベットを埋めたいと考える経営者が不必要な人を入院させる、2)主治医が家族にだまされて不必要な人を入院させる、ときである。

これら2つの場合、今のやり方では入院が不当であることを見出すのは困難である。

入院させた医師が作成した書類のみを見て、入院が妥当かを判断するという作業は無意味である。

そして歴史的にも問題を起こす病院は不備のない書類を「作文」する。

個人的に強制的な入院は以下のように行われるべきだと思っている。

・複数の医師の判断、家族からの情報、周囲の人からの情報をもとに、強制的な入院は裁判所の指示にて行われ、入院後速やかに第三者が本人に直接面接し本当に入院が妥当かを評価する。

・退院もまた主治医の判断と、家族や周囲の人からの情報を踏まえて、裁判所の指示にて行われる。

・食費や身の回りの費用以外は公費で行われる

このシステムを作ることで不当な入院はほとんどなくなる。

制度が適切に変わっていくことを熱望しており、制度が変わらない限り再度 審査委員になることはないと思っている。


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