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SCAP法による多剤併用大量投与の改善

抗精神病薬を減量するときに比較的安全と考えられている方法がある。

SCAP法 国立精神神経医療研究センター


SCAP法の注意点

先に注意点を説明しておく。

1.安全性が確認されたのは限られた範囲である

安全性を確認したのは、抗精神病薬2剤以上、CP換算値500-1500mgを服用中の人を対象に3-6か月かけてCP換算量20%を減らすという点だけである。

CP換算で1500mgを超えた人 や 20%以上の減量の減量に関しては慎重に行う必要がある。


2.減量することの意義は明確ではない

減量のプロトコールを守って行った80人中3人は精神症状悪化で中断している。減量した77人において精神症状、錐体外路系副作用、自律神経系副作用ともに改善も悪化も認めなかった。

これは重要な点である。

安全に減量することができる方法という点だけが強調されてはいけない。減量することは重要ながら、減量することで再燃・再発した人がいる、減量することで短期的には何も変わらない、という事実は重要である。

つまり短期的な視点では減量する意義がないということである。これらのリスクとベネフィットを理解したうえで、減量するかどうかを決める必要がある。

再燃・再発して苦しい思いをする3人。数としては少ないかもしれないが、目の前にする医師、目の前にする家族、そして本人は苦しい。


SCAP法

【減量スピード】

1週間に1回 高力価50mg、低力価25mgずつ減量(2週間に1回の場合は 2倍にしても可)。

様子を見て減らさなくても可。1か月に1回程度でも良い。

2週間に1回でリスペリドン1mg, アリピプラゾール4mg(→錠剤で3mg)、クエチアピン33mg(→25mg)、オランザピン2.5mg など。


【薬の選択】 

CP換算量の少ないもの あるいは 低力価を優先。

ただし効果のあると思われる薬は残す。


【減量の目安】

CP換算量20%減量。その後3か月は様子を見る。


具体例 リスペリドン8mg+クエチアピン600mg

1週間に1回 クエチアピン12.5mg あるいは リスペリドン0.5mgずつ減量することになる。

結構難しい。

リスペリドンは3mg錠 2錠+2mg錠 1錠の合計3錠服用しているのが、3mg錠 2錠+1mg錠 1錠+0.5mg錠 1錠の合計4錠と、服用する錠数が増えてしまう。

クエチアピンは12.5mg錠が存在するものの、置いている薬局は少なく25mg錠を半錠にすることが多く、さらに煩雑となる。200mg錠 3錠服用が、200mg錠 2錠+100mg錠 1錠+25mg錠 3.5錠となり、かなり大変な状態になる。2週間に1回にするともう少し楽になるものの、いずれにしても薬局の協力が不可欠となる。


本人と家族だけで主治医に伝えず減量をすることについては、私は賛成しない。まずはこういった減量方法があることを医師や本人や家族は広く知るべきだと思う。この方法を積極的に活用し、多剤併用、大量使用が少しでも改善していくように目指していくべきだである。

具体的に主治医に相談するときには、権威に弱そうな主治医には「SCAP法という減量法があるみたいですが 可能そうでしょうか?」と聞いてみるのが良いが、プライドがやたら高い主治医には「半粒ずつでいいのでゆっくり減らすことはできませんか?」と聞いてみるのが良い。



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