見出し画像

【行政書士試験FIRST STEP】行政不服審査法の全体像を把握しよう! 執行停止編①

 皆さま、お疲れ様です。
 土日はロードバイクで近所を疾走している系行政書士の鈴木です。

 どうせならお金になればいいなという思いから、フードデリバリーを始めました。今、めちゃめちゃに筋肉痛です。

 さて、今回は行政不服審査法の全体像を把握する3回目ということで、今後避けては通れない執行停止について解説していきたいと思います。


執行停止ってなんなのさ?

 行政書士試験において、避けることができない執行停止制度。行政不服審査法だけでなく、行政事件訴訟法にも同様の制度が登場し、それぞれに微妙な違いがあって混乱しますよね。

 じゃあ、しっかり勉強しようということで、参考書なんて読んでいると、一番最初に執行不停止の原則なんて言葉が出てきて、停止なんだか、不停止なんだか訳が分からなくなりませんか?

 私は分からなくなりました(笑)
 止めたいのか、止めたくないのかどっちなんだい!?

 ではどうすればいいのか。

 はい、いつものようにこの制度が何のためにあるのか、なぜ必要なのかの背景や大枠について理解していきましょう。

執行停止の条文を読んでみよう!

 例のごとく、行政不服審査法の執行停止に関する条文を読んでみましょう。

第二十五条 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない

 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。

 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない

 前二項の規定による審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。

 審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

 第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない

 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員から第四十条に規定する執行停止をすべき旨の意見書が提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。

行政不服審査法25条

 ……いかがでしょうか。一応、私の無駄に長い受験生時代の経験を基に重要だと思われる部分については太字にしておきました。

 さて、その上でこの条文を初めて読んだ皆様。
 私には皆様方がおっしゃりたいことが手に取るようにわかります。

 なに言ってんだお前?

 ですね?
 私もそうでした。

 法律条文は英語の文章と同じです。
 意味を理解するためには、我々が普段使っている言葉に翻訳する必要があるのです。

 では、今から一つ一つ翻訳していきましょう。

執行不停止の原則→審査請求して一安心……ではない!!

 一項から見ていきましょう。一項が記しているのは執行不停止の原則についてです。

 行政書士事務所を営んでいるAさん。
 ある日、行政庁から営業停止処分を受けました。理由は、個人情報の不当な扱いがあったとのことです。
 しかし、Aさんにはそんなことをした心当たりが全くありません。
 Aさんはそんな事実は無いとして、行政庁に不服申立を行いました。

 ではここで質問です。
 結局、不服申立をしたAさんはこのまま営業していいのでしょうか?

 答えは営業してはいけません。

 営業停止処分を受ける事実が存在していないのに営業してはいけないの? と疑問に思う方もいると思います。しかしながら、原則として行政が出した処分は余程のことが無い限り(ここ重要!)止まることはありません。

 行政が「ちょっと待って!」と言って止まってくれるのであれば、誰も処分を恐れることが無いからです。

 行政庁の処分や、処分に関する手続は、不服申立を行ったところで止まることは無い。これを執行不停止の原則と言います。

執行停止ってなんのためにあるの?

 行政庁の処分は不服申立を行ったところで止まることは無い……と言われましても、止まってくれなきゃ困ることっていうのは多々あると思います。

 飲食店で営業停止処分を受けてしまえば、その期間中は営業できなくなってしまいます。

 例えば、飲食店を営んでいるBさんが営業停止処分を受けたとします。
 下の画像をご覧ください。

執行停止

 なんか怪しいから(実際はそんなことはありませんが)営業停止処分を受けてしまったBさん。不服申立を行った結果、無事処分は取り消されることになりました。よかった、よかった。

 本当にそれだけで済むと思っていますか?

 営業処分を受けたことによって、Bさんが受けた被害は

  • 本来であれば営業できた期間に得られるはずだった収入

  • 不服申立の手続きに掛けた時間

  • 営業停止処分を受けたことによって離れていったお客さん達

 この他にもまだまだあるでしょう。

 間違いだったわー、ごめん!

 で済むと思いますか?

 せめて調べている間、営業させてもらえていたのなら被害は最小限に済んだのに……そうは思わないでしょうか。

 はい、そこで出てくるのが執行停止です。  

執行停止とは行政処分に待った! する制度

 営業停止処分に待ったをかけて、一応は営業できるようにする。
 立ち退き命令に待ったをかけて、手続きが終わるまでそこに住んでもいいようにする。

 執行停止とは、今まさに自分に降りかかってくるであろう行政処分に対して待ったをかける制度であるとイメージしましょう。

 内容としましては

1.処分の効力の停止→営業停止処分の効力の停止→営業できるように
2.処分の執行の停止→行動に移すのを保留にしておいてくれる
3.手続きの続行の全部又は一部の停止→手続きを途中で止める
4.その他の措置→別の方法に切り替える

 以上4種類があります。上から順に効力が強くなっていきます。特に1の処分の効力の停止は最も強い効力なので、処分の効力の停止以外で、目的を達成できるときは使えません。

 風邪をひいている人に風邪薬を処方するだけでいいはずなのに、全身麻酔して8時間の大手術で臓器を全て取り換える。

 なんてことはしなくてもいいということです(逆に分かりづらいかもしれませんが……)

 しかし、前述した通り、行政処分は処分不停止の原則があります。

 原則を覆すためには当然のことながら、高いハードルを超える必要があります。

 次回は執行停止の流れについて解説していきます。
 次回もお楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?