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【行政書士試験FIRST STEP】行政不服審査法の全体像を把握しよう! ①

 これから行政書士試験に挑戦しようと考えている皆様に問いたい。

 行政不服審査法って難しくないですか?

 皆さまお疲れ様です。Stand up行政書士事務所の鈴木です。

 さて、今回は行政手続法に引き続き、行政不服審査法の全体像について把握していきましょう。


行政不服審査法とは?

 まずはこちらの図をご覧ください。

行政不服審査法とは?

 行政不服審査法とはざっくり言ってしまうと行政庁が起こした問題を行政庁が解決するためのルールをまとめた法律を指します。

 行政庁が行った処分及び何もしなかった=不作為によって被害を受けた国民が「なんとかしてよ!」と行政庁に文句を言うことにより、同じ仲間である行政庁が問題解決に向かって動く、ということが行政不服審査法が記す全体的な流れです。

 国民が仮に「なんとかしてよ!」と裁判所に文句を言うことになれば、それは行政事件訴訟法というルールに従って進んでいきます。

 今はなんとなくで構いませんので、行政不服審査法と行政事件訴訟法は「文句を言いに行くところが違うんだな」と思っておきましょう。

行政不服審査法の目的条文を読んでいきましょう

 行政手続法に引き続き、行政不服審査法も目的条文が重要です。

第一条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

行政不服審査法第1条1項

 行政不服審査法は行政庁が違法な活動や、不当(法律違反ではないけど「そりゃないよ!」っていうもの)な活動に関しては行政庁に対して文句を言うことができるというものです。

 行政手続法は行政庁が「おかしな活動をしないようにする」という目的のための法律でした。つまり事前救済です。

 一方で行政不服審査法は行政庁が「おかしな活動をした結果生じた損害」を救済するための法律、つまり事後救済のための法律なのです。

簡易迅速とは?

 目的条文の中には、この法律を「国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度」と規定しています。簡易迅速な手続きとはどういう意味でしょうか。

 もう一度先ほどの画像を出してみます。

 行政不服審査法は繰り返しになりますが、行政庁が起こした問題を行政庁が解決するためのルールです。

 裁判所が問題解決に向けて動く行政事件訴訟法と比較すると、勝手を知っている行政庁が動くわけですから「簡単な手続き」かつ「迅速な対応」が実現できるのではないかと思いませんか?

 裁判所で行う場合は

 「あなたは何に困っているの? どういう状況なの? 結局あなたはどうして欲しいの?」

 なんてことを1から説明しなければなりませんが、行政庁の場合は

 「ああ、あの手続きでこういうことが起こっているのね、じゃああなたはこうして欲しいわけだ」

 という様に話がとんとん拍子に進んでいくであろうというイメージです。

 一方で目的条文には「公正な手続き」とも謳っておりますが、仲間が起こした問題を仲間が解決に向けて動くということは真の意味で公正な判断がされているかと言われると……なんとも明言を避けたい感じになりますね(笑)

 「すぐに問題解決して欲しい」と思う時には行政不服審査法の手続きを、「しっかりと審議して欲しい」という時は行政事件訴訟法の手続きを利用するというのが一般的な考え方のようです。

不作為ってなんだ?

 行政不服審査法は行政庁の処分又は不作為についての不服申立てに関する法律です。行政手続法を通ってきた皆さんであれば処分についてはなんとなくイメージできると思います。

 行政手続法では処分は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定義していました。行政庁が特定の国民に対して「なにかした」から生じた問題について不服申立てができるよ、ということです。

 では不作為とはなんでしょうか?

 不作為とはざっくり言ってしまえば「何もしてくれない」ということです。
 
 例を挙げてみましょう。

 飲食店を出店したいAさんは、行政庁に対して飲食店の営業許可申請をしました。

 「飲食店をやりたいから許可してください!」

 と行政庁にお伺いを立てるわけです。

 しかし、申請を受けた行政庁が待てど暮らせど許可を下ろしてくれません。行政庁に何度確認をとっても答えをはぐらかされてしまいます。

 本当は今月中にオープンする予定だったのに!!

 この状態が不作為という状態です。
 本来であれば何かしてくれなきゃいけない状況なのに放っておかれている。こんなの納得がいかない! だから行政庁に対して不服申立てをするわけですね。

 行政庁が何かしたから発生した問題行政庁が何もしてくれなかったから発生した問題、両方に対応するのが行政不服審査法というわけです。

3種類の不服申立て手続き

 不服申立てには3種類あります。大体の不服申し立てについては審査請求で行われますが、例外として他の法律に定められている場合のみ、再調査請求再審査請求ができることになっています。それぞれ性格が違いますので一つ一つ見ていきましょう。

1.審査請求→なんとかしてくださいよ!

 行政庁の処分または不作為について行政庁が審査し、解決に向けて動く請求のことです。通常の不服申立てはこちらに該当します。
 「(行政庁に)何とかしてくださいよ!」と申し出るイメージです。

2.再調査請求→もう1回調べてくださいよ!

 再調査請求は行政庁の処分に対して納得がいかない場合、再度調査をお願いすることです。特徴的なのは、処分を行った行政庁自身が対応するということです。

 具体例としては国税に関する処分です。

 「税務調査の結果、あなたはこれだけの税金を納めてください」
 「いや、この税務調査の結果おかしいですよ、もう1回調べてくださいよ!」

 となった場合、税金に詳しくない別の行政庁が審査をするよりも、税金に詳しい処分庁が審査をする方が話は早いですよね。

 再調査請求はそういった側面からどんな場面でも請求できるわけではなく、個別に法律で定められている場合のみ行うことができます。

3.再審査請求→その結果、納得いかないのでもう1回審査してくださいよ!

 再審査請求とは審査請求を行い、その結果にも不服がある場合に行う請求です。

 「その処分おかしい! 何とかしてくれよ!」
 「調べてみた結果、なにもおかしくありません」
 「なんだそれ! 納得いかないぞ!」→再審査請求!

 具体例については生活保護の申請があります。
 市町村長が行った保護の決定について不服がある者は、都道府県知事に対して審査請求ができることと定められています。
 再調査請求と同様、再審査請求も個別に法律で定められている場合のみ行うことができます。

 再審査請求の重要なことは「誰に対してできるか」「何を対象にできるか」の2点です。

 誰に対してできるかは、法律に定められた行政庁に対してできます。
 「この決定に文句がある人の窓口はこちらまで!」というように受付窓口があらかじめ決められているわけです。

 何を対象にできるかは、この場合「行政庁の処分に対して」なのか「審査請求をした結果=原裁決」なのかを選択できます。

不服申立適格ってなんなのさ?

 そもそも不服申立てができる人とはどのような人を言うのでしょうか

 ざっくり言ってしまえば「行政庁の処分or不作為によって被害を受けた人」です。では、次のような例にツッコミを入れてみましょう。

1. Aさんが行政庁から処分を受けた。それを聞いたAさんの親友Bさんが行政庁に不服申立てを行った。
→お前、誰だよ!

2. Aさんは行政庁から処分を受けた。Aさんは自分がやってしまったことだし、仕方のないことだと思った。5年後のある日、Aさんはこの処分に突然怒りが沸き起こり、不服申立てを行った。
→今更何言ってんだよ!

3. Aさんは行政庁に許可申請をした。しかし、申請をしてから半年間何の音沙汰も無かったので確認を取ったが、どうも反応が悪い。そこでAさんは不服申立ての準備に取り掛かっていたが、その準備中に許可が下りた。しかし、どうにも怒りが収まらないAさんはそのまま不服申立てを行った。
→許可下りたんだからいいじゃねーか!

 ……はい、というように行政に不服申立てを行うにも資格があり、これを「不服申立適格」と呼びます。

 今回は大枠を捉える解説なので詳しくは紹介しませんが、それぞれ

1.Bさん自身が不服申立てをすることでなにか得があるのか
2.Aさんは処分があってから5年放置していた→その処分を受け入れていた
3.不作為の状態が終了した。

 というような問題があり、不服申立適格が無いと判断されるわけです。
 不服申立適格が無い者が不服申立てを行えばどうなるか、それは当然、門前払い(これを却下と呼びます)を受けてしまいます。

次回予告

 行政不服審査法の前編については以上です。

 次回は後編ということで、実際に不服申立てをした場合の手続きと流れについて解説していこうと思います。

 それではまた次回。

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