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『デッドリー邂逅』観劇レポと、推し作家・紅玉いづきについて

2021.09.12、舞台『アリスインデッドリースクール邂逅』昼公演と朗読舞台『池袋裏百物語 明烏准教授の都市伝説ゼミ』夜公演に参戦してきました。

アイドルのライブは1日2現場行くこともたまにあるけど、演劇で1日2現場観たのは初めてでした。

いつものイベントレポならここからスッと作品の説明やら感想やらに入るのですが、今回は導入として長ったらしい自分語り(3000字)が入ります。
よければ、お付き合いくださいませ。
うるせーさっさと作品のレポ読ませろ!って方は下記目次からレポの章に飛んでください。読まなくてもレポ本編に支障はない(はず)です。
……でも、気が向いたら、全部読んでね。

推し作家と私①

学生の頃、初めて買ったライトノベルに差し込まれていたチラシに『ミミズクと夜の王』が載っていた。
小さい頃は絵本と児童書が好きだったので、その表紙に惹かれて買った。人生で2冊目のライトノベルが『ミミズクと夜の王』だった。

以来15年、紅玉いづきのオタクをしている。

紅玉いづき先生の作品について、詳しくはこちら。紅玉先生自ら書いてる自著紹介note。
デビュー作は上記の『ミミズクと夜の王』ですが今はライトノベルに限らずいろんな出版社から作品が出てます。
アイドルオタク、もしくは舞台のオタク各位にオススメなのは『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』かな。ステージの上で輝く少女たちの物語。

「紅玉いづきのオタク」として何をしてるかと言うと、刊行された本は紙と電子書籍の両方で買って、それから電子書籍は複数の電子書籍サイト(kindle、honto、楽天kobo、DMMブックスとか)で買えるだけ買ってる。
あと紅玉いづき先生が現在非商業で出している『少女文学』シリーズも買ってる。
アイドルと違って作家にはお金を落とす方法があまりなくて、逆に苦労しています。(逆とは?)

それだけでは飽き足らず、推しアイドルに紅玉先生の本を贈りつける、という(はた迷惑な)行為をたまーにしています。
たとえば去年、ukkaの茜空ちゃんの誕生日には『現代詩人探偵』と『青春離婚』をプレゼントしました。
『青春離婚』は私の好みでセレクトし、『現代詩人探偵』は空ちゃんがミステリ系好きらしいから一緒に贈りました。

おすすめしてもらった 青春離婚 って言う本を読んでました!
読んでて最後繋がる感じが うわ、そう言うことか!!!ってなってすげーってなってました(小並感)
ゆっくり読んで3.4時間で読み終わっちゃった!笑

……そしたらまさか、『青春離婚』の方にハマってくれたみたいで、ブログを書いてくれたっていう。
めちゃくちゃ嬉しかったな。「うわーー!!!」ってなって泣いた。
私信マウントです、はい。

今年の誕生日には『ガーデン・ロスト』を贈りました。いつか読んでくれてたらいいな。

それ以外にも、『ガーデン・ロスト』は複数の推しアイドルに贈りつけてます。はい。
高校を卒業したタイミングで読んでほしい青春小説No.1(私調べ)。

デッドリーと私

私が初めて舞台「アリスインデッドリースクール」シリーズを見たのは2020年7月、Youtubeで公開されていた『デッドリー少年』だった。
これを見るに至ったきっかけは実にシンプルで、「紅玉いづき先生がオススメしていた」。これに尽きる。

去年の夏、『よるのこえ』という朗読劇配信で紅玉いづき先生の作品が題材として使われた。
その朗読劇のキャストが『デッドリー少年』に出演していた舞台俳優さんたちなのだと、紅玉先生が事前配信で紹介をしていた。
当時、『デッドリー少年』は期間限定で無料配信をしていたということもあって、予習も兼ねて見てみることにした。

めちゃくちゃ面白かった。ボロッボロに泣いた。
青春と絶望、人間の生々しい感情がないまぜになった作品だった。
この舞台を生で見てみたい、と強く思った。

そして、「アリスインデッドリースクール」について調べた。
普段は女性キャストで、若手女優を起用しているらしい。
最後の公演は2020年4月で、コロナとぶつかったために数公演だけやった以降は中止となってしまったらしい。

……そんな2020年4月公演の『デッドリー永遠』のキャスト欄に、平瀬美里の名前があって、驚いた。

平瀬美里と私

私がこれまで生の平瀬美里を見たのは『夏S』、『初S』、『EVIL A LIVE』の3回だけだ。
他にもももクロの外周ステージとかに出てたりしたと思うけど、はっきりと存在を認識しているのはその3回だけ。
各イベントの詳細は割愛するが、3回ともフェスだった。

『EVIL A LIVE』の日、パシフィコ横浜の2階席で友人と開演待ちをしていたときのことだった。
場内BGMにこの日限定コラボ曲である『竜人くんが大好きです♡』が流れていた……と思う。たぶん、この曲だった。
友人はヒプマイのオタクで、3次元アイドルはあまり詳しくないけれど、日頃から私の推し語りを聞いてくれる。
そんな友人に対して「この曲の参加メンバーにね、ももクロの妹分の子達がいて、この間グループが解散したんだけど、今日きっと何か発表とか、グループ結成とか、何かあるんだと思うんだよね」なんて説明をしていたら、「あ、この声。あらいさん好きでしょ?」と唐突に言われたのが、平瀬美里のソロパートだった。
「あ、やっぱ分かる? そう、平瀬美里の歌声、好きなんだよね」
付き合いの長い友人に一発で見破られるくらい、彼女の歌声は私の好みだった。

ロッカジャポニカでもB.O.L.Tでも、5人の中で推すなら平瀬美里がいいな。
3回見て3回ともそう思ったのに、結局どちらの現場にも行きそびれているうちに、平瀬美里はアイドルを卒業した。
卒業ライブも平日だったから行けなかった。ニコ生の配信ライブは見た。
一度くらい、フェスではないステージで、もっと近くで、歌う彼女を見たかったな。
そんな小さな後悔だけが残った。

アイドルを卒業後、舞台への出演が決まったという話題はTwitterで見た記憶がある。
「あぁ、女優のお仕事を始めたんだな、おめでたいな」と思ったけれど、作品の名前までは記憶していなかった。
その舞台が『デッドリー永遠』だったことに、私は2020年7月に気が付いたのだった。

観たかった舞台に見たかった彼女が出ていた。
自分のアンテナの低さを恨んだ。
絶対に、観に行くべき舞台だったのに。

その後、『デッドリー永遠』は期間限定でオンライン配信され、私はその配信を購入し見た。
平瀬美里が『デッドリー永遠』の主人公・墨尾優として必死に生きる姿にグッと引き込まれた。
見て良かった、と思うと同時に、やっぱり舞台で見たかった、と強く強く思った。

そうして繰り返し「行きそびれ続けた」私に、再び巡ってきた機会が、『デッドリー邂逅』だった。


推し作家と私②

去年、推し作家に勧められた舞台に平瀬美里の名前を見つけたときも運命的なものを感じたけれど、今年の8月の終わりにこの発表を聞いたときも、「これは運命だろうか」と思った。

紅玉いづき原作・脚本の朗読劇『池袋怪談裏百物語 明烏准教授の都市伝説ゼミ』の開催告知。
場所は池袋、そして日程は9月11日・12日の2日間4公演。
去年の『よるのこえ』と同じく朗読劇なのは、偶然なのか、それとも同じ血脈なのだろうか。

発表されたのは『デッドリー邂逅』のチケットを取った後のことだった。
『デッドリー邂逅』は12日の昼公演のチケットを購入していた。
千秋楽である同日の夜公演を取らなかった理由は、「何かあるかもしれない」と思ったから。

私の本分はアイドルオタクなので。
推しグループのリリイベとか、ライブとか、配信とか。
突然、何か、あるかもしれないから。
……それがまさか『推し作家原作脚本の舞台』になるとは思ってもいなかったけど。

11日は都合が悪かったので、12日の夜公演一択でチケットを申し込んだら当選した。
キャストである男性声優のことはとんと詳しくないのだけれど、結構な倍率だったということは後で知った。あと、会場のキャパシティが約300席しかないということも。
……私は相当、運が良かったらしい。

『デッドリー邂逅』と『池袋怪談百物語』。
推し作家に引き合わせてもらった舞台と、推し作家原作・脚本の舞台。

紅玉先生に『デッドリー少年』を紹介されていなかったら。『デッドリー少年』、『デッドリー永遠』の配信を見ていなかったら。
私はきっと、この『デッドリー邂逅』のチケットを買ってなかった。
「あー、みぃちゃんとみっぴちゃん、同じ舞台に出るんだ〜」そう思うだけで終わっていた。
でも、そうはならなかった。
2021年9月12日。一年前から今に続く不思議な巡り合わせのもと、私の手元には『デッドリー邂逅』と『池袋裏百物語』2枚のチケットがあった。


……で、ここから『デッドリー邂逅』と『池袋裏百物語』の感想を書こうと思ってたんですけど、後者の感想が自分でも歯止めが効かないくらい熱暴走を起こしてしまっておりまして、「こりゃあ長くなるな」と思ったのでnoteを分けることにしました。

『デッドリー邂逅』概要

前提として、『アリスインデッドリースクール』という作品について。

キャラクターとキャスト。簡単な所属も。

墨尾優(ノ⭐︎ビューンのボケ、2年):蛭田愛梨
百村信子(ノ⭐︎ビューンのツッコミ、2年):桜井美里
青池和磨(生徒会長、3年):平瀬美里
紅島弓矢(不良、元ソフト部、3年):ゆめ真音
氷鏡庵(科学部、3年):久代梨奈
辻井水貴(帰宅部、2年):谷口彩菜
堂本千十合(他校の新聞部、2年):二瓶有加
高森朝代(ソフト部部長、3年):長谷川麻由
界原依鳴(映画研究会部長、3年):草場 愛
橙沼霧子(映画研究会、2年):稲岡志織
村崎静香(生徒会書記、2年):山﨑悠稀
猪狩薫(ソフト部、2年):荒井杏子
緑浜塔蘭(ソフト部、1年):下村星奈
宍戸舞(保健委員、3年):東城咲耶子
巣宮春菜(保健委員、1年):朝日奈芙季
黄市恵美(漫画研究会、2年):岡田佑里乃
志倉夏樹(漫画研究会、1年):羽野花奏
柏村香(自衛官、部下):高宗歩未
竹内珠子(自衛官、上司):白石まゆみ

物語の大筋の内容について。
私のnoteは「その現場を見ていない人にも全力で伝わるように書く」がポリシーの1つなので、あらすじどころか、物語の流れを下記に全部書きます。
ただ、私の解釈なので、細かいニュアンスが違ってたらすみません。

優と信子は高校1年生の時に漫才コンビを結成した。そして文化祭で漫才を披露したが、文化祭実行委員に無断でステージに立ったために後でしこたま怒られた。
それでも懲りなかった2人は2年次に同好会を発足させ、正式な手続きの上で再び文化祭のステージに上がることを決める。
そうして屋上で漫才の練習をしていたある夏の日、世界は変わってしまう。
死んだ人が蘇り、生きている人を食らう。食われた人もまた、死に、蘇り、食らう側となり……。
一部の逃げてきた生徒たちが、屋上に集う。
絶望的な状況の中でも生徒たちは時には楽しく笑い、時には喧嘩もし、時には夢を語らった。
ロープを使い階下に降りて食料等を得ては避難生活を続けたが、命を落とす生徒も出た。青池和磨は死者に噛まれた後も正気を保っていたが、その限界を感じ自ら焼却炉に身を投げる。
残された生徒たちは自衛官たちの助けを待たず、脱出することを決める。
信子は、命こそ助かったものの、死者に噛まれ大怪我を負ってしまう。信子を置き去りにできない、とその場にとどまる優を置いて、他の生徒たちは脱出を試みる。
科学部が残した爆弾を使おうとするが、火をつけるライターを持つ紅島弓矢と爆弾を置いた高森朝代の距離は遠く離れている。一か八かで走ろうとする紅島に、高森は「ストレートで投げろ」と叫ぶ。
高森もまた、死者に噛まれた傷を隠していた一人だった。高森は爆弾と共に身を散る決断をする。
爆弾により壊された壁の先へ、残された生徒たちは必死で走る。
一方、屋上に残った優は漫才の練習を続けていた。信子は最後に一瞬正気を取り戻した後、優を食べないために屋上を去る。
その後、優は夢の中で、別れた人達と再会する。一時の幸福の後、優は目覚めて、一人で生き続ける。

『デッドリー邂逅』感想

真ん中やや下手側の座席について、まず始めに思ったのは「狭くて、近いな」ということだった。
『デッドリー永遠』を配信で見ていたときにはもっと大きく見えていたステージが、とても近く、ほとんど目の前に屋上(舞台セット)があるように感じた。
(後から聞いた話だけど、実際は『永遠』の会場の方が『邂逅』の会場より小さかったらしい。カメラ越しと生で見るのとでは見え方が全然違うんだな、と思った)
それから、舞台セットの配置も『永遠』とは異なっていて、『永遠』では下手側にあった扉が中央に置かれていたのが印象的だった。

事前にゲネプロのレポートを読んでいて、「今作から追加されたシーン、台詞がある」ということは知っていた。
どこだろう、と楽しみにしていたから、冒頭、信子が優にコンビを申し込むシーンが追加されていて驚いた。
それによって2人の関係性がより深く感じることができる、良いシーンだった。
そしてこのシーンが、ラストに追加された台詞「あのときノブちゃんの誘いを断ってたら、こうはならなかったのかな?」(的な台詞。うろ覚え)にも繋がっていて、悲しみを誘った。

途中途中に入る歌とダンスの曲(タイトル分からん)のイントロもたぶん、『永遠』と違ってたと思う。記憶違いでなければ。
あれ、違う曲?と思っていたら、その後聴いたことのある歌が始まって安心した。
曲中、『永遠』で印象的だった「氷鏡先輩が真ん中で一人スポットライトを当てられ立ち尽くす、周りのキャストは暗い中、氷鏡先輩を囲うようにして踊り続けてる」というフォーメーションがなかった。
その代わりなのかそれともまた別の意図があったのか、氷鏡先輩の手にはルービックキューブがあった。

氷鏡先輩の役割はおそらく、「観測者」だろう。おそらく、とかだろう、とか書いたけど、台詞回しや前述の演出からしても、意図的にそう描かれている。
世界の中にいる優達は「第一回、氷鏡先輩が何を言っているか深く理解する会!」を開いちゃうくらい氷鏡先輩が朗々と話す内容が理解できていない。
それはメタ発言だからだ。
繰り返される世界、正解は一つではない、10年に渡り演じ続けられている『デッドリー』の世界、一つとして同じ舞台はないーー。
観測者・氷鏡先輩がいることで観客である我々はより『デッドリー』の世界の深みを感じられているような気がして、氷鏡先輩のことはすっかり好きになった。

で、その氷鏡先輩と良いコンビだったのが紅島先輩だった。
コンビというか、カップルだった。(断言)
先に公演を見ていた友人に「あの2人ずっとイチャついてる」と聞いていて、『永遠』の時は紅島高森バッテリー推しだった私としては「そんなに2人絡んでたっけ……?」と半信半疑なところがあった。
……けど、観て分かった。あの2人、ずっとイチャついてる。笑

覚えてるのは、下から獲ってきた食料を分配するシーン。
紅島先輩が(氷鏡先輩が事前にリクエストしていた)ミルクティーと自分の分のストレートティーを持ってきて、ミルクティーを氷鏡先輩に渡してあげてたのと、その後ワッフルも2つ持ってきて片方を氷鏡先輩に押し付けるように渡してたのと、その後上手側の高台に2人で座ってた(完全に2人だけの世界になってた)のと、氷鏡先輩がずっとワッフルをいじってるだけで食べてなかったのと、氷鏡先輩のミルクティーを紅島先輩が開封してあげてたの。
ミルクティー開けられない氷鏡先輩、乙女すぎん??? 観測者そんなキャラだったか??? クールさどこいった??? ギャップ萌えか??? 可愛すぎん??? ってなって紅島氷鏡、軽率に好きになりました。はい。

ちなみに前述の友人から、「前回ワッフル1個だけ持っていったら氷鏡先輩が受け取ってくれなかったから今回2個だったと思う」と教えてもらいました。え、なにそのエピソード、可愛すぎて何事????

もう一つは、ラストの夢のシーン。
下手側で和磨会長・水貴・千十合のトリオがアイドルとして歌って踊ってレスを送ってる中、「あ、レスが上手側に飛んだ」と思ってそっちを見たらまた高台のとこで紅島氷鏡がイチャついてる!!!!! は!!!??!?
レスでもらった指ハートを真似て自分たちも指ハート作ろうとして、
あれ?こう? え、違くね? あれ?できない! 全然違うー笑 的なやり取りを延々とやってるの可愛すぎて沸いた。
(上記台詞は私の妄想。でもなんかこちょこちょ喋ってイチャイチャしてたのは本当)

ここまで書いててなんかめちゃくちゃ百合に沸いてるオタクのように見えますけど(否定はしませんが)、ここに至るまでめちゃくちゃ泣きました。
特に中盤~終盤にかけてどんどん人が死んでいくの、本当にしんどかった。
和磨会長と高森先輩はもう最初に屋上来たときから「あぁ、噛まれたんだな」って思って、時折その表情に影が落ちるのを見ていてそれも辛かったのだけど、自衛官の柏村はあんまりそういう素振りがなかったように見えて。(私が見逃してるだけかもだけど)
で、柏村と珠子先輩が「助けを呼んでくるから」と去るシーンで、柏村がやけに語気を強く「その時が来たら必ず撃て」と珠子先輩に拳銃を差し出したところで、あ。って気づいた。あ、この人も噛まれてるんだ、って。
柏村の死期を察した瞬間、ぞわ、ってなった。「死」というものが一気に眼前に迫ってきたような感覚。
どんどん死んでいく。みんな死んでいく。屋上の扉が開いて戻ってきたと思ったら、舞さんがいない。あっけなく死んでいく。
無力で、絶望で、怖くて、辛くて、悲しくて、みんな生きていてほしくて、でも死んでいく。
押し寄せる「死」に、涙が止まらなかった。

和磨会長は、自ら焼却炉に身投げして、死ぬ。
『永遠』で墨尾優だった平瀬美里は、夢の中の青池和磨に「自分で決めるんだ」と言われて別れている。
『邂逅』で青池和磨になった平瀬美里は、自分の死を、自分で決める。自分が自分でなくなる前に。誰かを傷つける存在になる前に。
……そんな前作との繋がりを感じたら、ますます辛くて、ボロボロ泣いた。

平瀬美里の演じた青池和磨は「和磨会長」と呼ぶにふさわしい、強さと凛々しさだった。静香くんが心酔するのも納得のカリスマ性だった。
動きの一つ一つがカチッ、カチッ、と無駄のない動きをしていた。
『永遠』の和磨会長はもっと優しい印象だったから、役者が違うとキャラクターはこんなにも変わるのかと、(いい意味で)驚いた。
優は和磨会長と真逆でふにゃっふにゃだったし。
和磨会長は優と真反対でカッチリしていた。その対比が良かった。
死ぬ最後の瞬間まで、和磨会長はその強さと凛々しさを失わなかった。

静香くんは和磨会長への崇拝っぷりが見ていて気持ちよかった。
和磨会長のカリスマ性と相まって、「そこまで心酔するの、分かる、分かるよ」とさえ思った。
行き過ぎた愛情であり、時にはヒステリックでもあったけれど、「依存」ではないところがまた良かった。
依存であったなら、和磨会長の後を追って焼却炉に身を投げてただろう。けど静香くんはそれをしなかった。
残って、和磨会長の遺志を継いだ静香くんは、強くて凛々しかった。

関係性という話で言えば、映画研究会の界原部長と霧子くんのところも良かった。
界原部長は一見クールに見えるけど、霧子くんのことは嫌がってなさそうというか、心を許してる、信頼している感じが時折見れて好きだった。
あとシンプルに、ショートヘアの似合う女の子、好きです。はい。好きなタイプの顔でした。界原部長。

前作では紅島高森(元)バッテリーが好きだった、と書いたように、『邂逅』でも紅島高森コンビは好きだった。
高森先輩は一見、頼れる部長、しっかり者のリーダーのように見えて、実はタバコの件や体育館の件のように責任やプレッシャーに押し潰されている弱い人だった。弱さを隠すのが上手くて、強く見えているだけだった。
それを誰よりも理解して、守ってあげていたのが紅島先輩だったように思う。
そんな2人の関係性が好きだった。

それに加えて、『邂逅』では紅島氷鏡がカップル(断言)だったように、高森先輩の相方は猪狩だった。
静香くん→和磨会長への「崇拝」とも呼ぶべき愛の強さが際立って目立っていたけれど、猪狩の高森先輩への愛もとても深く、「尊敬」を超えて「崇拝」に近いもののように見えた。
高森先輩を守るために紅島先輩を攻撃する猪狩、(たとえそれが間違った行為であっても)、めちゃくちゃ人間味があってよかった。
なんかこう元カノと今カノの喧嘩(というか今カノ猪狩が一方的に噛み付いてる)みたいな感じでさぁ、猪狩のことを高森先輩が止めに入って「なんで元カノを庇うんだよ!」みたいになってる猪狩、名前の「猪」の通り、そのまっすぐさが良かった。
猪狩がまっすぐであればまっすぐであるほど、嘘をついている高森先輩の後ろめたさに拍車がかかって、居心地悪そうにしている高森先輩もすごく良かった。

高森先輩が最後に死ぬシーン、水貴に向かって叫ぶ「私みたいな卑怯なやつが死ぬことだってあるんだよ!」って台詞は、嘘をつき続けてきた高森先輩が最後の最後にようやく言えた懺悔の言葉だったなぁ。
猪狩にどれだけ慕われようと紅島先輩にどれだけ庇われようと、高森先輩はずっと自分のことを「卑怯者」って内心責め続けてたんだろうな。
それが最後の叫びで解放された感じが、すっごく良かった。泣いた。


最後にノビューンとカーテンコールの話をする前に、ここまでに書ききれなかった細かい感想を書いておきます。
目が足りなくて見れてないキャストさんもいるの、本当に惜しいことをした……。目と記憶力がほしい。

『邂逅』で一番好きな演技をしていたのは、紅島先輩役のゆめ真音。
何が好きだったかって、間の取り方。台詞ひとつひとつを差し込む間が完璧で、これ以上ない!ってタイミングで入ってくる。
その上、声に迫力があるもんだから、見ていてとても気持ち良かった。
それから、歌パートでちょいちょい歌うのサボってたのも不良な紅島先輩らしくて良かった。
キャラクターの解像度が高い、と思った。

珠子先輩の自衛官ジョーク、好き。
紅島先輩のツッコミ入る前から「んふっw」ってなって、そこにさらにツッコミがきたもんだから「んっふふふふwww」ってなって笑いを堪えるのが大変だった。
凛としているように見えてどこか危なっかしいところがあって、エリートだけど完璧じゃないところが可愛かった。

保健委員の宍戸舞先輩、事前に声が良いとは聞いてたけど、想像以上に声が良かった。
なんか声にめちゃくちゃ癒しのオーラを纏ってた。耳から癒される。
そしてその人柄、優しさ、包容力、まるで母親の慈愛のよう、って思ってたら公式サイトのキャラクター説明にも「お母さんのようなその存在が皆を癒す」って書いてあって笑っちゃった。ママじゃん!



で、主人公、ノビューンの2人の話。

まず、桜井美里の信子、観る前は正直「みっぴちゃんがツッコミ役? 全然想像つかないんだか……」と思ってました。
それが実際見てみてびっくり、めちゃくちゃテンポよくツッコんでる!
優と信子の掛け合い、卓球並のハイペースでボケとツッコミのラリーが進んでいくのが気持ち良かった。

優はさっき「和磨会長の真逆」と書いた通り、本当にふにゃっふにゃだった。クラゲくらいふにゃっふにゃで、関節とかないんじゃないかと思う(?)。
ふとした表情でポケーっとしてたりニコニコしてたり、喋ってない時、スポットライトが当たってない時もふにゃふにゃさが一貫していたのが素晴らしかった。

ノビューンのポーズ、『永遠』と変わってたのは驚いた。前のは両手を横に広げて片足前に出すポーズ。
『邂逅』のノビューンはその後2人で大きなハートを作って終わる。
芸人というより、アイドルがやるやつだ。現役アイドルである蛭田愛梨、そして去年までアイドルだった桜井美里がやるんだから、そりゃあ当たり前のように様になってて可愛かった。

最初は「へぇ、ニコイチ感出てて可愛いな〜」くらいに思ってた。
物語のラスト、夢の中の2人がこのポーズを作るシーンで信子は優の隣ではなく、何歩か下がったところでハートを作った。
「優ならピンでもやれるよ」
「1人でも、ノビューンの優だよ」
「ありがとう、ずっと一緒だね」
2人の間には、そんな会話があった。

私の脳裏に、優が1人でノビューンを名乗る姿が自然と思い浮かんだ。
優はきっと、1人になってもこのポーズをやるだろう。「ノビューンの優」として。
これが『永遠』のポーズなら何てことはなかった。1人でやっても、違和感がないだろうから。
でも、『邂逅』は。
欠けたハート。隣には誰もいない。
ニコイチ、二人で一つだったものが欠ける、その喪失感。
その姿を想像して、胸が苦しくなった。可愛いだけだったはずのポーズが、辛くて、悲しくて、涙が止まらなかった。
そのとき舞台上にはまだ2人がいたけれど、でも、それは夢の中のことだ。私の脳裏に浮かんだのと同じように、現実にはもう、信子はいなかった。


そんなわけで、ラストで爆泣きしてたらカーテンコール、Wカーテンコールになった。
退館時間の都合で夜公演ではWカーテンコールができなかったという話があり、たまたま取ったチケットが昼公演でラッキーだったな、と思った。

蛭田愛梨と桜井美里の話を聞きながら、泣きまくった顔をハンカチで拭っていたら、上手側からなんだか視線を感じた気がして、ふと視線をそっちに移した。ら、紅島先輩、もとい、ゆめ真音の大きな瞳が、ばっちりこっちを見ていた。
ぎゃああ!って思った。マスクの下で。勘弁してくれ。恥ずかしくて死のうかと思った。

Wカーテンコールの挨拶では高森先輩役の長谷川麻由が指名され、周り(主に三年生と、珠子先輩)にやいのやいの言われていたのが愉快だった。
長谷川麻由は泣かないように堪えていたんだと思うのだけど、(そしてその横にいた界原部長=草場愛に小声で「泣くなよ」と言われてたみたい)、それを見たゆめ真音が「ガッチガチじゃねえか!」って野次入れたのが、紅島高森バッテリー最高すぎてドチャ沸いた。
(夢の中のシーンで、高森先輩がカメラを前に緊張丸出しで、紅島先輩にそう野次られたシーンがあった。それの再現。さすが解像度が高い。最高。)
ゆめ真音の野次でますます喋れなくなった長谷川麻由に草場愛が「泣くなよって私は言ったからね」ってさらに追い討ちかけてたのはワロタ。ドSかよ。笑

で、散々イジられたその後に。
「毎日、1公演1公演が奇跡で、この奇跡を積み重ねて、また次の"軌跡"にできたらなと思います」
このコメントを言った、長谷川麻由のドヤ顔たるや。笑
下手側、ちょうど長谷川麻由の正面あたりの席だったので、全力のドヤ顔を頂きました。その後のはしゃぎ様も可愛かったー。

あ、そうそう。カーテンコールの退場時だったかな。
紅島氷鏡が手を繋いで上手袖に去っていくもんで、「やってんなぁ!!!」って沸いた。
そしたらノビューンも、信子が手を差し出して、優が手を乗せて、手を繋いで扉の向こうへ去っていくから、「お前らもかー!」ってキュンキュンした。
紅島氷鏡は色気があって大人のカップル感があり、ノビューンは色気がなくて子供のカップル感があり、そのどちらも可愛くて尊死ものだった。

で、さらにWカーテンコール、再登場する面々の中で、和磨会長と静香くんが手を繋いで登場したもんだから、「3組目ーーー!!!」って叫びそうになった。叫んでませんが。心の中で沸き散らかしてた。なんだあれ、最高じゃねえか。静香くん結ばれて良かったねおめでとう。
Wカーテンコールの帰り、氷鏡先輩が紅島先輩のタバコを1本もらおうとするんだけどうまく抜けなくて紅島先輩にバカにされてて可愛かった。
ノビューンはまた信子が手を差し出すんだけど、優がチョキを出して勝手に「勝ち〜!」ってふざけてるのやっぱり子供のカップルで可愛かった。
優があまりにずっとチョキのまま手を繋がないんで、痺れを切らした信子が優の腕を強引にわし掴みにしてそのまま扉の向こうへ帰っていったの、あまりに可愛かったね。

おわりに

観に来て良かった」と、シンプルにそう思った。
胸がぎゅうっと苦しくなって、でも、胸がきゅうっと温かくもなった。
生でしか味わえない迫力があり、その動きのダイナミックさに興奮した。
思った通り、あるいはそれ以上の、良い舞台、良いお芝居だった。

この日この後観た朗読舞台『池袋裏百物語 明烏准教授の都市伝説ゼミ』についてはまた別noteを書くつもりだけど、その作中に、こんな台詞がある。

「いいですか、皆さん。理不尽に死ぬ人が居るように、理不尽に死ぬ舞台なんて、物語なんて、たくさんある!」
「それでも、生きた舞台が、一番強いんです」

この台詞を聞いたとき、泣きながら、脳裏に浮かんだのは『デッドリー邂逅』、そして『デッドリー永遠』だった。

コロナという理不尽によって、死んでいった数多の舞台がある。今もまだ、公演が中止になってしまう舞台が、ライブが、現場が、ある。たくさん、ある。
無力で、絶望で、怖くて、辛くて、悲しくて、みんな生きていてほしくて、でも、死んでいく。

それでも、それだからこそ、生きた舞台は、格別に美しいんだ。

命の輝きが詰まった舞台『デッドリー邂逅』は、美しかった。

追記。平瀬美里と私②

前振りとしてあれだけ平瀬美里のこと書いといて後書きに書かないのもどうなんだ、と思ってこっそり追記します。

お芝居をする平瀬美里を見て、もちろんそのお芝居はとても良かったんだけど、「私はアイドル・平瀬美里を推したかったし、もう推せないんだな」と腑に落ちた。
成仏した、と言ってもいい。
ステージの真ん中で歌って踊る、平瀬美里が見たかった。その後悔は、もう晴れることはないんだな、と。
デッドリーには歌とダンスがあるけれど、ソロパートとか、ないし。ソロパートがあったらまた違った感想だっただろうな。

私は以前より、B.O.L.T(平瀬美里がいたアイドルグループ)の推しを決められない、と書いてる。
内藤るなのこと、めちゃくちゃ好きだけど、まだ迷ってる、と。
迷ってる理由の一つは、やっぱり平瀬美里だった。
B.O.L.Tのワンマンを見たのは、平瀬美里の抜けた4人になってから。推そうと思ってた人が、いなくなってから。
いない人の代替として、内藤るなを推すのか?それは"推し"なのか?という気持ちがずっとあった。

DDオタクは「推せない理由」を考えるのが得意なので。
だって、そうしないと無限に推しが増えてしまうから。

でも、今回、『デッドリー邂逅』を見て、間近で平瀬美里を見て、「私が推したかった平瀬美里はアイドルの平瀬美里で、もういないんだ」と自分の気持ちを消化することができた。成仏することができた。
それは私にとって大きな収穫だった。

そんなわけで、次に平瀬美里が舞台に出るとき、私はそれを見に行くかは分からない。
ただ、みぃちゃんはインスタに「また墨尾優をやりたい」と書いてたから、それが実現するなら是非観に行きたいな、と思ってる。


追記の追記:デッドリーと私を引き合わせてくれた推し作家、紅玉いづき原作・脚本『池袋裏百物語』の観劇レポを書きました。

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