乗馬クラブを退会した話

11年入会していた乗馬クラブを辞めてきた。

昔のmixi(!)日記をひっくり返して読んでわかった事実。もうそんなに経っていたのか。

11年というとすげぇベテランぽい(実際は趣味として10年程度乗ったくらいじゃたいしたモノにはならない)が、ちゃんと通ってたのは最初の4年くらいで、その後はずっと月会費を払うだけの幽霊会員だった。辞められなかった。

‥‥‥‥
11年前、フリーターとは名ばかりで週2で5時間ほどアルバイトをしてるだけのほぼニートな彼氏と付き合って10年が経とうとしていた私は先の見えなさに暗い暗い気持ちを抱いて毎日を過ごしていた。

どれだけ懇願しても脅しても就職せず、病院にも行かない(高次脳機能障害の疑いがあった)彼氏。お互い実家暮らしで、ほぼ毎日会っていたが、過ごす場所は外か車で。私はそんな日々に疲れ果てていた。落ち着きたかった。20代の10年という月日は重い。費やした月日の重さにのしかかられて身動きできず、どうにか相手が変わることを望んでは絶望していた。

馬とはそんな日々の中で出会った。気分転換に出かけた北海道旅行で、軽い気持ちで予約した体験乗馬。相手してくれたのは全身茶色の、綺麗なおじいちゃん馬だった。想像よりずっと揺れる背中。馬上の人間の技量をすぐに見極めて途中で遊びだしちゃう賢さ。陽気な心。降りてからも首をなで続ける私にそっと頭を寄せてくれる優しさ。たった30分で心の全てを持って行かれた。もっとわかり合いたい、自分の意思を疎通させて動いてもらいたい。熱に浮かされたように、帰ってきてすぐに近所の乗馬クラブを調べて体験レッスンを予約した。

体験レッスンだけでは意思疎通とは程遠い。もちろん、満足できるわけもなくそのままシームレスに入会。難しかった。楽しかった。怖かった。夢中になった。他のことは全てどうでも良くなった。あっけないほど簡単に、彼氏を捨てた。まあ乗馬通して好きな人ができたのもでかかったんですけど。その彼氏が以降5年近く、ストーカーとなったのはまた別のお話。

そこまで夢中になった乗馬だったが、いかんせん金がかかる。勢いで会社を辞めてすぐに次が見つかると思ってたら1年近く短期アルバイトで食いつなぐような生活になってしまったりして、そこから仕事を見つけたものの給料が低かったり一人暮らしを始めたりで結局続けることができず足が遠のいてしまった。

それでも、ドロドロに情が深い私は「要らない」と思えるのにすごく時間がかかってしまう。乗馬クラブも、何度か辞めようと思いながら辞めた先、もう2度とあの馬たちに会えない、乗れないことを想像するとどうしても踏ん切りがつかなかった。会えなくても、乗れなくても、細くていいから繋がっていたかった。

そうやって7年近く経った今年。過去にしでかした私のどうしようもないクズの所業で夫にものすごく迷惑をかけてしまったことを機に、ようやっと辞める決意ができた。クラブへ電話をかけるときはすごく緊張した。出たのはもちろん知らないスタッフ。退会の手続きを聞くと、特にないと言われた。この電話で終わりだと。拍子抜けするほどあっけなかった。

が、ロッカーに荷物を預けっぱなしにしていたのでそれを片付けに行かなくてはならない。それを説明して、またお邪魔するときに連絡すると告げて電話を切った。そして今日に至る。

乗馬クラブは今の住まいから電車で2時間、バスで30分の場所にある。道中流れていく変わらない景色。変わってるお店。特に感傷的な気分は湧いてこず、ぼんやりしたまま最寄のバス停に着いた。通っていた頃、着くまでがまずトレーニングだなんてぼやいてた急激な坂をえっちらおっちら上る。7年ぶりのクラブは、少し厩舎ができただけでほとんど変わらなかった。馬が8割くらい知らない子になっていることで、やっと流れた年月にほんの少しだけさみしさを感じた。

私は日にち薬という言葉を事あるごとによく言ったものだと思っていたが、こういうことにも当てはまるのだと今回のことで学んだ。スタッフもお客さんも誰も知ってる人はおらず、対応してくれたオーナー先生もすっかり私に対してよそ行きの表情と言葉遣いで、完全に私は『部外者のお客さん』だった。細く繋がっていた気でいたのは私だけだった。とっくに、私の居場所は無くなっていた。そしてここがまさに日にち薬の効果なんだけど、そういう事柄に傷つくような私の気持ちもなかった。私の中にも、いつのまにか乗馬クラブの居場所は無くなっていたのだった。

ロッカーに残っていた荷物を引き取り、オーナー先生にいなくなった馬たちの行方を教えてもらったりしながら10分ほど雑談してクラブを後にした。先生とはまた、と言って別れたけどたぶん、もう2度とこない。それに対してもなんとも思わなかった。終わった。11年越しに、青春が終わった。

それでも馬には未練がある。ストレスと運動不足の解消にあれほど私にピッタリ合ってる趣味は無い。「古いものを捨てないと新しいものは手に入らない」という言葉を信じて、次の機会を待つ。

twitterの人に「ブログでやれ」って言われないようにアカウント作りました。違うブログで台湾旅行や入院や手術に関してお役立ち情報書いてます。よかったら見てください。 http://www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site