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アーティストはなぜ苦しいのか。音楽家の「レイヤー」と孤独から抜け出す4ステップ

“音楽アーティスト”とはどういう人間なのか――。

それを語る時に見逃されてる根本的な問題があります。同じ「アーティスト」でも、その人が音楽とどの「レイヤー」で繋がっているかによって、まったく話が変わってくるという点です。

レイヤーをここでは以下のように分けます(*1, 2)

音楽レイヤースペクトラム.001


ポイントは「レイヤーは個性であり、良し悪しはない」と言うことです。

例えば「ロジック」で音楽と繋がっているアーティストは「こういう音が流行っていて、それはこういう音を使ってる」みたいな情報をもとに音楽を作る。

「心」の方で音楽と繋がっているアーティストは内の感情や視覚から音が勝手に出てくるみたいな共感覚(*3)から音楽を作ってると考えます。

共感覚を持つ人は、人口の4%程度と言われています。図の白側にいる感覚や精神を軸に音楽表現する人は結構なマイノリティ。なので、大衆はもちろんのことですが、音楽家の中でも「こういう感覚で作る感覚」が分からない場合もあるのです。

図の赤寄りのアーティストにはスキルが必要です。制作技術、世のトレンドをうまくキャッチする能力、レイヤーに関わらず他人と協力するためのスキルなどです。特にプロとしてやっていくにあたってはそのスキルは重要になります。

現実的には、図の白寄りの人も赤寄りの活動をしないと食べていけないことが多いので、スキルをつけて赤側に収束していく傾向があります。

現代の世の中のアーティスト像って赤寄りのイメージに近いんじゃないでしょうか。でも実は隠れ白寄りさんが結構混ざっていたりする。

これはリスナーにも言えることです。「音好き」って一緒くたにいうけど、同じレイヤーがあるはず。例えば、「これはカラオケで歌えそう」って音楽が好きな人もいれば(ロジック)、グルーヴがあって身体が動いちゃうような音楽が好き(身体)とか。

同じレイヤーにいる仲間を探そう

次、大事なポイントです。音楽家は同じレイヤーのリスナーと繋がることで最も高い充足感を得られると僕は考えます。

同じレイヤーで他アーティストやリスナーと繋がることを求めることは、同じトライブ(種族)を探す流浪の民のようなもの。

アーティストのメンタル問題というと「売れそうな曲を作ってるのになかなか結果が出ない」という性質のものが着目されがちだと思います。

でも、白寄りの人が赤寄りの世界にいて、漠然と「自分の感性」と「求められる感性」との乖離を感じ、孤独になっているとも考えられるのではないでしょうか。

では、その孤独の中で、同じレイヤーで繋がれるリスナー、アーティスト、それをサポートする仲間 (=トライブ)を探し求める白寄りの流浪の旅人 (この際「ホワイトトライブ」と呼んじゃおう)はどうすればいいのでしょうか。

これって、あまり着目されていない分、悩みや解決方法が言語化されていないと思います。

僕の経験から導き出した持論ですが、音楽カルチャーの歴史をベースに自分なりの方法を簡単に紹介します。

ステップ① 「見つける」より「見つけてもらう」

ホワイトトライブがお互いに認識しあえる機会はあまり多くありません。

最初はできるだけ多くの人に気付いてもらおうと頑張りますが、理解されないどころか、変わりもの扱いされたりして、傷ついたりします。しんどい思いをして、アピールするぐらいなら、できるだけ向こうから見つけてもらうことにフォーカスの比重を置いてもいいんじゃないでしょうか?(もちろん見つける意思と努力もそれでも大事ですが)

見つけてもらうためには、音楽をできるだけ自分の感性に忠実に作って、作品にその精神性があらわれるようにすることが大切。曲にまつわるアートワーク、言動、活動の形そのものもその対象に入るかもしれません。

ホワイトトライブとしてできるだけ白く見せるためには、白の純度を高くする。白くないものをできるだけ身にまとわない。白なら白をできるだけ追求した方が見つけてもらいやすい、ということです。

ステップ② 見つけてもらいやすい場所に行く

これは国や街などの物理的な場所とは限りません。

作品をリリースするプラットフォームだってそうです。僕にとってはSoundCloudでした。(SoundCloudがなぜそうだったのか、今それになりうるものが何なのかは次回のnoteで触れます)

自分の精神性を他の形であらわすこともそれに含まれます。ビジュアルアート、Twitterやnoteによる文章による表現などです。このnoteもそうかもしれません。

ステップ③ トライブで固まる

一人なら小さい白い点に過ぎませんが、仲間が見つかり固まれば、大きな白い丸になります。できるだけ白を保ったまま大きくなると、それだけ推進力のあるカルチャーへと発展していきます。SoundCloudアーティスト、Hip Hopなど、過去にそういった事例はいくつかあります。

ステップ④ トライブが公式に認められる

この段階まで来れば、マーケット、業界からも認められ、ホワイトトライブであることが経済的価値になります。トライブ自体が強力なブランドとなり、人がお金を払うようになるのです。


今日はここまでにしますが、この4ステップには時間がかかります。

長いプロセスを続ける精神力、信念の強さ、現代社会の中でやり通すための方法論を持っていなければいけません。

これに賛同する人がトライブを作り、生存の道を見つけていく先の世界に、僕は今、希望を感じています。

だからこそ、大前提として、その方法や道があること、そして過去の先人が証明してきた方法を、これを読んでる皆さんの心にとめてもらえれば嬉しいです。


(注)
*1 この分類に科学的根拠はありません。あくまで you know what I mean?的な概念的表現です。また、実際にはこの同じレイヤーに常にいるわけではなく、精神状態や環境などによって、常にゆらゆらとレイヤー間を彷徨います。でもその人の原点になるレイヤーがあると考えます。

*2 魂なんてわけわからんという人もいるでしょう。でも例えばゴスペルなどの霊歌、古代からある信仰儀式での即興音楽などはそれにあたると思います。

*3 共感覚とは…
共感覚は文字や数字に色が付いて見えたり、音を聞くと色が見えたりするなど、通常の感覚に加えて別の感覚が無意識に引き起こされる現象のこと。多くの種類があり、文字や数字に色を感じる「色字」、音を聞くと色を感じる「色聴」などがあります。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191030/k10012157301000.html

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