2011年のアメリカが今日本にあるかもしれない説

今から約8年前の2011年2月、日本で言うところの蔦屋、書籍をメインにCDやDVDなども販売してたアメリカのマルチメディア本屋チェーン最大手Bordersが倒産しました。その数年前からCD屋は軒並み潰れてましたが、Bordersの倒産はデジタルの波が書籍にまで及んでしまったことを意味し、かなりのショックを全米が受けました。その年、街から本屋、レンタルビデオ屋などが一気になくなりました。

その年以降みんな手のひらを返したように、本屋やレンタルビデオ屋を速攻で忘れていきましたw  映画はNetflixか他のオンラインサービスでストリーミングで見る、本はKindleにダウンロードして読む、音楽はApple MusicやGrooveshark, Pandoraなどで聴くかラジオで聴く。そんなライフスタイルに1年弱でいっきに舵が切られ、ミュージシャンも軒並み曲をネットにアップロードするようになりました。そんな中で台頭したのがSoundcloudでした。

今までCD時代の恩恵を受けた音楽ビジネスのOGはまだどこに標準を合わせた方がいいかわからず、U2の曲をiPhoneユーザー全員のiTunesに勝手にぶち込んでしまったり、今考えたらありえない混乱っぷりをみせてた時期です。

CD出さなくても、同じ感覚が味わえるんならこっちの方がいいじゃんと言わんばかりに世界中のアーティストがサンクラに曲を発表し、特に今までリリースするのも大変だったブートレグ(原曲の著作権者に許可なく勝手に作ったリミックスやエディット)アーティストは水を得た魚のように曲を作って出すようになりました。さっき言ったように音楽業界の巨人たちは混乱してるので、まだサンクラの存在に気づいてません。こうやって、旧体制がごっそりなくなったところにできた巨大な無法地帯がサンクラだったのです。

曲出して音楽通して世界中の色んな人と繋がれて、金にならなくても最高じゃんって言う20前後のアーティストで溢れかえり、レーベルやマネージメントの制約なしに曲を作りまくって腕をあげ、さらにその音楽が純粋に好きなリスナーと今までにないレベルで繋がるっていう貴重な経験をこの頃のサンクラアーティストは経験しました。今皆さんが耳にする世界のヒット曲を作ってるのは大体この頃サンクラやり出した人たちです。

こうして一気に拡大したサンクラはいつの間にかリアルな音楽マーケットの指標的存在になり、そこで人気のプロデューサーがプロのDJよりDJのブッキングをもらう事態にまで発展します。その波に僕も気づいたら乗っていました。38ぐらいの時ですw

僕は30あたりで誰も友達のいないLAに移住したんですが、友達がなっかなかできなくてせめてオンラインでもいいから音楽でつながれる友達が欲しいっていう思いでサンクラを始めました。自分が好きな感じの音を作ってる人にDMしまくって、そこからコラボに発展したり、実際に遊びに行ったり。今友達と呼べる沢山の仲間はほとんどそうやってサンクラで会ったと言っても過言ではありません。そしてそうやってできた仲間から一足に先に芽が出るやつがちょこちょこ出てきて、そこの周りにいるアーティストも注目され出して気づいたらみんな音楽でメシ食えるようになってた。みんな当時20代前半とかだったんで、それまでの音楽業界の既成概念がないですし、だいたいみんな実家に住んでるからお金の心配いらないし、やりたい音楽を自分達流でみんなに広めるために常に目から鱗な斬新なアイデアが飛び交ってました。そんな中から例えば、Goldlink, Anderson Paak, Chance The Rapper, SIR,  Masego, Mura Masa, Ekali, Jarreau Vandal, STWO, Pomo, J Louisなど挙げたらきりがないぐらいの人が今大活躍してます。

僕はあの時に得た感覚がいまだに忘れられません。そして今のLAはもう成熟してしまい、そういう刺激はもうない。だから今日本なんです。サンクラでカオス期を切り抜けて一大産業へと膨れ上がった過去8年ぐらいからのアメリカの音楽シーンの感じを、これから日本でも目撃できるかもしれないというワクワク感があるんです。ただし、日本には日本独自の切り抜け方があると思うんです。アメリカでの体験をそのまま当てはめられるんなら、俺についてこいって言えるんですけど、そう単純なものではないので、それをみなさんと考えながら、自分もアーティストとして当事者になりながら、模索したいなと思ってます。

次回は、2011年 vs 2019年 このタイムラグはそもそもなんなんだ っていうところを検証していきたいと思います。



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