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二重星や連星のはなし(その2)

5.連星の発見から分ったこと

シリウスの連星から分ったこと

 恒星の固有運動を調べていたドイツの天文学者ベッセルは1844年、シリウスの運動に揺らぎを確認し、未発見の伴星によるものだと考えました。しかしシリウスは明るすぎて、伴星はなかなか見つかりませんでした。
 1864年、アメリカの望遠鏡製作者クラークが、当時アメリカ最大の口径18.5インチ(47cm)屈折望遠鏡の性能をテストするためシリウスに向けたところ、シリウスから10" 離れたところに8等ほどの光点を見つけました。クラークはこれをゴーストと考えてレンズを磨き直したといいます。しかしそれでもこの光点は無くならず、クラークはこれがシリウスの伴星であるとしました。これを知ったハーバード大学の天文台長ボンドは、15インチ望遠鏡でこの伴星を確認し、『シリウスの伴星』という報告を学会誌に発表しました。これによりシリウスの伴星を多くが知ることになりました。
 ベッセルは、シリウスのような固有運動の揺らぎをこいぬ座プロキオンにも見いだしていて、1896年にはプロキオンの伴星も見つかりました。

白色矮星の発見

 シリウスの伴星のスペクトルは1915年にようやく撮影することができました。伴星のスペクトルはシリウスとほぼ同じで高温の星であることが分かり、しかし絶対等級は11.3等と暗いことから、これは当時恒星の進化から考えられた「白色矮星」であるとされました。
 おおいぬ座の主星シリウスと、こいぬ座の主星プロキオンが、どちらも白色矮星を持つ星であることは、おもしろい偶然です。

6.連星で宇宙が分る

連星で起きる超新星で宇宙の距離が分る

 天体までの距離は、複数の方法を段階的に使い分けて測定しています(「宇宙の梯子」という)。
 近い恒星は、地球が太陽の周りを公転することで位置が変わって見える 「年周視差」で測ることができます。これが梯子の第一段です。
 恒星までの距離が分ると、見かけの明るさからその星の本当の明るさ(絶対等級)を知ることができます。これと恒星のスペクトル型をプロットすると「HR図」を作ることができます。「HR図」で左上から右下への帯を「主系列」と呼び、ここに位置する星は一生のほとんどの期間をここで過します。これを利用しすると、星のスペクトル型が分ると星の絶対等級が推測でき、これと見かけの明るさからその星までの距離を得ることができます。(分光視差)

HR図

 銀河系内の恒星は「年周視差」や「分光視差」などで恒星までの距離を測ることができますが、銀河までの距離を測るのは難しいです。そんな中、重い恒星が最後に大爆発してとても明るく輝く ”超新星爆発” のうち、「Ⅰa型超新星」は最大の明るさが同じなため、他の銀河でのⅠa型超新星を観測すると、その銀河までの距離を知ることができます。
 どうしてⅠa型超新星の最大の明るさが同じなのかは、その爆発する原理に依ります。この星は質量の大きい星どうしの連星で、一方が先に寿命を迎えて白色矮星になります。その後、もう一方の星が寿命を迎えて膨らんできて、その表面ガスが白色矮星に流れ込むようになると、白色矮星の質量が太陽質量の1.4倍になった時に大爆発を起こします。これがⅠa型超新星です。このように爆発時の質量が決まっているため、明るさも一定なのです。

Ⅰa型超新星で距離が分る

 このようにⅠa型超新星は遠方銀河までの距離を知ることができる貴重な現象ですが、天文学者が大望遠鏡を使って明るさの変化を追跡観測するためには、見つかった超新星の種類を早く知りたいところです。これは超新星爆発の原因に依ってスペクトル型に特徴が現れるので、知ることができます。

超新星の種類の判別法

 このように「二重星」、特に「連星」では恒星それ自身や、その他の情報を得ることができ、それぞれが個性的で興味深いものです。

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