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入門・電視観望、その1

1.はじめに

 近年、惑星撮影などでよく使われるCMOSカメラを使って星雲星団を見る「電視観望」というものがあることは知ってはいたものの、実際に目にすることが無く、縁遠いものでした。それが2019年4月のある日、久しぶりに近く(といっても、車で3時間の距離)の公開天文台の駐車場(近隣地域の星見スポット)へ出かけた際、そこで出会った方が、スマホで操作できる自動導入式望遠鏡にCMOSカメラを付けて電視観望をやっているのを目にし、これは素晴らしいと感じました!
 私は数年前から小惑星による恒星食の観測を行っていました。そのため高感度ビデオカメラWATECを購入したのですが、今はGPS時計のビデオインサーターが無いため、時刻管理をするのに苦労していました。また近年は暗い恒星の位置精度の高いカタログが普及したことから、暗い恒星の食の予報も多く出され、より高感度のビデオカメラが欲しいと考えていたところでした。
 そこで今普及しつつあるCMOSカメラを使えば、より暗い恒星の食を観測できるのではないかと考え、また同時に夢に描いていた、天体観望会での電視観望の利用を実現できるよう、適切なCMOSカメラを調べたり、電視観望のやり方を試行錯誤して、2019年7月に購入したのでした。
その後は実際に小惑星による恒星食の観測に使ったり、また電視観望のやり方の試行錯誤をしたのでした。そして、そうした経験を「Beyond星空案内人講座」で他の星空案内人さんたちにお伝えしたいと考えたのでした。

2.デジタルカメラを使った接食の観測

20cm反射望遠鏡(焦点距離800mm)にデジタルカメラを付け、望遠鏡を望遠レンズとして使って、2018年1月27日のアルデバランの接食を撮影。スマホの時報アプリで時刻を鳴らして、時刻が分るようにした。

デジカメを使った観測は、カラー撮影でき、音声も同時記録できるので、計測もでき、また臨場感はバツグンですが、高感度のデジタルカメラが高価なのが欠点。

3.CMOSカメラを使った高感度ビデオ撮影

2015年頃、ZWO社のPCカメラ(ASIシリーズ)がKYOEI(協栄産業)で販売。高感度CMOSカメラで、AVI動画ファイルで撮影でき、惑星撮影に便利。本体はカメラのみなので、操作や撮影にはパソコンが必要です。ただ、カメラの電源はデータ送信も行うUSBケーブルで給電されるので、ノートPCにUSBケーブルで繋ぐだけで使えるので、便利です。

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最初に購入したのは、背面照射型で感度が高く、CMOSサイズの小さい(安い)ASI290MC。小惑星による恒星食の観測に使え、さらに電視観望の入門機として購入。

KYOEIではCMOSカメラを購入すると、CMOSカメラのドライバーと操作ソフトSharpCapやFireCaptureの入ったCD-ROMが付いてきます。入門者にはありがたいサービスです。そうしたソフトをインストールし、付属の魚眼レンズを付け、SharpCapで日中に簡単な操作練習をし、初めての星空でのファーストライト。露出時間とゲインしか操作を知らず、カラーのカメラなのに白黒モードで、しかも撮影中に露出時間やゲインを変えるなどの素人操作ですが、ファーストライトでこれだけの星空を写すことができました。

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CMOSカメラの望遠鏡への取付け方法には、31.5mm径アダプターでアイピース風に取付ける方法と、M44径に付ける方法、ASI290MCの場合はCマウントアダプターでカメラマウントに付ける方法があります。VixenのR200ss反射望遠鏡はドローチューブの繰り出しが短いため、Cマウントを付け、カメラアダプターで取付けることになりました。

次の動画は、まだ操作方法がよく分らない時に撮影したM57(こと座リング星雲)とM27(こぎつね座亜鈴状星雲)。

このように、高感度CMOSカメラを使って、ゲインを上げたり、露出時間を数分の1秒にすることで高感度ビデオカメラとして、天体観望をすることができます。

もちろん、天体観測もできます。
小惑星による恒星食の観測の成功事例。2020年4月29日の(658)Asteriaによる9.9等星の食。15:21:19(UT)に食が起ります。Binning=2、Gain=600、Exp=1/8secで撮影。

以上、CMOSカメラを高感度ビデオカメラとして使うことでの電視観望方法の紹介でした。


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